日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系進化における最新成果と今後の展望

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:黒田 大介(京都大学)、樋口 有理可(産業医科大学)、座長:黒田 大介(京都大学)、樋口 有理可(産業医科大学)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

11:00 〜 13:00

[PPS03-P12] クレーターの崩壊と非対称エジェクタカーテンが天体表層に及ぼす影響

*横田 優作1荒川 政彦1保井 みなみ1山本 裕也1長谷川 直2大川 初音1 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:クレーター、小惑星

衝突クレーターは、小惑星や衛星のような固体天体において主要な地質学的特徴の1つである。そのようなクレーターの形態は天体の表面状態によって変化する。例えば、平面に形成されるクレーターは円形であるが、斜面に形成されるクレーターは楕円形であることがわかっている。さらに、斜面に形成されるクレーターは、形成後の雪崩によって大きく崩壊する。また、クレーター形成時に放出されるエジェクタの堆積分布は、小惑星の表層進化に大きな影響を及ぼす。
小惑星や衛星には斜面やバルジ、峡谷など、様々な地形が存在する。近年、はやぶさ2やOSIRIS-RExなどの探査機によって、小惑星リュウグウやベンヌは赤道域に巨大なバルジ地形を有していることがわかった。さらに、リュウグウのバルジ上には、地形の影響を受けた巨大なクレーターが見つかっている。
クレーター形成過程やエジェクタ放出・堆積過程に関する理論は、平面に対して行われた衝突実験を基に構築されたものである。従って、リュウグウの巨大なクレーターのいびつな形状の起源を調べるためには、起伏地形に適用可能なクレーター理論を構築する必要がある。そこで本研究では、小惑星表面の起伏地形を模擬した粉粒体で構成された山脈型標的に対してクレーター形成実験を行い、起伏地形がエジェクタカーテンの成長とエジェクタ堆積過程、クレーターの崩壊に及ぼす影響を調べた。

小惑星表面の起伏地形を模擬するために、粉粒体で構成された山脈型標的を用意した。山脈型標的の傾斜角θは20°と30°とし、実験ごとに山頂から衝突点までの水平距離dを変化させた。また、平面(θ = 0°)においても実験を行なった。クレーター形成実験は、神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行なった。衝突速度は、41〜218 m/s(神戸大学)と2.0 km/s〜2.2 km/s(宇宙科学研究所)とした。また、クレーター形状を調べるために、Metashapeというソフトウェアを使用して、20枚の画像からクレーターの3次元形状モデルを構築した。また、クレーター形成過程を高速カメラで撮影し、撮影速度は1000 fps〜20000 fpsとした。

Dを稜線方向のクレーター直径とすると、弾丸が0.09 < d/D <0.20に衝突した場合、非対称なエジェクタカーテンが観測された。また、低速度のエジェクタがクレーター周囲に堆積リムを形成し、その後斜面方向とクレーター内に崩れる様子が観測された。最終クレーターの形状は、稜線方向に長い楕円形であった。クレーター形状については、3次元形状モデルから、深さ直径比と体積を計測した。クレーターの深さ直径比は、d/Dが大きくなるにつれて小さくなり、斜面上側の堆積リムがクレーター内に地滑りを起こして、クレーターが浅くなっていることがわかった。クレーターの体積は、d/Dが大きくなるにつれて大きくなったが、d/D > 0.1のときは、遷移クレーターの崩壊によって体積が小さくなった。