日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系進化における最新成果と今後の展望

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:黒田 大介(京都大学)、樋口 有理可(産業医科大学)、座長:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、黒田 大介(京都大学)

14:00 〜 14:15

[PPS03-19] ASTEROID DETECTION APPLICATION "COIAS" FOR THE SUBARU HSC ARCHIVE DATA

*浦川 聖太郎1杉浦 圭祐2前田 夏穂3大坪 貴文4茂木 遥平6、木下 大輔7北里 宏平5関口 朋彦8、小池 美知太郎4、臼田-佐藤 功美子4 (1.特定非営利活動法人日本スペースガード協会、2.東京工業大学、3.神戸大学、4.国立天文台、5.会津大学、6.北海道大学、7.台湾国立中央大学、8.北海道教育大学)

キーワード:小惑星、プラネタリィデフェンス、すばる望遠鏡、アーカイブ科学

すばる望遠鏡HSC(Hyper Suprime-Cam)用の小惑星検出アプリケーションCOIAS(Come On!Impacting ASteroids)の開発について報告する。これまで100万個を超える小惑星が発見されている。これらの小惑星の軌道分布を調べることで、同じような軌道要素をもつ「小惑星の族」のサイズ分布や軌道の広がりがわかってきた。一方、小惑星の直径は1km以下になると「ヤルコフスキー効果」と呼ばれる非重力効果の影響を受け、その軌道長半径が増減する。これまで発見された小惑星の多くは直径1km以上のメインベルト小惑星である。つまり「ヤルコフスキー効果」を受けるような小さな小惑星まで含んだ真の小惑星の軌道分布はいまだに分かっていない。本研究では、すばる望遠鏡HSCのデータを用いて、直径300mクラスの小惑星の軌道情報のカタログ化を行う。これまでもすばる望遠鏡を用いた小惑星研究は活発に行われてきた。しかし、位置情報については、軌道情報を一元的に管理するMPC(Minor Planet Center)に効率よく報告されていなかった。そこで、GUI(Graphical User Interface)を用いて視覚的に小惑星の検出、位置測定、測光、報告を円滑に行うアプリケーションCOIASを開発した。試験的なデータ解析の結果、COIASを用いることで一晩の観測から、6367個の未発見の小惑星を検出した。HSCのアーカイブデータに適応させれば、検出数は数万に及ぶ。暫定的な軌道計算の結果、試験データで検出した天体のうち数%程度が地球接近天体(NEO: Near Earth Objects)であった。COIASを用いた小惑星検出は、プラネタリィディフェンスの観点でも大きな役割を担うことができる。また、視覚的な操作が可能なCOIASを用いることで、研究者以外も小惑星の発見体験を得られる。学生に対する教育的効果や市民天文学への波及効果も期待できる。