14:00 〜 14:15
[SCG47-02] 秋田県仙北市荷葉岳大黒溶岩に含まれる灰長石巨晶の成因
火山岩を構成する斑晶鉱物のうち、粒径が著しく大きくAn成分が高い斜長石(典型的には粒径1cm以上かつAn>90)は灰長石巨晶と呼ばれ、日本列島産火山岩に特徴的な鉱物であることが知られている (Kimata et al. 1995) 。灰長石巨晶形成の生成機構として複数の仮説が提案されているが,灰長石巨晶の内部構造や化学ゾーニングを考慮したモデルはない.本研究では、秋田県仙北市荷葉岳火山に産出する灰長石巨晶の鉱物学的特徴を記載し.得られた分析結果に基づき,荷葉岳火山に産出する灰長石巨晶の成因を考察する.
研究試料は荷葉岳の南側に分布する大黒溶岩の下部および上部から採取された玄武岩質火山岩である。大黒溶岩に含まれる灰長石斑晶の特徴として,溶岩上部の著しく発泡した部分に粗粒な灰長石巨晶が多く含まれ、下部の緻密な部分には比較的粒径の小さな灰長石巨晶が多く含まれることが分かった.しかし、蛍光X線分析による全岩化学組成に基づくと、大黒溶岩の上部と下部はいずれも玄武岩に分類され、大きな化学組成の変化は見られなかった.偏光顕微鏡観察により、斑晶鉱物は普通輝石と灰長石,石基は自形斜長石であることがわかった.SEM-EDS を用いた観察により,灰長石斑晶には低An #(50%程度)な部分と高 An#(83%-86%)な部分があり、以下のような産状を示すことが明らかになった。 (1) 中心部が高An#で縁辺部は石基斜長石と近い An#を示す正累帯型、(2) 高An#の中心部から低An#の縁辺部に至るまでに、正累帯と逆累帯を繰り返す波状累帯型、(3) ひとつの斑晶中に複数の高An領域が島状に存在し、その間を低An斜長石が埋めるように晶出した合体型、の3型である。正累帯型は大黒溶岩の下部から上部まで普遍的に存在し、波状塁帯型は主に大黒溶岩とその上位層の前郷溶岩との境界部で採取した試料で観察された。合体型は大黒溶岩上部の発泡が著しい転石から採取した試料で観察された。
以上の結果から荷葉岳火山の灰長石巨晶の成因と生成環境を考察する.まず波状塁帯型構造を持つ灰長石巨晶が存在することから、比較的分化したマグマだまり中に未分化なマグマが複数回注入されるようなマグマ混合が灰長石巨晶の成長に寄与したことが推察される。さらに、合体型においては、高An部分と低An部分の境界が比較的不明瞭であり,偏光顕微鏡観察で双晶でない部分で消光角度が一致していないことから,灰長石巨晶がマグマ混合によって,比較的大きな近くの斑晶を石基が取り込み合一(coalescence)を起こし巨晶へ成長したものであると考えられる.溶岩上部と下部で結晶の径や岩相が異なるにもかかわらず、XRF 分析の結果が近い値を示していることから大黒溶岩の噴出前のマグマだまりでは,マグマ混合がよく進んでいたと考えられる。分化が進んだマグマと未分化なマグマの混合が起きた際に,高Anなコア部分を取り囲むようにリム部分が晶出したと考察した.
研究試料は荷葉岳の南側に分布する大黒溶岩の下部および上部から採取された玄武岩質火山岩である。大黒溶岩に含まれる灰長石斑晶の特徴として,溶岩上部の著しく発泡した部分に粗粒な灰長石巨晶が多く含まれ、下部の緻密な部分には比較的粒径の小さな灰長石巨晶が多く含まれることが分かった.しかし、蛍光X線分析による全岩化学組成に基づくと、大黒溶岩の上部と下部はいずれも玄武岩に分類され、大きな化学組成の変化は見られなかった.偏光顕微鏡観察により、斑晶鉱物は普通輝石と灰長石,石基は自形斜長石であることがわかった.SEM-EDS を用いた観察により,灰長石斑晶には低An #(50%程度)な部分と高 An#(83%-86%)な部分があり、以下のような産状を示すことが明らかになった。 (1) 中心部が高An#で縁辺部は石基斜長石と近い An#を示す正累帯型、(2) 高An#の中心部から低An#の縁辺部に至るまでに、正累帯と逆累帯を繰り返す波状累帯型、(3) ひとつの斑晶中に複数の高An領域が島状に存在し、その間を低An斜長石が埋めるように晶出した合体型、の3型である。正累帯型は大黒溶岩の下部から上部まで普遍的に存在し、波状塁帯型は主に大黒溶岩とその上位層の前郷溶岩との境界部で採取した試料で観察された。合体型は大黒溶岩上部の発泡が著しい転石から採取した試料で観察された。
以上の結果から荷葉岳火山の灰長石巨晶の成因と生成環境を考察する.まず波状塁帯型構造を持つ灰長石巨晶が存在することから、比較的分化したマグマだまり中に未分化なマグマが複数回注入されるようなマグマ混合が灰長石巨晶の成長に寄与したことが推察される。さらに、合体型においては、高An部分と低An部分の境界が比較的不明瞭であり,偏光顕微鏡観察で双晶でない部分で消光角度が一致していないことから,灰長石巨晶がマグマ混合によって,比較的大きな近くの斑晶を石基が取り込み合一(coalescence)を起こし巨晶へ成長したものであると考えられる.溶岩上部と下部で結晶の径や岩相が異なるにもかかわらず、XRF 分析の結果が近い値を示していることから大黒溶岩の噴出前のマグマだまりでは,マグマ混合がよく進んでいたと考えられる。分化が進んだマグマと未分化なマグマの混合が起きた際に,高Anなコア部分を取り囲むようにリム部分が晶出したと考察した.