日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 月の科学と探査

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (Ch.03)

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、長岡 央(理化学研究所)、コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、座長:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、小野寺 圭祐(パリ大学)

11:00 〜 13:00

[PPS06-P04] 無水鉱物への⽔素イオン照射実験による水星表層におけるH2O⽣成過程の解明

*北野 智大1木村 智樹1大槻 美沙子1星野 亮1仲内 悠祐2 (1.東京理科大学、2.宇宙航空研究開発機構)


キーワード:水星、月、太陽風、水生成、水氷

水星や月では、太陽光子や太陽風の照射による熱的、非熱的な化学過程によって、水分子が生成され表層物質から解離する。表層物質からの水の供給は、極域に堆積された氷の起源を理解する上で重要である。中性子分光計やM3の観測に基づいた近年の研究によって、水星や月の極域での水氷の存在が示された(Lawrence et al., 2013; Li et al., 2018)が、その起源は未解明である。太陽風水素イオンは水源の候補である(Jones et al., 2020)。しかし、水星表層物質への太陽風照射による水生成は未実証である。本研究は水星表層組成に類似した無水ケイ酸塩鉱物であるEnstatite試料への水素イオン照射実験に基づき、太陽風による水星表層の水生成を実証する。6keVの水素イオンを約1019cm-2のfluenceで照射したEnstatite試料の反射スペクトルでは、3µm付近において水酸基または水の吸収が確認された。実際に、質量分析器による測定から、水素イオン照射中に試料から約10-8Paの水の放出を確認した。水素イオンの照射に対する水分子のyieldは約0.76/incident ionと推定された。昼側の水星半球から水分子が約0.76/ionで一様に放出されると仮定すると、約1010kgの水が約2千年かけて放出されることになる。放出された水の全てが凝結し氷になると仮定すると、氷の生成率は約107kg/yearとなる。これは(Jones et al., 2020)のシミュレーションで示唆されている極域氷の生成率約105kg/yearに対して大きく、太陽風照射が極域氷の供給過程として有意であることが示唆される。
引用文献
Lawrence et al., 2013, Science, 339 (2013), pp. 292-296.
Jones et al., 2020, The Astrophysical Journal Letters, 891(2), L43.
Li et al., 2018, Proceed. Nat. Acad. Sci.-PNAS, 115 (36) (2018), pp. 8907-8912.