11:00 〜 13:00
[SCG47-P11] 高知県佐川町鳥巣石灰岩の自生石英中の炭化水素流体包有物
キーワード:流体包有物、石油入り水晶、鳥巣石灰岩、紫外線励起蛍光観察、マイクロサーモメトリー、顕微ラマン分光測定
地殻浅部の炭化水素は、続成作用の過程で生物源有機物から主に生成されるとされ、特に石灰岩中のものは、石油などの起源物質として重視されている。石灰岩は続成作用の過程で、方解石や石英を自生鉱物として析出することがあり、周囲の流体を流体包有物として捕獲することも知られている。そこで、本研究では、研究例の少ない島弧・大陸縁辺部の石灰岩中の炭化水素流体の化学的特徴を検討するため、高知県の石灰岩の自生石英中の炭化水素流体包有物について紫外線励起観察、均質化温度の測定、顕微ラマン分光測定を行った。
試料には、高知県の鳥巣石灰岩中の自生石英と、石灰岩に随伴する砂質岩の裂罅に自生する石英の両面研磨片を用いた。石灰岩中の自生石英は、大きさ数mmの両錐自形結晶で、石灰岩中の晶洞に方解石・黄鉄鉱の自形結晶や瀝青質炭質物の微粒と共生していた。内部には多量の流体包有物と少量の瀝青質炭質物・方解石結晶の固相包有物を含んでいた。砂質岩の自生石英も、大きさ数mmの両錐自形結晶で、多量の流体包有物と微量の方解石固相包有物を含んでいた。
両方の自生石英中の流体包有物は、多量の液相包有物と少量の気相包有物の2種類で、液相包有物は、炭化水素流体の液相+気泡±微小量の瀝青質析出物からなっていた。液相部分は、紫外線照射で9割近くの液相包有物が芳香族化合物に特有の青色蛍光を示し、少量が緑色や黄色の蛍光を、無蛍光の包有物も稀にあった。初生包有物も多く認められた。液相部分に液体の水はなく、水主体の流体包有物も認められなかった。液相包有物の均質化温度は、石灰岩中の石英試料で45~49℃(最頻値)、砂質岩中の石英試料で35~39℃(最頻値)であり、後者の包有物は常温で沸騰状態にあった。石灰岩中の石英試料の液相包有物を顕微ラマン分光法で測定すると、石灰岩中の瀝青質炭質物に含まれる多環芳香族化合物に特徴的な1350cm-1と1600cm-1付近のピークが認められ、芳香族化合物を多量に含むことが確認された。H2OとCO2に由来するピークは確認されなかった。
今回の紫外線励起蛍光と顕微ラマン分光測定の結果から、石灰岩中の炭化水素流体は、数個のベンゼン環が結合した多環芳香族化合物を多量に含むことが分かった。炭化水素流体包有物の均質化温度は炭化水素の分解程度(熟成度)と密接で、今回の低い温度も、分解が進み、簡単な構造となった多環芳香族化合物の存在と調和的であった。石灰岩と砂質岩の流体包有物では、均質化温度の違いから、分解程度が異なる炭化水素流体の存在が示され、石灰岩から砂質岩への流体移動の過程で、炭化水素の分解が進む可能性が示唆された。また、今回の初生液相包有物は炭化水素流体のみ含むことから、鳥巣石灰岩中の自生石英は炭化水素流体から析出したことが示唆された。
試料には、高知県の鳥巣石灰岩中の自生石英と、石灰岩に随伴する砂質岩の裂罅に自生する石英の両面研磨片を用いた。石灰岩中の自生石英は、大きさ数mmの両錐自形結晶で、石灰岩中の晶洞に方解石・黄鉄鉱の自形結晶や瀝青質炭質物の微粒と共生していた。内部には多量の流体包有物と少量の瀝青質炭質物・方解石結晶の固相包有物を含んでいた。砂質岩の自生石英も、大きさ数mmの両錐自形結晶で、多量の流体包有物と微量の方解石固相包有物を含んでいた。
両方の自生石英中の流体包有物は、多量の液相包有物と少量の気相包有物の2種類で、液相包有物は、炭化水素流体の液相+気泡±微小量の瀝青質析出物からなっていた。液相部分は、紫外線照射で9割近くの液相包有物が芳香族化合物に特有の青色蛍光を示し、少量が緑色や黄色の蛍光を、無蛍光の包有物も稀にあった。初生包有物も多く認められた。液相部分に液体の水はなく、水主体の流体包有物も認められなかった。液相包有物の均質化温度は、石灰岩中の石英試料で45~49℃(最頻値)、砂質岩中の石英試料で35~39℃(最頻値)であり、後者の包有物は常温で沸騰状態にあった。石灰岩中の石英試料の液相包有物を顕微ラマン分光法で測定すると、石灰岩中の瀝青質炭質物に含まれる多環芳香族化合物に特徴的な1350cm-1と1600cm-1付近のピークが認められ、芳香族化合物を多量に含むことが確認された。H2OとCO2に由来するピークは確認されなかった。
今回の紫外線励起蛍光と顕微ラマン分光測定の結果から、石灰岩中の炭化水素流体は、数個のベンゼン環が結合した多環芳香族化合物を多量に含むことが分かった。炭化水素流体包有物の均質化温度は炭化水素の分解程度(熟成度)と密接で、今回の低い温度も、分解が進み、簡単な構造となった多環芳香族化合物の存在と調和的であった。石灰岩と砂質岩の流体包有物では、均質化温度の違いから、分解程度が異なる炭化水素流体の存在が示され、石灰岩から砂質岩への流体移動の過程で、炭化水素の分解が進む可能性が示唆された。また、今回の初生液相包有物は炭化水素流体のみ含むことから、鳥巣石灰岩中の自生石英は炭化水素流体から析出したことが示唆された。