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[PPS08-02] NWA7865隕石中に含まれるcompact Type A CAIのAl−Mg年代学
キーワード:Ca-Al-rich Inclusions、Al-Mg年代系、二次イオン質量分析計
隕石中に含まれるCa-Al-rich inclusion(CAI)は、太陽系最古の年代を示し(Connelly et al. 2012)、構成鉱物の酸素同位体組成は、三酸素同位体図上で非質量依存分別線上に不均質に分布する(e.g., Clayton et al., 1977)。このCAI鉱物間・鉱物内における非平衡分布は、16Oに富む供給源と16Oに乏しい供給源が共存する環境中でおこった化学プロセスを反映したものであると考えられている(e.g., Yurimoto et al., 2008; Krot, 2019)。また、ほとんどのCAIは形成時に半減期約70万年の短寿命放射性核種である26Alを含んでおり(MacPherson et al., 1995)、初期太陽系におけるイベントに制約を与える手法として、26Al−26Mg相対年代系が広く用いられてきた。
Compact Type A (CTA)及びType Bは、初期太陽系円盤内での複数回溶融により形成した火成CAIとされる。近年、それら火成CAIの結晶成長に伴うメルトの酸素同位体変化モデルが、詳細な岩石組織観察と局所酸素同位体分析を基として提唱された(Kawasaki et al., 2018, Suzumura et al., 2021)。さらに、単一の火成CAIに含まれる溶け残った鉱物と部分溶融メルトから結晶化した鉱物のそれぞれから高精度Al−Mg鉱物アイソクロンを取得することで、火成CAIの部分溶融プロセスについての年代学的研究が行われはじめた(Kawasaki et al., 2021)。本研究では、 Suzumura et al. (2021)によりその形成史が解明された、NWA 7865 CVred 3.1コンドライト隕石中のCTA CAI KU-N-02の溶け残り鉱物とその時溶融したメルトから結晶化した鉱物のそれぞれについて、北海道大学の二次イオン質量分析計(Cameca ims-1280HR)を用いて高精度Al−Mg鉱物アイソクロンを取得した。
本CAIは、形成後に加熱溶融したメルトから晶出したメリライト・ファッサイト(ブロック状を呈す)と、その時に溶け残ったスピネルから主に構成される。メリライト単結晶には小さく丸いファッサイト粒子(~50 µm)が包有され、この丸いファッサイト粒子も溶け残り鉱物である (Suzumura et al., 2021)。この溶融メルトから結晶化したメリライトとブロック状のファッサイトのAl−Mg鉱物アイソクロンは、(4.68 ± 0.15) × 10–5の初生26Al/27Al比を示し(図1, 実線)、この初生26Al/27Al比は、CAI形成領域に26Alが均一に分布していた場合、部分溶融プロセスがcanonical CAI形成時 (Jacobsen et al., 2008; Larsen et al., 2011)からおよそ11 ± 3万年後に起きたことを示す。溶け残り鉱物であるスピネルと丸いファッサイトのAl-Mg同位体組成もまた、その誤差範囲内でこの鉱物アイソクロン上にプロットされる。一方で、太陽系の初生Mg同位体組成 (Larsen et al., 2011)を仮定した溶け残り鉱物のモデルアイソクロンを求めると、(5.16 ± 0.17) × 10–5の初生26Al/27Al比が得られる (図1, 点線)。このモデルアイソクロンが示す初生26Al/27Al比は、CAI全岩アイソクロンの値 (~5.2 × 10–5; Jacobsen et al., 2008; Larsen et al., 2011)と一致する。また、KU-N-02前駆物質のAl/Mg化学分別がcanonical CAI形成時 (26Al/27Al ~ 5.2 × 10–5)に起きていた場合、Mg同位体進化により、26Al/27Al比が (4.68 ± 0.15) × 10–5時の26Mg過剰値は0.10 ± 0.07 ‰であったと見積られる。この26Mg過剰値は、鉱物アイソクロンから予想された初生26Mg過剰値 (0.041 ± 0.036 ‰)と誤差内で一致する。本研究データは、KU-N-02前駆物質がcanonical CAIと同時期に形成し、その11 ± 3 万年後に部分溶融プロセスを経験したことを示唆する。
Compact Type A (CTA)及びType Bは、初期太陽系円盤内での複数回溶融により形成した火成CAIとされる。近年、それら火成CAIの結晶成長に伴うメルトの酸素同位体変化モデルが、詳細な岩石組織観察と局所酸素同位体分析を基として提唱された(Kawasaki et al., 2018, Suzumura et al., 2021)。さらに、単一の火成CAIに含まれる溶け残った鉱物と部分溶融メルトから結晶化した鉱物のそれぞれから高精度Al−Mg鉱物アイソクロンを取得することで、火成CAIの部分溶融プロセスについての年代学的研究が行われはじめた(Kawasaki et al., 2021)。本研究では、 Suzumura et al. (2021)によりその形成史が解明された、NWA 7865 CVred 3.1コンドライト隕石中のCTA CAI KU-N-02の溶け残り鉱物とその時溶融したメルトから結晶化した鉱物のそれぞれについて、北海道大学の二次イオン質量分析計(Cameca ims-1280HR)を用いて高精度Al−Mg鉱物アイソクロンを取得した。
本CAIは、形成後に加熱溶融したメルトから晶出したメリライト・ファッサイト(ブロック状を呈す)と、その時に溶け残ったスピネルから主に構成される。メリライト単結晶には小さく丸いファッサイト粒子(~50 µm)が包有され、この丸いファッサイト粒子も溶け残り鉱物である (Suzumura et al., 2021)。この溶融メルトから結晶化したメリライトとブロック状のファッサイトのAl−Mg鉱物アイソクロンは、(4.68 ± 0.15) × 10–5の初生26Al/27Al比を示し(図1, 実線)、この初生26Al/27Al比は、CAI形成領域に26Alが均一に分布していた場合、部分溶融プロセスがcanonical CAI形成時 (Jacobsen et al., 2008; Larsen et al., 2011)からおよそ11 ± 3万年後に起きたことを示す。溶け残り鉱物であるスピネルと丸いファッサイトのAl-Mg同位体組成もまた、その誤差範囲内でこの鉱物アイソクロン上にプロットされる。一方で、太陽系の初生Mg同位体組成 (Larsen et al., 2011)を仮定した溶け残り鉱物のモデルアイソクロンを求めると、(5.16 ± 0.17) × 10–5の初生26Al/27Al比が得られる (図1, 点線)。このモデルアイソクロンが示す初生26Al/27Al比は、CAI全岩アイソクロンの値 (~5.2 × 10–5; Jacobsen et al., 2008; Larsen et al., 2011)と一致する。また、KU-N-02前駆物質のAl/Mg化学分別がcanonical CAI形成時 (26Al/27Al ~ 5.2 × 10–5)に起きていた場合、Mg同位体進化により、26Al/27Al比が (4.68 ± 0.15) × 10–5時の26Mg過剰値は0.10 ± 0.07 ‰であったと見積られる。この26Mg過剰値は、鉱物アイソクロンから予想された初生26Mg過剰値 (0.041 ± 0.036 ‰)と誤差内で一致する。本研究データは、KU-N-02前駆物質がcanonical CAIと同時期に形成し、その11 ± 3 万年後に部分溶融プロセスを経験したことを示唆する。