日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS05] Science of Venus: knowing more about the earth's sister planet

2022年5月30日(月) 09:00 〜 11:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (Ch.03)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、コンビーナ:堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、Gilmore Martha S(Wesleyan University)、コンビーナ:Marcq Emmanuel(Laboratoire Atmospheres, Exploration Spatiale, Institut Pierre-Simon Laplace, Universite de Versailles Saint-Quentin)、座長:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、Martha S Gilmore(Wesleyan University)

09:00 〜 11:00

[PPS05-P05] あかつきLIRによる赤外画像を用いた金星の惑星規模の波動の長期変動研究

*小山 裕幸1今村 剛1 (1.東京大学)


キーワード:金星、大気

金星は自転周期が非常に長い惑星であるが,高度70kmで100m/sにもなる非常に速い巡行風が吹いている(Schubert et al.1980)。この風は超回転と呼ばれる。この風は非軸対称渦による運動量の輸送によって引き起こされ,維持されると予測されており(Gierasch, 1975; Rossow and Williams, 1979; Del Genio and Rossow, 1990),金星の大循環モデル計算ではそのような緯度方向の運動量輸送が示唆されている(Yamamoto and Takahashi, 2003など)。本研究では,惑星規模の波が寄与している可能性に着目し,観測から金星の惑星規模の波の構造を明らかにすることを目指す。惑星規模の波動はこれまでに,周期4日のケルビン波や周期5日のロスビー波など,波数1の惑星規模の波の存在が金星探査によって確認されている(Del Genio and Rossow, 1990; Kouyama et al., 2015; Imai et al. 2019; Kajiwara et al, 2021)。これらの惑星規模の波動は,振幅が数日から数ヶ月の時間スケールで変化しているということが日本の金星探査機「あかつき」の紫外線イメージャーによる雲追跡の観測から明らかになっている(Imai et al., 2019)。また,「あかつき」の中間赤外カメラによる観測で,高緯度側に複数の周期の波が同時に見えていることも明らかになっている(Kajiwara et al., 2021)。しかし,これらの惑星規模の波動が長期的に変化する様子や,鉛直伝播の構造についてはこれまで観測から明らかにされていなかった。
本研究ではKajiwara et al. (2021)の手法を改善したうえで「あかつき」の中間赤外カメラ(LIR)を用い,輝度温度変化から惑星規模の波を検出した。長期間の観測データから得られる結果を比較し,観測高度が光の出射角に依存することを利用して,惑星規模の波動の鉛直構造を明らかにする。さらに解析においては,金星のローカルタイムに依存した熱潮汐の影響を取り除き,ロスビー波やケルビン波の寄与のみを考察するために,熱潮汐の検出も行った。データを取得した時期や解析に用いた出射角に依存する観測高度の違いによって惑星規模の波の振幅が異なっており背景の風速の変動と関係がある可能性がある。