日本地球惑星科学連合2022年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG46] ハードロック掘削科学〜陸上掘削から深海底掘削そしてオマーン〜

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (27) (Ch.27)

コンビーナ:Sayantani Chatterjee(Niigata University, Department of Geology, Faculty of Science)、コンビーナ:道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)、座長:Chatterjee Sayantani(Niigata University, Department of Geology, Faculty of Science)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)

11:00 〜 13:00

[SCG46-P03] オマーンオフィオライトの苦鉄質岩を用いた静水圧下での比抵抗・地震波速度・空隙率の同時測定

*谷本 和優1赤松 祐哉1片山 郁夫1 (1.広島大学)

キーワード:海洋地殻、第2/3層、電気比抵抗、地震波速度、クラックの性質

海洋底の地球物理探査によると、海洋地殻は地震波速度と電気比抵抗が深さとともに大きく増加するlayer 2とそれらの物性がほぼ変化しないlayer 3に分けられる。その境界の深さは地域にもよるが約1-2 kmに存在すると報告されている(e.g., Detrick et al., 1994)。この境界は岩石中に含まれる空隙の密度や形状、そして連結度が変化することに起因していると考えられている。そこで本実験ではオマーンオフィオライトにおいてlayer 2/3に相当する地域で採取された岩石を用い、高圧条件での地震波速度・電気比抵抗・空隙率の測定を同時に行った。それらの結果に有効媒質理論などを適用することで空隙の物理特性を調べ、海洋地殻のlayer 2/3境界における物性変化の要因を解明することを本研究の目的とした。
 試料はオマーンオフィオライトで採取された玄武岩(1試料)とダイアベース(3試料)を用いた。地震波速度の測定に加え、電気比抵抗の測定システムを開発し、空隙率を合わせた同時測定を行った。実験で使用する間隙流体は海水を模擬した0.5 mol/LのNaCl溶液を使用し、間隙水圧は1 MPaで一定にして、封圧を3 MPaから200 MPaまで段階的に上げて実験を行った。電気比抵抗は2端子法により試料の両端に取り付けた電極から得られたインピーダンスと位相差から求め、地震波速度はパルス透過法で得られた波形を解析し、P波速度とS波速度を求めた。空隙率はガスピクノメータから求めた加圧前の空隙率と試料の圧密によって空隙から押し戻される水量をシリンジポンプで計測することにより算出した。
 実験ではいずれの試料においても加圧に伴う系統的な空隙率の減少と地震波速度、電気比抵抗の増加が観察された。圧密による地震波速度と電気比抵抗の変化はアスペクト比の小さいクラック状の空隙が閉鎖するものと考えられる。一方で最大封圧の200 MPaでも空隙率が高い試料が存在し、これはクラックに加えアスペクト比の大きい空隙が残存することを示唆している。これらの結果に有効媒質理論とパーコレーションモデルを適用することで地震波速度と電気比抵抗の関係を評価することができ、地震波速度はクラックの密度と形状に、電気比抵抗はそれらに加えてクラックの連結度に依存することが分かった。東太平洋において科学掘削を実施した504Bサイトの掘削孔では地震波速度と電気比抵抗の詳細なプロファイルが報告されており、今回の実験結果とモデルを適用することで以下のことが分かった。(1)Layer 2/3境界はクラック密度の変化と対応しており地震波速度と電気比抵抗の変化量は著しく減少する。(2)Layer 2の浅部ではクラック密度の減少とともに地震波速度は徐々に増加するが、電気比抵抗の場合クラックの連結度が高いためほぼ海水に近い値を示す。しかし、深さ0.6 ㎞付近から連結度が減少し電気比抵抗は急激に上昇する。