日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 月の科学と探査

2022年5月27日(金) 13:45 〜 15:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、長岡 央(理化学研究所)、コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、座長:長岡 央(理化学研究所)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

15:00 〜 15:15

[PPS06-12] 表面形状に依存した非一様月面帯電に関する粒子シミュレーション

*中園 仁1三宅 洋平2 (1.神戸大学、2.神戸大学計算科学教育センター)

キーワード:太陽風プラズマ、月、表面帯電、粒子シミュレーション

月を始めとする大気が希薄な固体天体表面では、太陽風などの宇宙プラズマが直接降り注ぐ一方、太陽光の照射により発生する光電子や天体表面に蓄積された電荷が表面近傍の静電気環境を形成する。例えば、月探査機による軌道上での観測では、月昼側が正の電位を持つことが示唆されている。一般に宇宙プラズマは固体表面を負に帯電させる能力を持っており、月面を正の浮遊電位に保つためには、光電効果などの電子放出過程が不可欠であると考えられている。
本研究では、光電子起源ではなく、凹凸を有する表面形状起源の正帯電現象を、3次元PICシミュレーションを用いて示す。月面はクレーターや縦孔、ボルダーなどの地形から、表面の岩石からレゴリス層に至るまで幅広い空間スケールにわたる凹凸が存在する。クレーターや縦孔などの地形ではそれら地形特有の静電気環境が形成されることがいくつかの数値シミュレーションにより明らかにされている。こうした地形スケールの表面形状と同様に、より小さいスケールの小さい岩石やレゴリス粒子により形成される微小空洞も静電エネルギーによる物質輸送の観点において興味深い対象である。このようなスケールでは、デバイ遮蔽の能力が不十分なため、より強い静電場が発生し、これが荷電したレゴリス粒子の移動と浮揚の重要な要因の一つであると考えられている。
本研究では、デバイ長と同等かそれより小さい空洞を有する月面に対し、上空から太陽風プラズマが降り注ぐ状況を想定し、シミュレーションを実施した。その結果、太陽風プラズマ流は空洞内に正電位を形成し、空洞の幅深さ比の増大に伴いイオン粒子の運動エネルギーと同程度の数100Vまで帯電させ得ることを示した。またこの正帯電の条件は光電子電流が無くても成立することを見出した。
 本発表では、主に2つを報告する。まず、上述のシミュレーション結果から得られた空洞表面帯電の形状パラメータ及び周囲プラズマパラメータへの依存性について報告する。その後、より微小な空間スケールモデルのシミュレーションを行う際に問題となる、数値安定条件由来の計算コスト増大に対処するための新規数値アルゴリズムの概要と開発の現状を報告する。