11:00 〜 13:00
[PPS04-P06] Development for a radiative transfer tool for remote sensing of surface pressure on Mars by CO2 2μm absorption band observed by Mars Express/OMEGA and MMX/MIRS
キーワード:火星、放射輸送、気象、地上気圧、MMX、Mars Express/OMEGA
火星は軌道離心率が大きいため、太陽輻射量は年間で30%以上変動する。これに伴うCO2とH2Oの凝結・昇華や浮遊ダスト量の地域・季節変動により、大気はグローバル・メソスケールで大きく変動する。その把握には、表面気圧分布を知ることが重要となる。
地球における表面気圧分布は、地上に網羅された多数の観測点で直接求められているが、火星では特定箇所の着陸機群しか観測点が無い。周回観測機のデータを用いた気圧分布の観測は以下で紹介する論文に限られており、気圧の水平分布の理解は進んでいない。
Forget et al. (2007) および Spiga et al. (2007) は、メソスケール地表面気圧分布の周回探査機観測から導出することに成功した。Mars Express (MEx) 探査機搭載 OMEGA の初期観測(2004-2005)時に得られた近赤外域でのCO2吸収量から、火星表面気圧を導出した。火星大気のCO2混合比(Viking Lander 質量分析計による0.9532 (初夏の値) がよく知られる)は下層大気中ではほぼ高度方向に一様であり、静水圧平衡仮定のうえで表面気圧はCO2気柱量に比例するとみなせる。これらの解析では、エアロゾルの散乱がない等の理想的な状態でのデータのみを対象としており、気圧の導出は全データの0.007 %程度(約4000回のnadir観測中29回) に留まるものの、95×150 km(経度幅 2.5°、緯度幅 4°)の表面気圧分布を求めることに成功し、平衡状態から逸脱した圧力勾配や大気波動などが観測可能であることを示した。
我々は、この手法を2024年の打ち上げを目指す火星衛星サンプルリターン計画(MMX : Martian Moons eXploration)による火星近赤外分光撮像観測に適用すべく、まずはMEx/OMEGA近赤外線観測データが存在する全期間(2004-2010)のメソスケール表面気圧導出を目指して検討を行なっている。MMXではフォボスからのサンプルリターンと共に、フォボス近傍の周回軌道上から火星中低緯度大気の広域連続観測が計画されている。Forget・Spigaの手法に則り、CO2の吸収量からColumn densityを導出し、そこから高度補正等を加えて地表面気圧を推定する。この手法をOMEGA SWIR(近赤外)チャネルで取得される1.8-2.2 µm(25点、波長分解能 〜20 nm)の2 µm CO2吸収帯データに適用し、表面気圧を導出するプログラムを開発中である。まず観測スペクトルに影響しうる物理パラメータ群(気圧、温度、表面アルベド、ダストオパシティ、太陽天頂角、太陽視野角、位相方位角)において、放射伝達方程式を用いた計算を行い、推定スペクトルを約45万ケース用意する。そして観測スペクトルに最も近いものを最尤推定法より選択することで、表面気圧値を決定する。2022年1月現在、このテーブル作成とその検証に向けた作業を進めている。
本講演ではMEx/OMEGAからの表面気圧導出状況、それを用いた火星メソスケール気圧現象への適用可能性およびその試行について報告する。また、MMXで目指すグローバル気圧導出への適用時に予想される課題についても述べる。
地球における表面気圧分布は、地上に網羅された多数の観測点で直接求められているが、火星では特定箇所の着陸機群しか観測点が無い。周回観測機のデータを用いた気圧分布の観測は以下で紹介する論文に限られており、気圧の水平分布の理解は進んでいない。
Forget et al. (2007) および Spiga et al. (2007) は、メソスケール地表面気圧分布の周回探査機観測から導出することに成功した。Mars Express (MEx) 探査機搭載 OMEGA の初期観測(2004-2005)時に得られた近赤外域でのCO2吸収量から、火星表面気圧を導出した。火星大気のCO2混合比(Viking Lander 質量分析計による0.9532 (初夏の値) がよく知られる)は下層大気中ではほぼ高度方向に一様であり、静水圧平衡仮定のうえで表面気圧はCO2気柱量に比例するとみなせる。これらの解析では、エアロゾルの散乱がない等の理想的な状態でのデータのみを対象としており、気圧の導出は全データの0.007 %程度(約4000回のnadir観測中29回) に留まるものの、95×150 km(経度幅 2.5°、緯度幅 4°)の表面気圧分布を求めることに成功し、平衡状態から逸脱した圧力勾配や大気波動などが観測可能であることを示した。
我々は、この手法を2024年の打ち上げを目指す火星衛星サンプルリターン計画(MMX : Martian Moons eXploration)による火星近赤外分光撮像観測に適用すべく、まずはMEx/OMEGA近赤外線観測データが存在する全期間(2004-2010)のメソスケール表面気圧導出を目指して検討を行なっている。MMXではフォボスからのサンプルリターンと共に、フォボス近傍の周回軌道上から火星中低緯度大気の広域連続観測が計画されている。Forget・Spigaの手法に則り、CO2の吸収量からColumn densityを導出し、そこから高度補正等を加えて地表面気圧を推定する。この手法をOMEGA SWIR(近赤外)チャネルで取得される1.8-2.2 µm(25点、波長分解能 〜20 nm)の2 µm CO2吸収帯データに適用し、表面気圧を導出するプログラムを開発中である。まず観測スペクトルに影響しうる物理パラメータ群(気圧、温度、表面アルベド、ダストオパシティ、太陽天頂角、太陽視野角、位相方位角)において、放射伝達方程式を用いた計算を行い、推定スペクトルを約45万ケース用意する。そして観測スペクトルに最も近いものを最尤推定法より選択することで、表面気圧値を決定する。2022年1月現在、このテーブル作成とその検証に向けた作業を進めている。
本講演ではMEx/OMEGAからの表面気圧導出状況、それを用いた火星メソスケール気圧現象への適用可能性およびその試行について報告する。また、MMXで目指すグローバル気圧導出への適用時に予想される課題についても述べる。