日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、座長:冨永 遼佑(理化学研究所 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室)、荒川 創太(国立天文台)

16:15 〜 16:30

[PPS07-16] 惑星への質量降着を考慮した超木星質量惑星による原始惑星系円盤のギャップ形成

*田中 佑希1金川 和弘2谷川 享行3中澤 佐穂1田中 秀和1 (1.東北大学、2.茨城大学、3.一関工業高等専門学校)

キーワード:惑星形成、ガス降着、巨大ガス惑星

原始惑星系円盤内に存在する巨大ガス惑星は,周囲の物質と重力的に相互作用することによって,自身の軌道に沿った領域に低密度のギャップ構造を形成し,そのギャップを介した質量降着によって成長する.円盤にどのような特徴を持つギャップが形成されるかは,惑星の質量や円盤の粘性,スケールハイトなどのパラメータに依存し,それに伴って惑星への質量降着率や惑星の軌道移動に影響を及ぼす.そのため,この過程は惑星系の形成と進化を考える上で重要である.また近年ではALMAを用いた電波観測によってギャップ・リングといった構造を持つ原始惑星系円盤が多数存在することが明らかになっており,それらのギャップは円盤内に埋もれている惑星によって形成された可能性がある.
数値流体計算を用いた惑星・円盤相互作用の研究は近年活発に行われており,惑星によって形成されるギャップの幅や深さ,惑星への質量降着率などが詳細に調べられている.しかし過去の研究は,木星質量程度やそれよりも軽い惑星に注目したものがほとんどであった.木星を超える質量を持つ,いわゆる超木星質量惑星に着目した研究も少数存在するが,質量降着率の予測が数桁食い違うなど,超木星質量による円盤のギャップ形成に関しては,理解が十分に進んでいるとは言い難い状況にあった.木星より重い系外惑星は多数発見されているため,これらの形成および進化の過程を理解することは,惑星形成理論全体としても重要である.
これまでの我々の計算では,典型的な円盤パラメータの場合は3木星質量を超えるとギャップ構造が非定常となり,ギャップ領域の低密度ガスが周囲のガスと撹拌されることでギャップ内のガス面密度が上昇する効果があることが明らかになった.その結果,惑星質量が木星よりも大きい場合,過去の研究で得られているギャップ内の面密度の経験式から予測される値よりもギャップが浅くなることを示した.この場合,面密度が上昇することによって超木星質量惑星への質量降着率は上昇することが示唆されるが,同時に惑星と非定常な振る舞いをするガスとの相対速度も大きくなり,降着には不利に働く可能性もある.そのため,超木星質量惑星への質量降着率を正しく評価するためには,円盤の大局的な構造と惑星への質量降着過程を同時に取り扱うことが重要である.
本研究では数値流体計算コードFARGOを用いて,惑星への質量降着の効果を考慮した円盤のギャップ形成の計算を行った.FARGOは回転するガス円盤の移流を高速に解くことに特化したコードであり,円盤と惑星の相互作用の研究において多く用いられている.惑星への質量降着のモデル化の妥当性を検証するため,まず惑星への降着半径および降着のタイムスケールを変化させた計算を行った.その結果,降着半径を適切に取った場合,降着タイムスケールに関わらず過去の高解像度局所計算で得られている降着率と整合的な結果が得られることがわかった.さらに惑星質量を変化させた場合の計算も行い,非定常な離心ギャップが形成された場合の惑星への質量降着率についても調査を行った.これらの結果について,過去の数値計算との比較を行いながら,ガス惑星,特に超木星質量惑星の形成・進化に与える影響について議論する.