日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 太陽系物質進化

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、コンビーナ:日比谷 由紀(東京大学 大学院総合文化研究科)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、コンビーナ:松本 徹(九州大学期間教育院)、座長:日比谷 由紀(東京大学 大学院総合文化研究科)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)


11:00 〜 13:00

[PPS08-P02] 微小領域X線回折法によるレーザー衝撃圧縮を受けたSiO2の変成評価

*大野 正和1近藤 忠1、境家 達弘1重森 啓介2、弘中 陽一郎2 (1.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻、2.大阪大学レーザー科学研究所)


キーワード:二酸化ケイ素、高圧鉱物、衝撃変成、レーザー衝撃回収実験、微小領域X線回折

1. はじめに
小天体の衝突現象は惑星形成・進化の素過程の一つとして重要な現象であり、我々が入手できる、最も一般的な地球外物質である隕石の中には様々な衝撃変成を受けた鉱物が発見されている。我々はこれまで大型レーザーを用いて従来のガス銃では実現困難な10km/sを超える衝撃履歴を持った試料の回収技術の開発[1]とその試料中の衝撃変成分析に取り組んできた。近年では、隕石中のSiO2の衝撃変成の履歴解明を目的として大型レーザーを用いたレーザー衝撃回収実験を行い、約100GPa以上の衝撃圧縮を受けた粉末試料を、位置情報を保ったまま回収することに成功している。そこで本研究では、そのレーザー衝撃圧縮回収試料の高圧変成分布を主に光学顕微鏡観察及び微小領域X線回折によって調べたのでその結果を報告する。

2. 実験方法
今回分析を行ったのは、初期粒径数µm程度の合成石英粉末を大阪大学レーザー科学研究所の激光Ⅻ号レーザー(HIPER)によって衝撃圧縮した後の回収試料であり、試料表面での圧力は約80~130GPa程度であったと考えられる。レーザー衝撃回収実験は、過去に単結晶試料での実験の際に報告した手法と同様の試料回収セル[1]を用いて行った。回収後の試料は、衝撃点から深さ方向の分布を観察するために、中央部付近で切断して試料断面の薄片試料(厚み50~70µm)を作製した。薄片試料の分析は反射光及び透過光での光学顕微鏡観察を行った後、微小領域X線回折測定(RINT RAPID Ⅱ, RIGAKU Co. Ltd.)を行った。X線照射にはφ30µmとφ100µmのコリメーターを用いた。測定により得られたX線回折プロファイル(2θ=20°~80°)から、SiO2高圧相の同定及び分布の評価、各測定点の石英結晶内に生じている不均一歪み及び格子体積の評価を行った。

3. 結果と考察
試料断面の光学顕微鏡観察からは、白色部・黒色部などの複数の変成組織が衝撃直下から概ね同心円状の層構造を形成していることが分かった。X線回折測定の結果、衝撃直下の白色部には石英以外にスティショバイトが急冷凍結されていることが分かった。また、これまでに知られているSiO2の安定相及びチタンやアルミニウムの回折線のいずれとも一致しない、未知相の回折線も観測された。回収試料中の石英については、衝撃点に近い場所ほど回折線の半値幅と格子体積は大きくなっており、深さとともに出発試料の半値幅と格子体積に近づいていくことが分かった。発表では、これらの光学顕微鏡及びX線回折観察結果をもとに試料の変成分布を検討した内容について詳細を報告する。

参考文献
[1] K. Nagaki et al.: Meteoritics & Planetary Science, 51, 1153-1162 (2016)