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[SCG47-P05] 低温アルカリ熱水によるジルコンの溶解実験: 蛇紋岩化反応に伴う物質移動の理解へ向けて
キーワード:ジルコン、蛇紋岩、熱水
ジルコンは閉鎖温度が高く摩滅に強いことから、ウラン鉛年代測定をはじめ様々な同位体や微量成分分析を通じて地質記録の解読に用いられている。しかし、実際には高度変成作用や熱水変質によって初生的な情報を失い変成ジルコンとして再結晶、あるいは晶出することがしばしばある。なかでも、蛇紋岩化反応に伴って約300℃程度で晶出する熱水ジルコンの存在は極めて特異であるが、ロディン岩や緑泥石岩など蛇紋岩に伴う変質岩のなかにしばしば見られる。本研究は、蛇紋岩化反応を模擬するために、300 °C 50MPaでのジルコンとCa(OH)2 およびCaCl2溶液との反応実験を行った。先行研究では、450 °C; 200 MPa~1000 °C; 2000 MPaといった高温高圧変成作用の影響を調べる目的でジルコンとNaOHまたはCa(OH)2溶液との反応実験が行われているが、低温でのCaに富むアルカリ性溶液という蛇紋岩化に特徴的な環境での反応は検討されていない。実験に用いたジルコンはMalawiのペグマタイトから産出する大きさ3cm程度の巨晶で、粉砕の後、300μm程度に調粒した。金チューブ容器(~0.3cc)にジルコン数粒と溶液を封入し、100日間、加熱加圧した。開封後、水洗により回収したジルコンをエポキシ樹脂にマウントしてSEM-EDSで観察した。Ca(OH)2溶液を用いた実験では、ジルコンの周囲に厚さ~5μm程度の反応縁が生じたが、CaCl2溶液を用いた場合には反応縁は見られなかった。反応縁からはCa, Zr, および少量のSiが検出された。一方で、Ca(OH)2とCaCl2を等重量混合した溶液との反応実験では、厚さ50μmに達する多孔質の反応縁が生じ、Ca, Zrが検出される一方でSiはほとんど検出されなかった。これらの結果は、蛇紋岩化反応のような低温でのジルコンの溶解には強アルカリ性と塩素の存在が重要であることを示唆する。今後は反応物の相同定や微量元素組成の変化を測定する予定である。