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[PPS08-09] 炭素質コンドライト母天体の熱履歴の制約を目指した加熱脱水の反応速度論
キーワード:炭素質コンドライト、加熱脱水、反応速度論
CI, CM, CR炭素質コンドライトは低温の水質変質過程を経験しており,含水鉱物を含んでいる。これらの隕石の一部には,水質変質の後に衝突や太陽熱により加熱され,脱水したものが知られている(Heated CM/CYコンドライト) [1, 2]。脱水は主要な含水鉱物であるフィロケイ酸塩のOH基が400℃から770℃で脱水することに起因するとされる[3]。隕石の加熱実験により,加熱温度や加熱過程の制約がなされてきたが[4, 5]、加熱時間も含めた速度論的な研究はあまり行われていない。本研究では、含水鉱物の脱水の程度から加熱を受けたCM, CI, CYコンドライトの母天体である小惑星の熱史を制約することを目的とし、炭素質コンドライトの加熱脱水実験を行い、反応速度論を用いて脱水の速度を評価した。
始原的なMurchison(CM2.5)及びIvuna(CI)隕石を出発試料とし、赤外分光法(FTIR)及び加熱ステージを用い、高温で2.72 µmのOHバンドをその場観察した。350℃~525℃の各温度において,OHバンドのピーク面積の時間変化を調べた。OHバンドの減少を1次反応、二次元拡散、三次元拡散などのモデルでフィッティングし反応速度定数を求めた[6]。反応速度定数の平均値からアレニウスプロットを作成し、アレニウスの式によって頻度因子や活性化エネルギーを求めた。また、OHバンドの減少を温度と時間の関係として表す温度-時間-変換 (TTT)ダイアグラムを求めた。
MurchisonとIvunaは、三次元拡散モデルがより良いフィッティング結果となった。Jandar三次元拡散モデルを用いると、Murchisonの頻度因子は11.9 h-1,活性化エネルギーは45.3 kJ mol-1となった。Ivunaの頻度因子は785 h-1,活性化エネルギーは70.4 kJ mol-1となった。Ginstling-Brounshtein三次元拡散モデルを用いるとMurchisonの頻度因子は6.56 h-1,活性化エネルギーは42.5 kJ mol-1となった。Ivunaの頻度因子は339 h-1,活性化エネルギーは66.2 kJ mol-1となった。
従って、元の組成がMurchisonと同様であった場合、三次元モデルのTTTグラムより、例えば200℃では50%脱水するのに約10日、250℃では約5日、300℃では約2日かかったと推定できる。一方、Ivunaの場合で同様に計算すると, 200℃では約100日、250℃では約30日、300℃では約5日かかったと推定できる。
このように、含水鉱物の加熱脱水の反応速度論から、短期間の加熱を受けた炭素質コンドライト母天体の熱履歴の制約が可能であると期待される。
文献:[1] T. Nakamura, Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 100, 260-272 (2005). [2] A.J. King et al, Geochemistry 79, 125531 (2019). [3] A. Garenne et al, Geochimica et Cosmochimica Acta 137, 93–112 (2014). [4] F. Nakato et al, Earth Planets and Space 60, 855-864 (2008). [5] M. Matsuoka et al, Geochimica et Cosmochimica Acta 316, 150-167 (2022). [6] Y. Kebukawa et al, Meteoritics & Planetary Science 45, Nr 1, 99–113 (2010).
始原的なMurchison(CM2.5)及びIvuna(CI)隕石を出発試料とし、赤外分光法(FTIR)及び加熱ステージを用い、高温で2.72 µmのOHバンドをその場観察した。350℃~525℃の各温度において,OHバンドのピーク面積の時間変化を調べた。OHバンドの減少を1次反応、二次元拡散、三次元拡散などのモデルでフィッティングし反応速度定数を求めた[6]。反応速度定数の平均値からアレニウスプロットを作成し、アレニウスの式によって頻度因子や活性化エネルギーを求めた。また、OHバンドの減少を温度と時間の関係として表す温度-時間-変換 (TTT)ダイアグラムを求めた。
MurchisonとIvunaは、三次元拡散モデルがより良いフィッティング結果となった。Jandar三次元拡散モデルを用いると、Murchisonの頻度因子は11.9 h-1,活性化エネルギーは45.3 kJ mol-1となった。Ivunaの頻度因子は785 h-1,活性化エネルギーは70.4 kJ mol-1となった。Ginstling-Brounshtein三次元拡散モデルを用いるとMurchisonの頻度因子は6.56 h-1,活性化エネルギーは42.5 kJ mol-1となった。Ivunaの頻度因子は339 h-1,活性化エネルギーは66.2 kJ mol-1となった。
従って、元の組成がMurchisonと同様であった場合、三次元モデルのTTTグラムより、例えば200℃では50%脱水するのに約10日、250℃では約5日、300℃では約2日かかったと推定できる。一方、Ivunaの場合で同様に計算すると, 200℃では約100日、250℃では約30日、300℃では約5日かかったと推定できる。
このように、含水鉱物の加熱脱水の反応速度論から、短期間の加熱を受けた炭素質コンドライト母天体の熱履歴の制約が可能であると期待される。
文献:[1] T. Nakamura, Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 100, 260-272 (2005). [2] A.J. King et al, Geochemistry 79, 125531 (2019). [3] A. Garenne et al, Geochimica et Cosmochimica Acta 137, 93–112 (2014). [4] F. Nakato et al, Earth Planets and Space 60, 855-864 (2008). [5] M. Matsuoka et al, Geochimica et Cosmochimica Acta 316, 150-167 (2022). [6] Y. Kebukawa et al, Meteoritics & Planetary Science 45, Nr 1, 99–113 (2010).