11:00 〜 13:00
[PPS07-P17] 球状鉄コンクリーションの空間分布およびサイズ分布の解明
キーワード:球状鉄コンクリーション、サイズ分布、空間分布
研究の背景
アメリカ・ユタ州のエスカランテ国定公園に産する球状鉄コンクリーションは大きさが1mm-数センチであり,砂岩粒子の隙間を酸化鉄が球殻状に埋めている.火星のメリディアニ平原において類似物が発見され,球状鉄コンクリーションの形成過程の解明が火星の古環境復元につながるものと期待されている.Yoshida et al. (2018: Sci. Adv. 4, eaau0872)により,球状鉄コンクリーション形成の第一段階は炭酸カルシウムコンクリーションの形成であることが示された.したがって,現在我々が観察している球状鉄コンクリーションの空間分布およびサイズ分布は,炭酸カルシウムコンクリーションの空間分布とサイズ分布を反映しているものと考えられる.炭酸カルシウムコンクリーションの核形成はランダムな確率過程であるため.空間分布もランダムな配置になることが期待されるが,Potter and Chan (2011: Geofluids, 11, 184)では空間分布はランダムからずれており等間隔に近いことが報告されている.一方でサイズ分布については,直径1mm, 1cm, 3cmにピークがあり,それぞれのピークの幅は,直径と正の相関が見られる(Potter et al., 2010 EPSL 201, 444).しかしこれら先行研究のデータのサンプル数は必ずしも大きいとは言えない(空間分布算出に用いられているコンクリーション数は20個程度)のため,本研究ではより大きなデータセットを用いた上で空間分布とサイズ分布を求めた.また,サイズ分布の特徴を再現するモデルを構築し,数値シミュレーションを行った.
画像解析
空間分布およびサイズ分布の計測には,エスカランテ国定公園で撮影された3種の画像を用いた.1:約1000 m2の範囲の画像.解像度の制約から,直径1cm以上の鉄コンクリーションを解析した.2:約0.1m2の範囲の画像4枚.1では解析できないmmサイズのコンクリーションを解析する.3:Potter and Chan (2011)で用いられた画像(Potter氏より提供).空間分布については,最近隣距離の頻度分布を算出し,ランダムな場合の解析解と比較した.解析の結果,Potter氏より提供された画像の一部(5枚)においてランダムな空間分布からの明らかなずれが見られたものの,その他のデータ(95枚)ではランダムな分布とのずれは見られなかった.ここから,サイズが小さい段階では何らかのメカニズムでランダムな空間分布からずれることがあるものの,基本的には空間分布がランダムであることがわかった.この結果は,炭酸カルシウムの核形成が砂岩中で一様に進行し,その核がそれぞれ独立に成長していることを示唆する.画像の解像度の制約により,先行研究で報告されている直径1cmにおけるサイズ分布のピークは観察されなかったものの,1mmと3cmのピークは本研究においても同定された.また,サイズと間隔との間の比例関係も観察された.この結果は,コンクリーションのサイズによらず砂岩の単位体積に含まれる炭酸カルシウムの含有量が一定であることを示す.
数値シミュレーション
炭酸カルシウムコンクリーションは,沈殿と溶解を繰り返して徐々に成長する.1次元球対称拡散方程式の定常解から,炭酸カルシウムの沈殿速度は半径と共に増大し,逆に溶解速度は半径が大きくなると減少する.ここから,溶解と沈殿が繰り返されると,比較的小さなコンクリーションは消滅し,大きなものが成長することになる.そこで,溶解量と沈殿量が常に等しいという制約の下,サイズ分布がどのように進化するのか数値シミュレーションを行った.結果,オストワルトライプニングと同様の進化を示し,平均サイズに比例して分布幅が広がることがわかった(図1).一方で形成時間については不確定性が大きく,1cmまで成長する時間は数千年ー数十万年と制約された.溶解時のpH,沈殿時の過飽和度,溶解時間および沈殿時間の間に関係があることが明らかとなった.
アメリカ・ユタ州のエスカランテ国定公園に産する球状鉄コンクリーションは大きさが1mm-数センチであり,砂岩粒子の隙間を酸化鉄が球殻状に埋めている.火星のメリディアニ平原において類似物が発見され,球状鉄コンクリーションの形成過程の解明が火星の古環境復元につながるものと期待されている.Yoshida et al. (2018: Sci. Adv. 4, eaau0872)により,球状鉄コンクリーション形成の第一段階は炭酸カルシウムコンクリーションの形成であることが示された.したがって,現在我々が観察している球状鉄コンクリーションの空間分布およびサイズ分布は,炭酸カルシウムコンクリーションの空間分布とサイズ分布を反映しているものと考えられる.炭酸カルシウムコンクリーションの核形成はランダムな確率過程であるため.空間分布もランダムな配置になることが期待されるが,Potter and Chan (2011: Geofluids, 11, 184)では空間分布はランダムからずれており等間隔に近いことが報告されている.一方でサイズ分布については,直径1mm, 1cm, 3cmにピークがあり,それぞれのピークの幅は,直径と正の相関が見られる(Potter et al., 2010 EPSL 201, 444).しかしこれら先行研究のデータのサンプル数は必ずしも大きいとは言えない(空間分布算出に用いられているコンクリーション数は20個程度)のため,本研究ではより大きなデータセットを用いた上で空間分布とサイズ分布を求めた.また,サイズ分布の特徴を再現するモデルを構築し,数値シミュレーションを行った.
画像解析
空間分布およびサイズ分布の計測には,エスカランテ国定公園で撮影された3種の画像を用いた.1:約1000 m2の範囲の画像.解像度の制約から,直径1cm以上の鉄コンクリーションを解析した.2:約0.1m2の範囲の画像4枚.1では解析できないmmサイズのコンクリーションを解析する.3:Potter and Chan (2011)で用いられた画像(Potter氏より提供).空間分布については,最近隣距離の頻度分布を算出し,ランダムな場合の解析解と比較した.解析の結果,Potter氏より提供された画像の一部(5枚)においてランダムな空間分布からの明らかなずれが見られたものの,その他のデータ(95枚)ではランダムな分布とのずれは見られなかった.ここから,サイズが小さい段階では何らかのメカニズムでランダムな空間分布からずれることがあるものの,基本的には空間分布がランダムであることがわかった.この結果は,炭酸カルシウムの核形成が砂岩中で一様に進行し,その核がそれぞれ独立に成長していることを示唆する.画像の解像度の制約により,先行研究で報告されている直径1cmにおけるサイズ分布のピークは観察されなかったものの,1mmと3cmのピークは本研究においても同定された.また,サイズと間隔との間の比例関係も観察された.この結果は,コンクリーションのサイズによらず砂岩の単位体積に含まれる炭酸カルシウムの含有量が一定であることを示す.
数値シミュレーション
炭酸カルシウムコンクリーションは,沈殿と溶解を繰り返して徐々に成長する.1次元球対称拡散方程式の定常解から,炭酸カルシウムの沈殿速度は半径と共に増大し,逆に溶解速度は半径が大きくなると減少する.ここから,溶解と沈殿が繰り返されると,比較的小さなコンクリーションは消滅し,大きなものが成長することになる.そこで,溶解量と沈殿量が常に等しいという制約の下,サイズ分布がどのように進化するのか数値シミュレーションを行った.結果,オストワルトライプニングと同様の進化を示し,平均サイズに比例して分布幅が広がることがわかった(図1).一方で形成時間については不確定性が大きく,1cmまで成長する時間は数千年ー数十万年と制約された.溶解時のpH,沈殿時の過飽和度,溶解時間および沈殿時間の間に関係があることが明らかとなった.