日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、座長:長足 友哉(神戸大学)、黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)

10:00 〜 10:15

[PPS07-23] ダスト凝集過程に対するダストのサイズ効果と形状効果の識別

*長足 友哉1中村 昭子1長谷川 直2和田 浩二3 (1.神戸大学、2.宇宙航空研究開発機構、3.千葉工業大学惑星探査研究センター)

キーワード:ダスト、凝集

はじめに:
原始惑星系円盤における微惑星形成過程を理解するため、ダストアグリゲイトの衝突成長条件に関する数値研究[1]や室内実験[2]が行われている。ダストアグリゲイトの密度(充填率)の進化はその成長の能否に重要と考えられている[3,4]。自由落下するダスト流においては、ダストが相互衝突を繰り返してエネルギーを失い、自然に凝集してクラスターを形成することが知られる[5,6,7]。我々は、メジアン径45 µmの不規則形状と球形ガラスの流れを比較して、不規則形状ガラスの方がより早く充填率進化とクラスター形成を完了することを示した[7]。しかし、この実験において、不規則形状ガラスの粒子質量は球形ガラスの約1/3であること[8]が結果に影響している可能性がある。ダスト凝集に対する形状の効果を定量的に示した研究が少ないことから、本研究では、サイズの異なる球形ダストの流れの充填率進化を調べることで、クラスター形成効率に対するダストのサイズ効果を明らかにし、サイズ効果と形状効果を識別することを目的とする。
実験方法
真空チャンバー(0.1気圧)内で、直径12 mmの円形開口部からメジアン径30, 60 μmの球形ガラスを流出させ、その流れを開口部からの落下距離0, 15, 30, 45, 65, 85, 105, 125 cmにおいてフラッシュX線で撮像する。流れおよびクラスターが軸対称で、かつ、水平面内で充填率は一様と仮定し、各落下距離で得られる1次元X線強度プロファイルに対し流れおよびクラスターの幅と充填率を決定する[7]。
結果と議論:
以前の45 μmの球形粒子の流れと比較して、30 μmの球形粒子はより早く、60 μmの球形粒子はより遅くクラスターを形成した。また、充填率進化に関しても、充填率減少の早さを表す特徴的落下距離zは粒子サイズの約2乗に比例して増加し、小さい粒子ほど充填率進化が早く完了することがわかった。本講演では、この傾向について簡単な解析モデルとの比較も行う。一方、以前の45 µmの不規則形状ガラスの結果は、これらの球形粒子の傾向からは逸脱しており、zはより小さい。簡単な解析的モデルに基づくと、球形粒子のzのサイズ依存性と不規則形状粒子のzから、同じ質量の不規則形状粒子と球形粒子の衝突イベント当たりの相対速度の減少割合の比は~5.6と推測される。このことは、粒子―平板間衝突[9]だけでなく粒子間衝突でも、不規則形状粒子が球形粒子よりもエネルギーを失いやすく、迅速に凝集することを示している。このことは、原始惑星系円盤ダストの衝突成長過程においてダスト形状が重要であることを示唆する。

謝辞:本研究は、JAXA宇宙科学研究所の超高速衝突実験施設の共同利用実験として行いました。

[1] Wada et al. (2009) Astrophys. J., 702, 1490. [2] Kothe et al. (2013) Icarus, 225, 75-85. [3] Wada et al. (2011) Astrophys. J., 737, 36. [4] Kataoka et al. (2013) Astron. Astrophys., 557, L4. [5] Royer et al. (2009) Nature, 459, 1110. [6] Nagaashi et al. (2018) Prog. Earth. Planet. Sci., 5, 52. [7] Nagaashi et al. (2021) Phys. Rev. E, 103, 032903. [8] Nagaashi et al. (2021) Icarus, 360, 114357. [9] Poppe et al. (2000) Astrophys. J., 533, 454–471.