11:00 〜 13:00
[SCG44-P02] 異なる粒状物質が挟在する二面剪断変形試験による摩擦の多様性
キーワード:摩擦、粒状物質、剪断応力
【背景・目的】
JAMSTEC50周年記念行事の一環として「すべらない砂甲子園」という「日本一すべらない砂」を決定する企画を実施した(https://www.jamstec.go.jp/50th/suberanai/)。一般公募により選出された日本各地の海浜砂、火山灰、花崗岩などの50種類の砂や岩石の中から相対的に一番すべりにくい砂を室内摩擦実験により決定する企画である。そのため本企画を通して得られる力学特性を、摩擦係数によって表現して整理することにより、天然の岩石や断層物質の摩擦特性の多様性の理解につながると期待される。一方で、粒状物質の摩擦係数(摩擦抵抗)はすべり量、すべり速度、すべり履歴などの要素に大きく影響を受けるために、未知の自然砂に対する摩擦抵抗の差異を一義的に評価することは非常に難しい。そこで本研究では「すべらない砂甲子園」の企画のために「異なる粒状物質の摩擦抵抗を相対的に評価する摩擦実験システム」を構築し、本企画を通して得られた粒状物質の摩擦特性を評価した。
【方法】
本研究では回転式摩擦実験装置を用いた粉体の摩擦実験をベースとした。平行な二つの模擬断層面(直径25mmの円)に2つの異なる粒状物質をはさみ、同じ方向から同じ大きさの剪断応力を同時に与える。ある剪断応力を超えるとどちらか片方の粒状物質が滑り出す。この方法を採用すると、回転した側の粒状物質の摩擦抵抗が相対的に低いことが分かると同時に、すべっている粒状物質の剪断応力が記録されることになる。「すべらない砂甲子園」では先に1/4回転した砂を負けとした。50種類の砂についてトーナメント方式の勝ち抜き戦を行い、最後まですべらなかった砂を優勝とした。粉体を挟む模擬岩石は表面に凹凸の溝の加工を施した金属を用いた。垂直応力を4MPaに固定した状態で剪断応力(トルク)を一定加速度(4Nm/分)で増加させた。速度が0.1 rpm(等価変位速度:~1mm/s)に到達した時点で0.1 rpmの一定速度で回転する制御を行った。粒状試料は直径1mm以下の乾燥試料1gを用いた。すべての粒状試料について構成鉱物、粒径、平均密度を測定し、剪断応力との関係を評価した。
【結果】
試合は「若狭湾で養殖されているかき殻を焼いて砕いた粉末」が優勝した。当然ではあるが、試合に勝ち上がっていった砂は最大剪断応力が高い傾向が認められた。とりわけ固結した岩石(火成岩・堆積岩・鉱石)を人為的に砕いた粉体は海浜砂・川砂のような自然の粒状体と比較して最大剪断応力が高く、上位に勝ち上がる傾向が認められた。また、石英の含有量が少なく、平均粒径が大きい粒状物質ほどピーク摩擦が高くなる傾向が認められた。一方自然砂のなかでは磁鉄鉱(砂鉄)やスピネルを多く含み、平均密度が高い砂の摩擦が低下する傾向が認められた。いずれの要素も摩擦に影響を与えうるが、中でも岩片を人為的に砕いた粒状体と自然砂との間には大きな摩擦のギャップが生じていることが明らかとなった。人為的に砕いた砂と自然砂の大きな違いは、前者は粒子形状が角張っており、後者は丸まっていることである。その中でも優勝した「かき殻を焼いて砕いた粉末」は扁平な鱗状をしているため、円磨度だけでなく扁平度が摩擦特性に大きな影響を与えていることが考えられる。扁平な粒子は層状に並ぶことにより粒子間の接触面積が大きくなることが摩擦係数を増大させている原因の一つと考えられる。
JAMSTEC50周年記念行事の一環として「すべらない砂甲子園」という「日本一すべらない砂」を決定する企画を実施した(https://www.jamstec.go.jp/50th/suberanai/)。一般公募により選出された日本各地の海浜砂、火山灰、花崗岩などの50種類の砂や岩石の中から相対的に一番すべりにくい砂を室内摩擦実験により決定する企画である。そのため本企画を通して得られる力学特性を、摩擦係数によって表現して整理することにより、天然の岩石や断層物質の摩擦特性の多様性の理解につながると期待される。一方で、粒状物質の摩擦係数(摩擦抵抗)はすべり量、すべり速度、すべり履歴などの要素に大きく影響を受けるために、未知の自然砂に対する摩擦抵抗の差異を一義的に評価することは非常に難しい。そこで本研究では「すべらない砂甲子園」の企画のために「異なる粒状物質の摩擦抵抗を相対的に評価する摩擦実験システム」を構築し、本企画を通して得られた粒状物質の摩擦特性を評価した。
【方法】
本研究では回転式摩擦実験装置を用いた粉体の摩擦実験をベースとした。平行な二つの模擬断層面(直径25mmの円)に2つの異なる粒状物質をはさみ、同じ方向から同じ大きさの剪断応力を同時に与える。ある剪断応力を超えるとどちらか片方の粒状物質が滑り出す。この方法を採用すると、回転した側の粒状物質の摩擦抵抗が相対的に低いことが分かると同時に、すべっている粒状物質の剪断応力が記録されることになる。「すべらない砂甲子園」では先に1/4回転した砂を負けとした。50種類の砂についてトーナメント方式の勝ち抜き戦を行い、最後まですべらなかった砂を優勝とした。粉体を挟む模擬岩石は表面に凹凸の溝の加工を施した金属を用いた。垂直応力を4MPaに固定した状態で剪断応力(トルク)を一定加速度(4Nm/分)で増加させた。速度が0.1 rpm(等価変位速度:~1mm/s)に到達した時点で0.1 rpmの一定速度で回転する制御を行った。粒状試料は直径1mm以下の乾燥試料1gを用いた。すべての粒状試料について構成鉱物、粒径、平均密度を測定し、剪断応力との関係を評価した。
【結果】
試合は「若狭湾で養殖されているかき殻を焼いて砕いた粉末」が優勝した。当然ではあるが、試合に勝ち上がっていった砂は最大剪断応力が高い傾向が認められた。とりわけ固結した岩石(火成岩・堆積岩・鉱石)を人為的に砕いた粉体は海浜砂・川砂のような自然の粒状体と比較して最大剪断応力が高く、上位に勝ち上がる傾向が認められた。また、石英の含有量が少なく、平均粒径が大きい粒状物質ほどピーク摩擦が高くなる傾向が認められた。一方自然砂のなかでは磁鉄鉱(砂鉄)やスピネルを多く含み、平均密度が高い砂の摩擦が低下する傾向が認められた。いずれの要素も摩擦に影響を与えうるが、中でも岩片を人為的に砕いた粒状体と自然砂との間には大きな摩擦のギャップが生じていることが明らかとなった。人為的に砕いた砂と自然砂の大きな違いは、前者は粒子形状が角張っており、後者は丸まっていることである。その中でも優勝した「かき殻を焼いて砕いた粉末」は扁平な鱗状をしているため、円磨度だけでなく扁平度が摩擦特性に大きな影響を与えていることが考えられる。扁平な粒子は層状に並ぶことにより粒子間の接触面積が大きくなることが摩擦係数を増大させている原因の一つと考えられる。