11:00 〜 13:00
[SCG47-P09] ジルコンメルト包有物の均質化実験:中新世御内花崗岩質岩体の例
キーワード:メルト包有物、花崗岩、ジルコン、固結深度
1.はじめに
メルト包有物は,マグマだまりにおいて鉱物が成長する過程で周囲のメルトが鉱物に取り込まれたもので,メルトの化学組成や含水量等の情報を保持している.一方,ジルコンは花崗岩に含まれる鉱物の中でも特に物理化学的に安定な鉱物であり,ジルコンに取り込まれたメルト包有物は変質を受けにくく,そのメルト包有物はメルトの組成情報の復元に適した研究対象であるといえる.しかしながら,深成岩中のメルト包有物は,マグマ冷却過程での結晶化によって不均質な多相包有物となっており,その組成を得るためには試料の前処理としてメルト包有物の均質化実験を行うことが有効である.そこで本研究では,花崗岩類に含まれるジルコンメルト包有物の組成情報を得るための基礎研究として,中新世御内岩体を対象にジルコンメルト包有物の均質化実験を行った.さらに均質化したメルト包有物の組成と御内岩体の全岩化学組成との比較を行った.
2.実験試料・実験手法
本研究では,西南日本外帯酸性岩体の一つである中新世御内岩体を対象とした.御内岩体の野外産状の特徴として,貫入母岩との境界部近傍に見られる発泡痕や,変成岩ゼノリス中に含まれる紅柱石が挙げられ,比較的圧力の低い地殻浅部に貫入した岩体であることが示唆される.御内岩体の花崗岩類は石英・斜長石・カリ長石・黒雲母から構成され,ジルコン・燐灰石・電気石を副成分鉱物として含む.偏光顕微鏡観察からジルコンは主成分鉱物の粒間に認められた.黒雲母花崗岩試料からジルコンを抽出し,SEM-EDSにより観察したところ,微細な石英・長石類からなる不定形の多相包有物が認められた.これらはジルコンに取り込まれたメルトが結晶化したものと考えられる.
分離・抽出したジルコン試料をNaClとともに白金カプセルに封入し、ピストン-シリンダー型高温高圧発生装置を用いて0.3GPaで実験を行った.まずメルト包有物を十分に均質化させるために1000℃まで加熱して1時間保持し,その後,試料の全岩化学組成から見積もったジルコン飽和温度(Watson and Harrison, 1983)の840℃で24 時間保持した.実験後の試料は室温まで急冷させたのち回収し,エポキシ樹脂でマウント後,鏡面研磨を行い,SEM-EDSおよびFE-SEMで観察・分析をおこなった.
3.結果
ジルコンのカソードルミネッセンス像観察より,ジルコンにはコア部とリム部が認められ,メルト包有物はその両者に認められた. EDS分析から,メルト包有物はSiO2,Al2O3,CaO,Na2O,K2Oを含む含水花崗岩質の組成を持ち,ジルコンを抽出した試料の全岩化学組成よりSiO2含有量が高い.ハーカー図上では,メルト包有物の組成は岩体の全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する.また,ジルコンのコア部のメルト包有物(75~80 wt% SiO2)とリム部のメルト包有物(76~79 wt% SiO2)との間に顕著な組成差は認められない.
4.考察
メルト包有物の組成は岩体の全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する.したがって,ジルコンは結晶成長時に鉱物粒間の分化したメルトを包有物として取り込んだものと考えられるが,このことは偏光顕微鏡観察からジルコンが主成分鉱物粒間にみとめられることと調和的である.また圧力検討のために,得られたメルト組成をノルムQz-Ab-Or図に投影した.その結果,メルト包有物の組成の多くはおよそ180~50 MPaの圧力範囲にプロットされる.この圧力は低圧を示唆する御内岩体の野外産状と調和的である.
メルト包有物は,マグマだまりにおいて鉱物が成長する過程で周囲のメルトが鉱物に取り込まれたもので,メルトの化学組成や含水量等の情報を保持している.一方,ジルコンは花崗岩に含まれる鉱物の中でも特に物理化学的に安定な鉱物であり,ジルコンに取り込まれたメルト包有物は変質を受けにくく,そのメルト包有物はメルトの組成情報の復元に適した研究対象であるといえる.しかしながら,深成岩中のメルト包有物は,マグマ冷却過程での結晶化によって不均質な多相包有物となっており,その組成を得るためには試料の前処理としてメルト包有物の均質化実験を行うことが有効である.そこで本研究では,花崗岩類に含まれるジルコンメルト包有物の組成情報を得るための基礎研究として,中新世御内岩体を対象にジルコンメルト包有物の均質化実験を行った.さらに均質化したメルト包有物の組成と御内岩体の全岩化学組成との比較を行った.
2.実験試料・実験手法
本研究では,西南日本外帯酸性岩体の一つである中新世御内岩体を対象とした.御内岩体の野外産状の特徴として,貫入母岩との境界部近傍に見られる発泡痕や,変成岩ゼノリス中に含まれる紅柱石が挙げられ,比較的圧力の低い地殻浅部に貫入した岩体であることが示唆される.御内岩体の花崗岩類は石英・斜長石・カリ長石・黒雲母から構成され,ジルコン・燐灰石・電気石を副成分鉱物として含む.偏光顕微鏡観察からジルコンは主成分鉱物の粒間に認められた.黒雲母花崗岩試料からジルコンを抽出し,SEM-EDSにより観察したところ,微細な石英・長石類からなる不定形の多相包有物が認められた.これらはジルコンに取り込まれたメルトが結晶化したものと考えられる.
分離・抽出したジルコン試料をNaClとともに白金カプセルに封入し、ピストン-シリンダー型高温高圧発生装置を用いて0.3GPaで実験を行った.まずメルト包有物を十分に均質化させるために1000℃まで加熱して1時間保持し,その後,試料の全岩化学組成から見積もったジルコン飽和温度(Watson and Harrison, 1983)の840℃で24 時間保持した.実験後の試料は室温まで急冷させたのち回収し,エポキシ樹脂でマウント後,鏡面研磨を行い,SEM-EDSおよびFE-SEMで観察・分析をおこなった.
3.結果
ジルコンのカソードルミネッセンス像観察より,ジルコンにはコア部とリム部が認められ,メルト包有物はその両者に認められた. EDS分析から,メルト包有物はSiO2,Al2O3,CaO,Na2O,K2Oを含む含水花崗岩質の組成を持ち,ジルコンを抽出した試料の全岩化学組成よりSiO2含有量が高い.ハーカー図上では,メルト包有物の組成は岩体の全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する.また,ジルコンのコア部のメルト包有物(75~80 wt% SiO2)とリム部のメルト包有物(76~79 wt% SiO2)との間に顕著な組成差は認められない.
4.考察
メルト包有物の組成は岩体の全岩化学組成トレンドのSiO2含有量の高いところに位置する.したがって,ジルコンは結晶成長時に鉱物粒間の分化したメルトを包有物として取り込んだものと考えられるが,このことは偏光顕微鏡観察からジルコンが主成分鉱物粒間にみとめられることと調和的である.また圧力検討のために,得られたメルト組成をノルムQz-Ab-Or図に投影した.その結果,メルト包有物の組成の多くはおよそ180~50 MPaの圧力範囲にプロットされる.この圧力は低圧を示唆する御内岩体の野外産状と調和的である.