11:00 〜 13:00
[SCG42-P04] 北上山地における熱年代学データの解釈
キーワード:北上山地、熱年代学
弧-海溝系の前弧域における隆起・沈降をはじめとしたテクトニクスは,プレート境界での沈み込み機構を強く反映すると考えられている.しかし,東北日本前弧域では,隆起・沈降の直接的な痕跡となる地層等の分布に乏しいこともあり,106年以上の時間スケールでの隆起・沈降の定量的議論はほとんどなされていない.そこで本研究では東北日本弧前弧域に存在する北上山地について,主に白亜紀花崗岩類を対象とした熱年代学データ(ジルコン U-Pb,アパタイトフィッション・トラック(AFT),アパタイトヘリウム(AHe)年代)を基に隆起・削剥史の推定を試みた.
これまでにジルコンU-Pb年代は約135~120 Ma(e.g. Osozawa et al., 2019),AFT年代は約130~70 Ma(後藤,2001; 福田ほか,未公表; 梶田ほか,2021),AHe年代は約80~30 Ma(Fukuda et al., 2020; 梶田ほか,2021)が報告されている.AFT年代は東縁部から西に向かって若くなり,AHe年代は西縁部の約 80 Maを除けば東西で約50~30 Maにまとまる.この東西傾向は,ジルコンU-Pb年代を考慮すると,岩体形成に起因するものではなく,地殻浅部での隆起・削剥に伴う冷却史の空間的差異を反映していると考えられる.このような東西での冷却史の違いは,北上山地内での適当な熱構造史もしくは隆起・削剥史の東西差を仮定することで説明可能である.熱構造史については火山フロントの移動や浄土ヶ浜流紋岩類のようなアダカイト質岩を産する火成活動などの影響が想定される.隆起・削剥史については,Menant et al. (2020) で示される底付け付加に起因する前弧域での隆起などの影響が推定される.当日の発表では,これらの要因に関してFT長分布を用いた熱史逆解析の結果やその他の地質学的知見を踏まえより詳細に検討する予定である.
今後の課題としては(1)熱史逆解析地点数の増加,(2)より複合的なモデルとの比較検討,(3)より閉鎖温度の低い超低温熱年代計(e.g. 電子スピン共鳴法)の適用などが挙げられる.
謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30~令和3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)(課題番号JPJ007597)」の成果の一部である.また、本研究は平成26~30 年度文部科学省新学術研究領域「異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の解明」(代表:鷺谷 威、課題 番号26109003)によって助成された.
これまでにジルコンU-Pb年代は約135~120 Ma(e.g. Osozawa et al., 2019),AFT年代は約130~70 Ma(後藤,2001; 福田ほか,未公表; 梶田ほか,2021),AHe年代は約80~30 Ma(Fukuda et al., 2020; 梶田ほか,2021)が報告されている.AFT年代は東縁部から西に向かって若くなり,AHe年代は西縁部の約 80 Maを除けば東西で約50~30 Maにまとまる.この東西傾向は,ジルコンU-Pb年代を考慮すると,岩体形成に起因するものではなく,地殻浅部での隆起・削剥に伴う冷却史の空間的差異を反映していると考えられる.このような東西での冷却史の違いは,北上山地内での適当な熱構造史もしくは隆起・削剥史の東西差を仮定することで説明可能である.熱構造史については火山フロントの移動や浄土ヶ浜流紋岩類のようなアダカイト質岩を産する火成活動などの影響が想定される.隆起・削剥史については,Menant et al. (2020) で示される底付け付加に起因する前弧域での隆起などの影響が推定される.当日の発表では,これらの要因に関してFT長分布を用いた熱史逆解析の結果やその他の地質学的知見を踏まえより詳細に検討する予定である.
今後の課題としては(1)熱史逆解析地点数の増加,(2)より複合的なモデルとの比較検討,(3)より閉鎖温度の低い超低温熱年代計(e.g. 電子スピン共鳴法)の適用などが挙げられる.
謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30~令和3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)(課題番号JPJ007597)」の成果の一部である.また、本研究は平成26~30 年度文部科学省新学術研究領域「異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の解明」(代表:鷺谷 威、課題 番号26109003)によって助成された.