13:45 〜 14:00
[SCG47-01] 急冷周縁相の観察から推定される小木ピクライト質貫入岩体の形成過程
キーワード:急冷周縁相、メルト包有物、部分溶融、初生マグマ、スピネル
新潟県佐渡島小木半島の沿岸部の凝灰質泥岩中には,40–60 vol%のかんらん石結晶を含むピクライト質ドレライトが貫入している.山川・茅原(1968)は,このピクライトを含む小木玄武岩下部玄武岩層の初生マグマをアルカリ玄武岩マグマであると考えた.Yokoyama et al. (1992) は,ピクライトの周囲に多くのかんらん石玄武岩が産し,この地域から高Mgガラスの産出がないことから,貫入マグマの液体部分はピクライト質ではなくかんらん石玄武岩組成であったと考えた.藤林ほか(2016)は,かんらん石のFo-CaO (wt%) 組成変化トレンドが高Caボニナイトのものと類似することを指摘している.またクロムスピネルやかんらん石の化学組成から,同ピクライトがマントルに由来する可能性も示されている(Oba and Okada, 1999).このように同ピクライト質貫入岩体について数多くの研究があるが,岩体の形成深度や,貫入したマグマの詳細な化学組成などのデータは十分に得られてはいなかった.
そこで本研究では,貫入マグマの化学組成の情報が残されていることが期待される急冷周縁相と,玄武岩質マグマからの早期晶出鉱物であるスピネル中の多相包有物(部分的に結晶化したメルト包有物)に着目し,詳しい調査・分析を行った.Fujibayashi et al. (2014) は,貫入岩体の壁岩(泥岩と凝灰岩)との接触部において凝灰岩中のガラス片が幅約10 cm程度にわたって溶けコヒーレントなガラスになっていると報告している.今回の我々の調査では,貫入岩体の急冷周縁相と壁岩の凝灰質泥岩の間に,流紋岩組成のガラス質岩が幅50 cm程度の帯状に分布していることを確認した.ガラス質岩は斑状組織に似た組織を呈するが,流理構造やパーライト構造を持つガラス質な基質中に細粒の安山岩質軽石,変質火山岩片,フランボイダルパイライトを含む.Qtz-Ab-Or ternary phase diagram (Blundy and Cashman, 2001) において,壁岩の凝灰質泥岩のCIPWノルムは石英と長石の共融線より石英側であるが,ガラス質岩のCIPWノルムは共融線付近にプロットされる.これらのことから,ガラス質岩は母岩の凝灰質泥岩の部分溶融によって形成されたことが示唆される.この場合,ピクライト質貫入岩体の定置深度は約8–12 km(=200–300 MPa)と見積もられる.
この貫入岩体の主部はピクライト~コマチアイト組成(14–28 wt% MgO)であるが,急冷周縁玄武岩は高Mg玄武岩~玄武岩質安山岩組成(~10 wt% MgO)で,本岩体中最も分化した化学組成をもつ.このことからは,かんらん石が急冷周縁玄武岩から流動分化作用によって取り去られたか(e.g. Simkin, 1967),急冷周縁相を形成したマグマが先行して貫入した後によりかんらん石に富むマグマが貫入した(e.g. Gibb and Henderson, 1992)可能性が考えられる.
急冷周縁相のスピネル中の多相固体包有物は,単斜輝石,ガラス,空隙からなる.同多相包有物の平均化学組成は,急冷周縁相の全岩化学組成と類似し,そのFeOtotal/MgO比は1以下(約0.6–0.7)であることから,ピクライト質貫入岩体を形成したマグマはマントルと化学平衡にあった可能性が高い.
また,この多相包有物組成を用いてMELTSによる晶出過程のシミュレーション(Gualda and Ghiorso, 2015)を行ったところ,300 MPa以下ではかんらん石が生じ,多相包有物の鉱物組み合わせとの不一致が見られた.このことから,スピネル中の多相包有物の単斜輝石はより深部で結晶化した可能性がある.
そこで本研究では,貫入マグマの化学組成の情報が残されていることが期待される急冷周縁相と,玄武岩質マグマからの早期晶出鉱物であるスピネル中の多相包有物(部分的に結晶化したメルト包有物)に着目し,詳しい調査・分析を行った.Fujibayashi et al. (2014) は,貫入岩体の壁岩(泥岩と凝灰岩)との接触部において凝灰岩中のガラス片が幅約10 cm程度にわたって溶けコヒーレントなガラスになっていると報告している.今回の我々の調査では,貫入岩体の急冷周縁相と壁岩の凝灰質泥岩の間に,流紋岩組成のガラス質岩が幅50 cm程度の帯状に分布していることを確認した.ガラス質岩は斑状組織に似た組織を呈するが,流理構造やパーライト構造を持つガラス質な基質中に細粒の安山岩質軽石,変質火山岩片,フランボイダルパイライトを含む.Qtz-Ab-Or ternary phase diagram (Blundy and Cashman, 2001) において,壁岩の凝灰質泥岩のCIPWノルムは石英と長石の共融線より石英側であるが,ガラス質岩のCIPWノルムは共融線付近にプロットされる.これらのことから,ガラス質岩は母岩の凝灰質泥岩の部分溶融によって形成されたことが示唆される.この場合,ピクライト質貫入岩体の定置深度は約8–12 km(=200–300 MPa)と見積もられる.
この貫入岩体の主部はピクライト~コマチアイト組成(14–28 wt% MgO)であるが,急冷周縁玄武岩は高Mg玄武岩~玄武岩質安山岩組成(~10 wt% MgO)で,本岩体中最も分化した化学組成をもつ.このことからは,かんらん石が急冷周縁玄武岩から流動分化作用によって取り去られたか(e.g. Simkin, 1967),急冷周縁相を形成したマグマが先行して貫入した後によりかんらん石に富むマグマが貫入した(e.g. Gibb and Henderson, 1992)可能性が考えられる.
急冷周縁相のスピネル中の多相固体包有物は,単斜輝石,ガラス,空隙からなる.同多相包有物の平均化学組成は,急冷周縁相の全岩化学組成と類似し,そのFeOtotal/MgO比は1以下(約0.6–0.7)であることから,ピクライト質貫入岩体を形成したマグマはマントルと化学平衡にあった可能性が高い.
また,この多相包有物組成を用いてMELTSによる晶出過程のシミュレーション(Gualda and Ghiorso, 2015)を行ったところ,300 MPa以下ではかんらん石が生じ,多相包有物の鉱物組み合わせとの不一致が見られた.このことから,スピネル中の多相包有物の単斜輝石はより深部で結晶化した可能性がある.