日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2022年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、座長:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、杉浦 圭祐(東京工業大学 地球生命研究所)

14:45 〜 15:00

[PPS07-11] 小天体との近接遭遇におけるリングの応答

*池谷 蓮1平田 直之1 (1.神戸大学大学院理学研究科)


キーワード:リング、力学的進化と安定性

巨大惑星を除き、太陽系で現在リングを持つと知られている天体は(10199)Chariklo (Braga-Ribas et al., 2014)と(136108)Haumea(Ortiz et al., 2017)の二つにとどまっている。(2060)Chiron(Ortiz et al., 2015)についてもリングがあると考えられているが、依然として発見数は少ない。リングシステムの形成メカニズムや年代、寿命推定に関してより多くの制約を課すため、他天体との近接遭遇に際してのリング安定性に着目した。
Araujo et al.(2016, 2018)とWood et al.(2018)は、巨大惑星と近接遭遇する際のリング安定性を調べた。彼らの研究によると、巨大惑星との近接遭遇においてリングは非常に安定であり、効率的なリング形成メカニズムがあればリングシステムは存在する可能性があることを示唆する。また、Araujo et al.(2018)は巨大惑星との近接遭遇時のリング安定性から、リングを保持しやすい天体のサイズや軌道の特徴を推測した。しかし、小天体同士の近接遭遇については考慮されていない上に、こういった巨大惑星との近接遭遇は稀である。
本研究では、小天体同士の近接遭遇におけるリング安定性を数値計算により調べた。その結果を用いて、リングを保持しやすい天体についての条件を推定した。本研究の結果は、リングシステムの将来的な観測にも資するものである。計算の条件として、近接遭遇する天体のリング面に対する軌道と天体の質量を変えた。様々な条件を探索するために計算効率を考え、リング粒子の挙動を制限三体問題として4次のルンゲクッタ法を用いて計算した。
その結果、リングの安定性は近接遭遇する天体の質量に大きく依存することがわかった。また、リングの回転方向と近接遭遇方向が逆の場合にリングは比較的安定となり、この結果は先行研究(Toomre & Toomre, 1972; Rieder & Kenworthy, 2016)と整合的である。今回の発表では、これらの結果からリングを保持しやすい天体の特徴を考え、議論する予定である。