11:00 〜 13:00
[PPS07-P14] 氷衛星の内部海の三次元数値流体シミュレーションに向けたコード開発
キーワード:SPH、氷衛星
近年の観測により、EuropaやEnceladusといった氷衛星で、氷殻表面の割れ目から水蒸気が噴出していることがわかっている。これは表面の氷殻の下に液体の水の領域(内部海)が存在していることを示唆している。液体の水は化学反応を支える溶媒で、生命の誕生に必要不可欠な要素の一つであると考えられており、氷衛星の内部構造、特に温度の分布と進化について理解することは重要なことである。現在考えられている 氷衛星の内部海の熱進化のメカニズムは、潮汐変形による加熱が起き、 熱が衛星表面まで熱伝導で伝わり、表面からの放射で熱が抜けていく、 というものである。これらの熱過程が平衡状態にあることによって内部海が保たれている。同時に、氷殻と内部海の境界では氷と水の間で相転 移が起きている。そこで、潮汐加熱、熱伝導、放射冷却、相転移を導入した三次元流体数値シミュレーションを行うことのできるSPH法のコードを開発を目的とした。
しかし、従来の粘性項を含むSPHを用いた剛体回転の計算には、以下の2つの問題があることがわかった。(1)従来の粘性力の定式では、非物理的な粘性力によって回転を妨げられる。(2)標準的なSPHの定式化に起因する層状構造において、人工的な内部エネルギー分配が起こる。一つ目の問題を解決するために粘性の定式化を修正し、それによって非物理的な粘性力が抑制されることを確認した。二つ目の問題に対しては、不連続面の取扱を改善するためにDensity Independent SPH(DISPH)を導入することで解決した。さらに、粒子法で流体の表面を定義するアルゴリズムを用いることで、衛星表面からの放射冷却を導入した。また、相転移に関しては、氷水間の相転移を考慮した状態方程式(AQUA-EOS)を導入した。以上で、我々は氷衛星の内部構造のシミュレーションするために必要なすべての物理過程(粘性、伝導、放射冷却、相転移)を導入したSPH法のコードを開発した。今後は開発したコードを用いて、2パターンの計算を行うことを計画している。(1)軌道長半径、離心率、軌道傾斜角、氷衛星の質量などを変化させてパラメータスタディを行い、それらの内部構造への影響を統計的に議論する。(2)太陽系内の氷衛星(Europa, Enceladus)へ適用し、その内部構造を解明する。
しかし、従来の粘性項を含むSPHを用いた剛体回転の計算には、以下の2つの問題があることがわかった。(1)従来の粘性力の定式では、非物理的な粘性力によって回転を妨げられる。(2)標準的なSPHの定式化に起因する層状構造において、人工的な内部エネルギー分配が起こる。一つ目の問題を解決するために粘性の定式化を修正し、それによって非物理的な粘性力が抑制されることを確認した。二つ目の問題に対しては、不連続面の取扱を改善するためにDensity Independent SPH(DISPH)を導入することで解決した。さらに、粒子法で流体の表面を定義するアルゴリズムを用いることで、衛星表面からの放射冷却を導入した。また、相転移に関しては、氷水間の相転移を考慮した状態方程式(AQUA-EOS)を導入した。以上で、我々は氷衛星の内部構造のシミュレーションするために必要なすべての物理過程(粘性、伝導、放射冷却、相転移)を導入したSPH法のコードを開発した。今後は開発したコードを用いて、2パターンの計算を行うことを計画している。(1)軌道長半径、離心率、軌道傾斜角、氷衛星の質量などを変化させてパラメータスタディを行い、それらの内部構造への影響を統計的に議論する。(2)太陽系内の氷衛星(Europa, Enceladus)へ適用し、その内部構造を解明する。