11:00 〜 13:00
[SCG47-P13] 新潟県新発田市赤谷鉱床のスカルン化及び鉄鉱化作用
キーワード:鉄スカルン鉱床、磁鉄鉱化赤鉄鉱、赤鉄鉱化磁鉄鉱、柘榴石
赤谷鉱床は新潟県新発田市の飯豊山地南西側に位置し, 主に赤鉄鉱鉱石を採掘していた鉱床である. 本鉱床は, 赤鉄鉱を主とする世界でも非常に稀な鉄スカルン鉱床であり, なぜ赤鉄鉱が形成したのかが未解決の問題である. 本研究は, 赤鉄鉱及び磁鉄鉱とスカルン鉱物の関係性に基づき, 本鉱床におけるスカルン化及び鉄鉱化作用の解明を目的としている.
本研究では, 関係火成岩に近いproximal skarnと離れた場所に形成するdistal skarn の累帯配列図を作成し, 詳細なスカルンの産状を記載した. また, 鉄鉱化作用をもたらした熱水の特徴を得るために, 柘榴石等のスカルン鉱物と赤鉄鉱及び磁鉄鉱の肉眼及び顕微鏡観察による記載や, 粉末X線回折装置による鉱物同定, 蛍光X線分析装置による火成岩の全岩化学組成の分析, 電子線マイクロアナライザーによる柘榴石のマッピング分析及び定量分析, LA-ICP-MSによる柘榴石のU–Pb年代測定を行った.
鉱床母岩は前期ジュラ系の足尾帯の結晶質石灰岩 (一部苦灰岩) やチャート, 泥質変成岩からなり, 後期白亜紀の二王子岳花崗岩や前期中新世のドレライトが母岩に貫入されている. さらに, 前期中新世の流紋岩がこれらを被覆または貫入している. 主な赤鉄鉱鉱床は二王子岳花崗岩に伴うproximal skarn及びdistal skarnに胚胎し, 前期中新世の流紋岩にも鉱体は伴われる.
観察された赤鉄鉱鉱体の産状から, 本鉱床には二王子岳花崗岩やドレライト, 流紋岩の貫入に伴う3期の形成時期があり, それぞれ磁鉄鉱の赤鉄鉱化 (martitization) や赤鉄鉱の磁鉄鉱化 (hypogene secondary magnetite), 磁鉄鉱を含まずに黄鉄鉱を伴う赤鉄鉱鉱体を形成している.
粉末X線回折分析によって, distal skarnでは灰鉄輝石に富み透輝石に乏しく, proximal skarnでは大部分が角閃石化していたため, 単斜輝石はみられなかったほか, distal skarn及びproximal skarnではアクチノ閃石及び透閃石の両方富むことが認められた. 蛍光X線分析による花崗岩の全岩化学組成の分析結果は, アルミナ飽和度 (ASI) =1.01~1.38とパーアルミナスな組成を示し, チタン鉄鉱系列花崗岩の帯磁率を示した. 電子線マイクロアナライザーによる柘榴石のマッピング分析及び定量分析結果は, 灰鉄柘榴石 (Ca2+3Fe3+2(SiO4)3) 成分が80.39~100 wt. %, 灰礬柘榴石 (Ca2+3Al3+2(SiO4)3) 成分が0~19.61 wt. %, 満礬柘榴石 (Mn2+3Al3+2(SiO4)3) 成分が0~6.48 wt. % であった. 全体的にコア部は灰鉄柘榴石成分が大半を占め, リム部は灰礬柘榴石成分を微量に含むほか, 磁鉄鉱に富むスカルン中の柘榴石のリム部は満礬柘榴石成分を極微量に含む. 以上より, 柘榴石の形成初期はFe3+に富む熱水, 末期はAl3+を含む熱水, 一部のスカルン地帯では末期にMn2+を含む熱水であることから, スカルンを形成した熱水の組成に大きな多様性があり, 時間とともに酸化還元が変化することが認められた.
また, LA-ICP-MSによる柘榴石のU–Pb年代測定から, 本鉱床の柘榴石のU濃度が非常に低く (< 1 ppm), 有意な年代値を得ることができなかった. このことは, 本鉱床を形成した熱水中に6価のUが4価よりも優勢に存在していた可能性を示唆し, 柘榴石と赤鉄鉱との共生は, 非常に酸化的な環境で柘榴石が形成したことを示す.
赤谷鉱床は複数の鉱化作用による酸化還元反応によって, 赤鉄鉱に富む鉱床が形成したと結論付けられる. 先行研究で提案された各説 (初生熱水から赤鉄鉱が生成, または流紋岩の貫入に伴って赤鉄鉱が生成, または磁鉄鉱の生成後二次的に赤鉄鉱が生成) だけでなく, これら全ての現象および赤鉄鉱の生成後二次的に磁鉄鉱が生成したことも明らかになった.
本研究では, 関係火成岩に近いproximal skarnと離れた場所に形成するdistal skarn の累帯配列図を作成し, 詳細なスカルンの産状を記載した. また, 鉄鉱化作用をもたらした熱水の特徴を得るために, 柘榴石等のスカルン鉱物と赤鉄鉱及び磁鉄鉱の肉眼及び顕微鏡観察による記載や, 粉末X線回折装置による鉱物同定, 蛍光X線分析装置による火成岩の全岩化学組成の分析, 電子線マイクロアナライザーによる柘榴石のマッピング分析及び定量分析, LA-ICP-MSによる柘榴石のU–Pb年代測定を行った.
鉱床母岩は前期ジュラ系の足尾帯の結晶質石灰岩 (一部苦灰岩) やチャート, 泥質変成岩からなり, 後期白亜紀の二王子岳花崗岩や前期中新世のドレライトが母岩に貫入されている. さらに, 前期中新世の流紋岩がこれらを被覆または貫入している. 主な赤鉄鉱鉱床は二王子岳花崗岩に伴うproximal skarn及びdistal skarnに胚胎し, 前期中新世の流紋岩にも鉱体は伴われる.
観察された赤鉄鉱鉱体の産状から, 本鉱床には二王子岳花崗岩やドレライト, 流紋岩の貫入に伴う3期の形成時期があり, それぞれ磁鉄鉱の赤鉄鉱化 (martitization) や赤鉄鉱の磁鉄鉱化 (hypogene secondary magnetite), 磁鉄鉱を含まずに黄鉄鉱を伴う赤鉄鉱鉱体を形成している.
粉末X線回折分析によって, distal skarnでは灰鉄輝石に富み透輝石に乏しく, proximal skarnでは大部分が角閃石化していたため, 単斜輝石はみられなかったほか, distal skarn及びproximal skarnではアクチノ閃石及び透閃石の両方富むことが認められた. 蛍光X線分析による花崗岩の全岩化学組成の分析結果は, アルミナ飽和度 (ASI) =1.01~1.38とパーアルミナスな組成を示し, チタン鉄鉱系列花崗岩の帯磁率を示した. 電子線マイクロアナライザーによる柘榴石のマッピング分析及び定量分析結果は, 灰鉄柘榴石 (Ca2+3Fe3+2(SiO4)3) 成分が80.39~100 wt. %, 灰礬柘榴石 (Ca2+3Al3+2(SiO4)3) 成分が0~19.61 wt. %, 満礬柘榴石 (Mn2+3Al3+2(SiO4)3) 成分が0~6.48 wt. % であった. 全体的にコア部は灰鉄柘榴石成分が大半を占め, リム部は灰礬柘榴石成分を微量に含むほか, 磁鉄鉱に富むスカルン中の柘榴石のリム部は満礬柘榴石成分を極微量に含む. 以上より, 柘榴石の形成初期はFe3+に富む熱水, 末期はAl3+を含む熱水, 一部のスカルン地帯では末期にMn2+を含む熱水であることから, スカルンを形成した熱水の組成に大きな多様性があり, 時間とともに酸化還元が変化することが認められた.
また, LA-ICP-MSによる柘榴石のU–Pb年代測定から, 本鉱床の柘榴石のU濃度が非常に低く (< 1 ppm), 有意な年代値を得ることができなかった. このことは, 本鉱床を形成した熱水中に6価のUが4価よりも優勢に存在していた可能性を示唆し, 柘榴石と赤鉄鉱との共生は, 非常に酸化的な環境で柘榴石が形成したことを示す.
赤谷鉱床は複数の鉱化作用による酸化還元反応によって, 赤鉄鉱に富む鉱床が形成したと結論付けられる. 先行研究で提案された各説 (初生熱水から赤鉄鉱が生成, または流紋岩の貫入に伴って赤鉄鉱が生成, または磁鉄鉱の生成後二次的に赤鉄鉱が生成) だけでなく, これら全ての現象および赤鉄鉱の生成後二次的に磁鉄鉱が生成したことも明らかになった.