11:00 〜 13:00
[SCG47-P06] 愛媛県伯方島に産する深成岩類の岩石学的研究
キーワード:伯方島、深成岩、花崗岩
白亜紀後期のユーラシア大陸東縁では大規模火成活動がおこり,西日本内帯の領家帯と山陽帯を構成する花崗岩類を形成した.愛媛県伯方島は,領家帯と山陽帯の漸移域に位置し,多様な岩相を示す花崗岩類が分布することから,白亜紀における大規模火成活動時の地殻深部プロセスの検討に適した研究地域である.当地域について,越智(1991),桃井ほか(1991),松浦ほか(2002)などの先行研究では,それぞれ岩相区分や岩石記載といった記載岩石学的研究がなされてきた.しかし,マグマ過程の考察に必要な全岩・鉱物化学組成データの報告はまだなされていない.そこで本研究では,伯方島の花崗岩類を形成した地殻深部プロセスの解明に向けた基礎研究として,野外調査,岩石記載,全岩化学組成分析,鉱物化学組成分析を行い,当地域の花崗岩類及び関連する地殻深部岩石の岩石学的特徴を明らかにするとともに,その成因関係を検討した.
野外産状,構成鉱物及びモード組成から,当地域の深成岩類は黒雲母花崗岩,黒雲母花崗閃緑岩,角閃石黒雲母トーナル岩,角閃石閃長岩,苦鉄質岩脈,花崗斑岩脈の6岩相に区分できる.黒雲母花崗岩および黒雲母花崗閃緑岩中には苦鉄質包有物が多数みられ,鏡下ではいずれもカリ長石にポイキリティック組織がみられる.また角閃石黒雲母トーナル岩では,付近に優白質な岩相と優黒質な岩相が混在する不均質岩相がみられ,鏡下では斜長石の汚濁帯やポイキリティック組織がみられる.一方,角閃石閃長岩には,周囲の黒雲母花崗岩との漸移的な岩相変化がみられ,鏡下では角閃石の粒状集合組織がみられる.
全岩化学組成については,深成岩類全体のSiO₂含有量が52〜80 wt%と組成範囲が広く,ハーカー図上で単一の組成トレンドを形成しない.特に角閃石閃長岩はNa₂O含有量が6.1~6.5 wt%と他の岩相(4.2 wt % 以下)に比べ著しく高い.また,黒雲母花崗閃緑岩中の苦鉄質包有物については,花崗岩分類図でトーナル岩の組成を示す.一方,黒雲母花崗岩については,固有の組成トレンドを形成する.鉱物化学組成については,角閃石黒雲母トーナル岩中の汚濁帯をもつ斜長石のAn成分が,汚濁帯付近で急激に増加する特徴がみられる.
当地域の黒雲母花崗岩,角閃石黒雲母トーナル岩には,不均質岩相や苦鉄質包有物など,花崗岩質マグマとトーナル岩質マグマの共存及び混合を示唆する産状が多数みられる.また,An成分に富む汚濁帯をもつ斜長石は,より高温のマグマとの接触を示唆している(例えば, 池田ほか, 2019).さらに,トーナル岩の組成を示す黒雲母花崗閃緑岩中の苦鉄質包有物は,黒雲母花崗閃緑岩の形成過程におけるトーナル岩質マグマの関与を示唆する.そして,黒雲母花崗閃緑岩とその苦鉄質包有物が,黒雲母花崗岩と角閃石黒雲母トーナル岩との中間的な組成を示すことから,黒雲母花崗閃緑岩とその苦鉄質包有物が,上述した2つのマグマの混合により形成されたことを示唆する.このような野外産状と岩石記載の特徴から,当地域の花崗岩類について,黒雲母花崗岩マグマと角閃石黒雲母トーナル岩マグマとの混合による黒雲母花崗閃緑岩マグマの形成,という成因関係が考えられる.
一方,黒雲母花崗岩にみられる主要元素の組成トレンドについては,マスバランス計算から黒雲母,斜長石,カリ長石,燐灰石の分別により説明でき,黒雲母花崗岩のマグマ過程として結晶分化作用がおきたと考えられる.そして角閃石閃長岩については,周囲の黒雲母花崗岩との漸移的な岩相変化や角閃石の粒状集合組織,Na2Oに富む特異な全岩化学組成といった特徴が交代変質作用による花崗岩質岩の変化を示唆する(村上, 1976).また,当地域の角閃石閃長岩は構成鉱物や組成的特徴から,村上(1959)に記載されたType Bの閃長岩に相当すると考えられる.以上のことから,角閃石黒雲母花崗岩の成因は黒雲母花崗岩に比較的高温でNa₂Oに富むアルカリ揮発性成分が関与した交代変質作用であると考えられる.
野外産状,構成鉱物及びモード組成から,当地域の深成岩類は黒雲母花崗岩,黒雲母花崗閃緑岩,角閃石黒雲母トーナル岩,角閃石閃長岩,苦鉄質岩脈,花崗斑岩脈の6岩相に区分できる.黒雲母花崗岩および黒雲母花崗閃緑岩中には苦鉄質包有物が多数みられ,鏡下ではいずれもカリ長石にポイキリティック組織がみられる.また角閃石黒雲母トーナル岩では,付近に優白質な岩相と優黒質な岩相が混在する不均質岩相がみられ,鏡下では斜長石の汚濁帯やポイキリティック組織がみられる.一方,角閃石閃長岩には,周囲の黒雲母花崗岩との漸移的な岩相変化がみられ,鏡下では角閃石の粒状集合組織がみられる.
全岩化学組成については,深成岩類全体のSiO₂含有量が52〜80 wt%と組成範囲が広く,ハーカー図上で単一の組成トレンドを形成しない.特に角閃石閃長岩はNa₂O含有量が6.1~6.5 wt%と他の岩相(4.2 wt % 以下)に比べ著しく高い.また,黒雲母花崗閃緑岩中の苦鉄質包有物については,花崗岩分類図でトーナル岩の組成を示す.一方,黒雲母花崗岩については,固有の組成トレンドを形成する.鉱物化学組成については,角閃石黒雲母トーナル岩中の汚濁帯をもつ斜長石のAn成分が,汚濁帯付近で急激に増加する特徴がみられる.
当地域の黒雲母花崗岩,角閃石黒雲母トーナル岩には,不均質岩相や苦鉄質包有物など,花崗岩質マグマとトーナル岩質マグマの共存及び混合を示唆する産状が多数みられる.また,An成分に富む汚濁帯をもつ斜長石は,より高温のマグマとの接触を示唆している(例えば, 池田ほか, 2019).さらに,トーナル岩の組成を示す黒雲母花崗閃緑岩中の苦鉄質包有物は,黒雲母花崗閃緑岩の形成過程におけるトーナル岩質マグマの関与を示唆する.そして,黒雲母花崗閃緑岩とその苦鉄質包有物が,黒雲母花崗岩と角閃石黒雲母トーナル岩との中間的な組成を示すことから,黒雲母花崗閃緑岩とその苦鉄質包有物が,上述した2つのマグマの混合により形成されたことを示唆する.このような野外産状と岩石記載の特徴から,当地域の花崗岩類について,黒雲母花崗岩マグマと角閃石黒雲母トーナル岩マグマとの混合による黒雲母花崗閃緑岩マグマの形成,という成因関係が考えられる.
一方,黒雲母花崗岩にみられる主要元素の組成トレンドについては,マスバランス計算から黒雲母,斜長石,カリ長石,燐灰石の分別により説明でき,黒雲母花崗岩のマグマ過程として結晶分化作用がおきたと考えられる.そして角閃石閃長岩については,周囲の黒雲母花崗岩との漸移的な岩相変化や角閃石の粒状集合組織,Na2Oに富む特異な全岩化学組成といった特徴が交代変質作用による花崗岩質岩の変化を示唆する(村上, 1976).また,当地域の角閃石閃長岩は構成鉱物や組成的特徴から,村上(1959)に記載されたType Bの閃長岩に相当すると考えられる.以上のことから,角閃石黒雲母花崗岩の成因は黒雲母花崗岩に比較的高温でNa₂Oに富むアルカリ揮発性成分が関与した交代変質作用であると考えられる.