日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

コンビーナ:菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)、座長:菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)、金丸 仁明(宇宙航空研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[PPS07-P18] 木星衛星イオの環境を想定したSO2霜の紫外線照射による変性実験

*古賀 亮一1、平原 靖大1根岸 昌平1、李 源1、趙 彪1、伊藤 文之2今井 正尭3山崎 敦4 (1.名古屋大学、2.産業技術総合研究所、3.京都産業大学、4.宇宙科学研究所)

キーワード:イオ、中間赤外、実験室実験

木星衛星イオはSO2を主成分(~90%)とした希薄な硫黄酸化物大気(~10-3 Pa)とSO2の霜に覆われている。この大気は、高温火口から直接噴出と、表面に堆積したSO2の霜の昼面の表面温度の上昇による昇華によって生成する。大気中のSO2は電子衝突や紫外線波長帯の太陽光によってO, S原子に解離し、一部は大気スパッタリングによってイオ重力圏から脱出する。一方で、表面の”固体”のSO2霜は紫外線の照射によって、分解されるか、成長を促進されるかは明らかになっていない。Baklouti et al (2007)ではイオの特定のPele火口周辺の赤色堆積物を想定して、実験室でSO2に微量のS2Oが混合した霜を生成した。彼らはこの試料に紫外から可視の波長帯の光を照射し、中間赤外スペクトルを計測した。しかし、”普遍的な”イオ表面の霜に対する紫外線の影響を想定する場合、純粋なSO2霜への紫外線照射実験を行う必要がある。もし、地上観測と比較可能な希薄かつ低温の大気、表面霜、紫外線照射を再現した実験室測定で得られたスペクトルが得られれば、SO2の霜の形態とイオの多様な火山活動の時空間変化及び太陽光照射の関係性に踏み込み、惑星科学と物性物理・化学の相補的な理解に寄与することができる。
本研究では以下の手順で紫外線強度・波長とSO2の凝縮微粒子の化学的変性の関係性を中間赤外分光測定で明らかにする。液体窒素デュアーに小型の真空チャンバー内が接続しているクライオスタットを用いる(装置の詳細は同セッションの根岸他のポスターを参照)。小型のチャンバー内をイオの昼面の環境に近い10-3 Pa, 110-130 Kの状態に保ちつつ、デュアーのサンプルホルダーに取り付けられているCsIプレート上にSO2ガスを吹き付けて、SO2凝縮微粒子を堆積させる。その後、紫外光波長160 nmをピークに持つ重水素ランプ、及び遠紫外から可視域まで連続スペクトルを持つキセノンランプを光源にして、紫外線を照射しつつ、in-situで中間赤外線領域に現れる振動スペクトルの変化を測定する。重水素ランプを用いた場合、紫外線照度は104W/m2程度と見積もられる。木星磁気圏における120-250 nmでの木星磁気圏における太陽照度(e.g. 8.9×10-2 W/m2)の140日分の紫外線照射を重水素ランプ1分間の照射で実現可能と見積もられる。実際の赤外線照射変成実験では紫外線の照射時間を調整することで、紫外線照射の強度・年数とSO2霜の構造変化との関係性を明らかにする。実験のその場観測には准共通光路波面分割型位相シフト干渉法(Qi et al., 2015)に基づくイメージングフーリエ変換中間赤外分光器を用い、空間二次元の透過吸収スペクトルを取得する。本発表では得られた赤外吸収2Dスペクトルの時空間変化を通して、紫外線照射時におけるSO2霜の形態変化を議論する予定である。