14:30 〜 14:45
[PPS07-10] 小惑星の大規模衝突破壊の数値計算と形成される集積天体のインパクタ混入率
キーワード:小惑星リュウグウ、S型岩塊、衝突体破片、大規模衝突破壊
最近JAXAの探査機はやぶさ2が半径500 m程度の小惑星リュウグウを訪れ, 詳細なその場観測及び表面物質の採取を行った. その結果, リュウグウは瓦礫が自己重力で緩く集まったラブルパイル天体であり, 母天体への小惑星衝突による大規模破壊とその後の瓦礫の重力集積で形成された天体であることがわかった(Watanabe et al. 2019). 母天体の大規模破壊は似た軌道を持つ小惑星の集団である族を形成する. リュウグウのスペクトルの特徴と太陽系天体の軌道進化の知見から, リュウグウはオイラリア族かポラナ族の一員であったと考えられている(Sugita et al. 2019). これら族の総質量から考えて, リュウグウ及びリュウグウが含まれていた族の母天体の半径はだいたい50 km程度だと見積もられている(Walsh et al. 2013).
はやぶさ2の探査によってリュウグウの表面のどの場所もほぼ一様にC型のスペクトルを持ちアルベドの低い岩石で構成されていることがわかった(Kitazato et al. 2019). 一方でONC-Tによる高解像度の観測によって一部の岩塊はアルベドが高くS型のスペクトルを持つこともわかった. これらS型岩塊はC型のリュウグウ母天体の大規模衝突破壊を引き起こしたS型のインパクタの破片が混入したものであると考えられている(Tatsumi et al. 2021). リュウグウ全体の体積とS型岩塊全体の体積の比は10-5程度であると見積もられている(Sugimoto et al. 2021). そのため, このような少量のインパクタを含むような集積天体を生成する大規模衝突破壊の衝突条件を制約することで, リュウグウ母天体の衝突史を明らかにすることにつながると期待される.
そこで我々はSmoothed Particle Hydrodynamics (SPH)法を用いた小惑星の大規模衝突破壊の数値計算を実施した. 我々が用いたSPH法には岩石の破壊モデル(Benz and Asphaug 1995)と粉々になった破片間の摩擦モデル(Jutzi 2015)が実装されており, 固体小天体間の衝突現象を再現することに適している. また我々の計算コードはFramework for Developing Particle Simulator (FDPS: Iwasawa et al. 2015, 2016)を用いて高効率に並列化されており, 高解像度計算を行うこともできる. まずはリュウグウの出身族であるオイラリア族もしくはポラナ族形成衝突に着目し, その結果形成される集積天体に含まれるインパクタ破片の量の衝突条件依存性を調べた.
オイラリア族もしくはポラナ族の総質量とそれぞれの族の最大天体の質量から, その族形成衝突は半径50 kmのターゲット天体にインパクタが衝突し, 最大天体の質量がターゲット天体質量の0.1倍程度になるようなものであったと考えられる. 我々はまず粒子数20万程度の低解像度計算を実施し, 衝突角度15°, 30°, 45°, ターゲット/インパクタ質量比4, 16, 32, 64の計12通りに対して, どのような衝突速度なら最大天体/ターゲット天体質量比が0.1程度になるのか調べた.
次に低解像度計算の結果得られた12通りの衝突計算を粒子数300万程度の高解像度で再実施し, 集積天体に含まれるインパクタの質量割合を調べた. その結果, 衝突角度が15°もしくは30°の正面衝突に近い衝突ではどの集積天体にもほぼ一様に10-1-10-3のインパクタが混ざってしまうことがわかった. また衝突角度を上げていくとインパクタが全く混ざらない集積天体も増えるもののインパクタ混入率は急激に下がり, 衝突角度45°では5x10-5程度のインパクタを含む集積天体の形成を確認することができた. 小さなインパクタ混入率を調べることのできる最大天体に着目してインパクタ混入率の衝突条件依存性を見積もると, 衝突角度60°であれば10-5程度のインパクタ混入率が達成される可能性が示唆された. 実際にそのような高角度衝突でインパクタの混入が可能であるかどうか調べることは今後の課題であるが, リュウグウのS型岩塊の量を説明できるインパクタがオイラリアもしくはポラナ族形成衝突で混入することは可能かもしれない.
はやぶさ2の探査によってリュウグウの表面のどの場所もほぼ一様にC型のスペクトルを持ちアルベドの低い岩石で構成されていることがわかった(Kitazato et al. 2019). 一方でONC-Tによる高解像度の観測によって一部の岩塊はアルベドが高くS型のスペクトルを持つこともわかった. これらS型岩塊はC型のリュウグウ母天体の大規模衝突破壊を引き起こしたS型のインパクタの破片が混入したものであると考えられている(Tatsumi et al. 2021). リュウグウ全体の体積とS型岩塊全体の体積の比は10-5程度であると見積もられている(Sugimoto et al. 2021). そのため, このような少量のインパクタを含むような集積天体を生成する大規模衝突破壊の衝突条件を制約することで, リュウグウ母天体の衝突史を明らかにすることにつながると期待される.
そこで我々はSmoothed Particle Hydrodynamics (SPH)法を用いた小惑星の大規模衝突破壊の数値計算を実施した. 我々が用いたSPH法には岩石の破壊モデル(Benz and Asphaug 1995)と粉々になった破片間の摩擦モデル(Jutzi 2015)が実装されており, 固体小天体間の衝突現象を再現することに適している. また我々の計算コードはFramework for Developing Particle Simulator (FDPS: Iwasawa et al. 2015, 2016)を用いて高効率に並列化されており, 高解像度計算を行うこともできる. まずはリュウグウの出身族であるオイラリア族もしくはポラナ族形成衝突に着目し, その結果形成される集積天体に含まれるインパクタ破片の量の衝突条件依存性を調べた.
オイラリア族もしくはポラナ族の総質量とそれぞれの族の最大天体の質量から, その族形成衝突は半径50 kmのターゲット天体にインパクタが衝突し, 最大天体の質量がターゲット天体質量の0.1倍程度になるようなものであったと考えられる. 我々はまず粒子数20万程度の低解像度計算を実施し, 衝突角度15°, 30°, 45°, ターゲット/インパクタ質量比4, 16, 32, 64の計12通りに対して, どのような衝突速度なら最大天体/ターゲット天体質量比が0.1程度になるのか調べた.
次に低解像度計算の結果得られた12通りの衝突計算を粒子数300万程度の高解像度で再実施し, 集積天体に含まれるインパクタの質量割合を調べた. その結果, 衝突角度が15°もしくは30°の正面衝突に近い衝突ではどの集積天体にもほぼ一様に10-1-10-3のインパクタが混ざってしまうことがわかった. また衝突角度を上げていくとインパクタが全く混ざらない集積天体も増えるもののインパクタ混入率は急激に下がり, 衝突角度45°では5x10-5程度のインパクタを含む集積天体の形成を確認することができた. 小さなインパクタ混入率を調べることのできる最大天体に着目してインパクタ混入率の衝突条件依存性を見積もると, 衝突角度60°であれば10-5程度のインパクタ混入率が達成される可能性が示唆された. 実際にそのような高角度衝突でインパクタの混入が可能であるかどうか調べることは今後の課題であるが, リュウグウのS型岩塊の量を説明できるインパクタがオイラリアもしくはポラナ族形成衝突で混入することは可能かもしれない.