日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 岩石・鉱物・資源

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (29) (Ch.29)

コンビーナ:野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)、コンビーナ:西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、コンビーナ:纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、座長:野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)

11:00 〜 13:00

[SCG47-P15] 長野県白骨温泉に産する色の変化する石灰華

立岩 実久1、*江島 輝美1、大塚 勉2、西村 直之3 (1.信州大学理学部、2.信州大学全学教育機構、3.信州大学先鋭領域融合研究群)

キーワード:石灰華、白骨温泉、透過型電子顕微鏡

松本市安曇白骨温泉湧出地点周辺には,温泉から析出した白色から淡黄色の石灰華が分布している。この石灰華は,採取後時間経過とともに,表面が紫色等に変化する。採取後に石灰華の表面が紫色や水色に変色する現象は,過去に報告されたことがなく,石灰華の表面が変色する要因は分かっていない。
本研究では,変色する石灰華の形成環境と採取後の変質する要因の解明のため,試料採取後に試料を真空装置、室内に分けて経過観察を行った。また,白色から紫色に変色する石灰華の変色物質の特定および変色した要因を解明するため,石灰華表面の実体顕微鏡観察,電子顕微鏡像観察,組成分析および粉末X線回折装置による相同定を行った。
試料採取後の経過観察の結果,真空状態に保存した試料では色の変化が観察されなかったが,室内に保存した試料では変色が確認された。
石灰華表面の変色部は,濃紫色,紫色,水色,赤紫色を呈し,紫色が最も多く,各色の境界は不明瞭で漸移的である。石灰華表面の変色部には,短径数µmの繊維状の外形で、中心が空洞のチューブ状の物質が観察される。繊維状の物質の構成元素は、N, Na, Mg, Al, Si, P, S, K, Ca, Clである。また,繊維状の変色物質のいずれにも,微量の遷移金属元素が含まれる。紫および赤紫色ではMnおよびFe,濃紫色部分ではFeのみ,水色部分ではFe,MnおよびTiが検出された。赤紫色部分では紫色部分よりもFeの強度が低い。粉末X線構造解析の結果,繊維状の変色部からの回折線は確認されなかったが,透過型電子顕微鏡観察では数nmの微細な粒子の存在が確認された。産状と構成元素から,繊維状の変色部は石灰華表面における微生物の活動により形成された物質であると考えられる。本研究結果より、変色の要因は、FeやMnなどの遷移金属元素が繊維状物質に取り込まれ、ナノ粒子として析出し,空気中で酸化したためであると考察される。