日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系進化における最新成果と今後の展望

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:黒田 大介(京都大学)、樋口 有理可(産業医科大学)、座長:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、黒田 大介(京都大学)

14:30 〜 14:45

[PPS03-21] JAXAにおけるプラネタリーディフェンス関連活動について

*吉川 真1安部 正真1、池永 敏憲1、岩城 陽大1岡田 達明1、菊地 耕一1、黒崎 裕久1、黒田 信介1、佐伯 孝尚1嶌生 有理1津田 雄一1、西山 和孝1、三桝 裕也1、柳沢 俊史1 (1.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:プラネタリーディフェンス、地球接近天体、小惑星、はやぶさ2、Hera

天体の地球衝突問題を扱うプラネタリーディフェンス(スペースガード)の活動であるが、1990年代から本格的に開始されてから約30年となる。この間、数百個だった地球接近天体(NEO:Near Earth Object)の発見個数が約3万個にまで増大したり、探査機による小天体探査がいくつも行われたりして、太陽系小天体に対する認識が大幅に変化した。一方で、天体の地球衝突問題についての議論も国際的に活発化してきており、国連での議論や、国際的な研究会やアウトリーチイベントなどが数多く行われるようになった。この状況において、JAXAでもプラネタリーディフェンスに関するいろいろな活動を行っている。ここでは、現在そして今後の活動について紹介する。
 プラネタリーディフェンスにおいては、まず、地球に衝突する天体を発見することが重要である。NEOの発見観測については、米国のプロジェクトによる発見が大多数を占めている状況であるが、JAXAでは、地球近傍を通過中で見かけの動きが速い微小な小惑星を発見するために、重ね合わせ法という手法を開発した。この手法を用いて、口径20cm程度の小望遠鏡で、11個のNEOの発見に成功している。この中には大きさが10m級の天体が4つ含まれている。JAXAは口径1mの望遠鏡が設置された美星スペースガードセンターも有しているので、重ね合わせ法をより大きな望遠鏡による観測に応用していくことを計画している。
 また、プラネタリーディフェンスにおいては、仮に地球に衝突する天体が発見されたときに、その衝突回避を行うことが重要である。衝突回避の手法についてはいろいろ議論があるところであるが、いずれにしても相手の小惑星の素性を知ることが重要である。そのためには、探査機を小惑星に送って調べる必要がある。JAXAでは「はやぶさ」と「はやぶさ2」という探査機をNEOである小惑星イトカワと小惑星リュウグウに送って、これらの天体を詳しく調べた。その結果、これらの小惑星がラブルパイル構造をしていることがわかり、このこともプラネタリーディフェンスにとっては重要なデータとなっている。
 さらに、「はやぶさ2」については、延長されたミッションである「拡張ミッション」を行っており、2026年に2001 CC21をフライバイ探査したあと、2031年に1998 KY26にランデブーする。これら2つの小惑星もNEOである。特に1998 KY26の方は大きさが30m程度と推定されており、まさにこのような天体の地球衝突が現実的に近い将来に起こりうるものであるので、その探査結果がプラネタリーディフェンスとして重要である。また、JAXAはESAのプラネタリーディフェンスのミッションであるHeraに赤外線カメラを提供することで協力する。Heraは、米国がDARTというミッションで探査機を小惑星に衝突させて軌道を変える実験を行った後で、その衝突跡を詳しく調べることを行うミッションである。
 プラネタリーディフェンスという問題に対しては、NASAやESAは専門の部署があり対応を行っている。日本でも、プラネタリーディフェンスについての活動がいろいろ行われるようになってきているので、国内での議論を深めて、今後の取り組み方を整理して進める時期に来ていると考える。