11:00 〜 13:00
[PPS07-P06] 望遠鏡観測と室内実験による木星衛星エウロパ表面NaClの起源の検討
キーワード:エウロパ、地上観測、電子線形加速器
木星の衛星のエウロパではマントルプルームによる間欠泉がハッブル宇宙望遠鏡(HST)によって観測されており(Roth et al., 2014)、その一部は地表面に堆積している。先行研究のHSTによるエウロパの観測ではリーディング半球面に広がる地質的に活発なカオス地域において、波長460 nmに吸収が確認されている(Trumbo et al., 2019)。この吸収波長は、エウロパ表面環境を模し、NaClに放射線を照射した実験において生じたカラーセンターと呼ばれる格子欠陥が吸収する波長のうちの一つと一致している(Poston et al., 2017)。このことから、エウロパ表面にはNaClが存在することが示唆されている。しかし、HSTによる観測は特定の4か月間に4回と限られており、年単位でのエウロパ表面スペクトルの長期的な変動は調べられていない。
本研究の目的は、エウロパ表面に堆積しているNaClのスペクトルの長期的な変動の調査と、エウロパでのNaClの堆積や風化の年代を制限することである。
本研究では北海道大学が所有する主鏡口径1.6 mのピリカ望遠鏡に搭載されているスペクトル撮像装置MSIを用いて、2020年8月17日から10月20日と2021年7月3日から12月8日までの期間で、エウロパのスペクトルを17回観測した。観測波長は400−550 nmおよび650−800 nmの間を、バンド幅がそれぞれ3.90−10.2 nm、4.17−7.62 nmで、中心波長の間隔10 nmで撮像している。解析方法は観測したスペクトルとその3次の近似曲線との差を算出し、吸収波長の特定と吸光度を求めた。さらに、観測したエウロパの経度を4つに分類し、それぞれの経度において反射率の平均値と変動を導出した。変動を求めた結果、顕著な変動は確認できなかった。
また、2022年2月に予定している電子線照射実験では、先行研究よりも大きいMeV単位の電子線をNaClに照射した際のスペクトルを測定することで、エウロパ環境下での高エネルギー電子によるNaClのカラーセンター形成速度への寄与を確認し、エウロパの観測結果をNaClの堆積年代に変換する。
これまでの観測結果では、室内実験によって確認されている波長460, 720 nmでは吸収は見られなかった。一方で、波長430, 520 nmに吸収が見られた。この波長はフラウンホーファー線と一致していることから、エウロパの観測結果に太陽光のスペクトルが反映されている可能性がある。現在、同じく太陽光を反射する月の観測結果を用いることで、観測結果から太陽光の影響を除去する作業を慎重に進めている。
本研究の目的は、エウロパ表面に堆積しているNaClのスペクトルの長期的な変動の調査と、エウロパでのNaClの堆積や風化の年代を制限することである。
本研究では北海道大学が所有する主鏡口径1.6 mのピリカ望遠鏡に搭載されているスペクトル撮像装置MSIを用いて、2020年8月17日から10月20日と2021年7月3日から12月8日までの期間で、エウロパのスペクトルを17回観測した。観測波長は400−550 nmおよび650−800 nmの間を、バンド幅がそれぞれ3.90−10.2 nm、4.17−7.62 nmで、中心波長の間隔10 nmで撮像している。解析方法は観測したスペクトルとその3次の近似曲線との差を算出し、吸収波長の特定と吸光度を求めた。さらに、観測したエウロパの経度を4つに分類し、それぞれの経度において反射率の平均値と変動を導出した。変動を求めた結果、顕著な変動は確認できなかった。
また、2022年2月に予定している電子線照射実験では、先行研究よりも大きいMeV単位の電子線をNaClに照射した際のスペクトルを測定することで、エウロパ環境下での高エネルギー電子によるNaClのカラーセンター形成速度への寄与を確認し、エウロパの観測結果をNaClの堆積年代に変換する。
これまでの観測結果では、室内実験によって確認されている波長460, 720 nmでは吸収は見られなかった。一方で、波長430, 520 nmに吸収が見られた。この波長はフラウンホーファー線と一致していることから、エウロパの観測結果に太陽光のスペクトルが反映されている可能性がある。現在、同じく太陽光を反射する月の観測結果を用いることで、観測結果から太陽光の影響を除去する作業を慎重に進めている。