11:00 〜 13:00
[SCG47-P18] 浅熱水性Au-Ag鉱化作用とCu-Pb-Zn鉱化作用の違いをもたらした要因: 北海道北見地域を例として
キーワード:金銀鉱化作用、銅鉛亜鉛鉱化作用、流体包有物、メルト包有物、燐灰石
熱水性金属鉱床は主に沈み込みを伴う火山弧に分布しており,濃集する金属元素の違いから,Au-Agに富む鉱床,Cu-Pb-Znに富む鉱床に大別される.その金属種の選択性は,Auは硫化物錯体として,AgやCu, Pb, Znは塩化物錯体として熱水中を運搬することから,熱水の塩濃度や溶存するCl/S比に起因することが知られている.特に日本弧では,鉱脈型鉱床と火成岩の分布は重複しており,熱水の組成差は,鉱床形成に関連したマグマの組成差に起因する可能性がある.金属種の選択性と鉱床を形成したマグマの組成の関連性を実証するため,北海道北見地域に位置する北見Cu-Pb-Zn鉱床および北ノ王Au-Ag鉱床を調査地域に選定し,鉱石試料を用いて記載及び流体包有物マイクロサーモメトリーを行い,形成温度および塩濃度を求めた.また,鉱化年代と類似する形成年代が報告されている鉱床近辺の火成岩試料を用いて,XRFによるメルトの主成分化学組成分析,および石英や単斜輝石斑晶,チタン鉄鉱に捕獲されたメルト包有物や燐灰石を測定対象とした化学分析結果から,メルトの揮発成分組成の推定を行った.
石英や閃亜鉛鉱に捕獲される流体包有物は,北見鉱床では,約207-286°C, 北ノ王鉱床では約155-285°Cの温度範囲が得られ,NaCl相当塩濃度は北見鉱床では4.2-5.1 wt.%, 北ノ王鉱床では1.8-1.9 wt.%の組成範囲が得られた.両鉱床を形成した熱水の塩濃度は有意な差を示した.
XRFによる全岩化学組成の測定結果によると,両鉱床形成に関連したとされる火成岩は, 北見鉱床においてデイサイト質のメルト組成(66.1 wt.% SiO2),北ノ王鉱床において流紋岩質のメルト組成(73.9 wt.% SiO2)であり,メルトの主成分化学組成において有意な差を示した.
メルト包有物および燐灰石のClおよびS濃度を測定した結果,捕獲当時のメルト組成に近いとされる母斑晶毎の代表値は,北見ではCl = 0.029 wt.%; S = 0.018 wt.% (単斜輝石), Cl = 0.029 wt.%; S = < 0.007 wt.% (チタン鉄鉱), 北ノ王ではCl = 0.12-0.22 wt.%; S = 0.011-0.073 wt.% (石英), Cl = 0.16-0.18 wt.%; S = < 0.013 wt.% (チタン鉄鉱)である.燐灰石は,北見では Cl = 0.57-0.91 wt.%; S = < 0.018 wt.%, 北ノ王では Cl = 0.38-0.42 wt.%; S = < 0.018 wt.%であり,燐灰石とメルト間のCl, Sの分配係数を用いて, メルトのClおよびS濃度を算出すると,北見において,Cl = > 0.42 wt.%; S = 1-11 ppm, 北ノ王において, Cl = > 0.43 wt.%; S = < 3 ppmであった.
流体包有物の結果から,両鉱床を形成した鉱化流体は異なる塩濃度を有しており,Cu-Pb-Zn鉱床の形成にはClのより強い関与が示されたと共に,Cu, Pb, Znは塩化物錯体として流体中を運搬されたことが示唆された.
見積もられたメルトのClおよびS濃度から, 縦軸をCl/S比, 横軸をMgO含有量や燐灰石温度計,MELTSによるシミュレーションによって得られた鉱物晶出順序によるメルト組成の進化過程とした図にプロットした結果,北見デイサイト質メルトの燐灰石や北ノ王流紋岩質メルトの石英晶出時のメルトが,そのCl/S比を保持したまま,ClおよびSが流体相として分離した場合,実験的に示された既報によるCu-Pb-Zn鉱床やAu-Ag鉱床を形成しうる十分なCl/S比を持つ鉱化流体となることが示唆された.しかしながら,北ノ王火成岩の燐灰石晶出時のメルトのCl/S比は金銀鉱床形成には過大な値となった.
そこで,流体包有物の実験により得られた塩濃度および,燐灰石晶出時のメルト中の塩素濃度を用いて,流体とメルト間の半実測的な塩素分配係数を算出した.その結果,見積もられる分配係数の最小値は,北見で3.64-7.20, 北ノ王で1.35-2.68であり,流体放出時の最大圧力は北見において145-200 MPa, 北ノ王において64-95 MPaの値が得られ,メルトの流体放出深度が異なる可能性が示唆された.
金属種の選択性は熱水の塩濃度に加え,流体放出時のメルトのCl/S比,鉱化作用に関連したメルトのSiO2濃度および圧力依存性のあるClの流体とメルト間の分配係数の値の違いが起因した可能性がある.
石英や閃亜鉛鉱に捕獲される流体包有物は,北見鉱床では,約207-286°C, 北ノ王鉱床では約155-285°Cの温度範囲が得られ,NaCl相当塩濃度は北見鉱床では4.2-5.1 wt.%, 北ノ王鉱床では1.8-1.9 wt.%の組成範囲が得られた.両鉱床を形成した熱水の塩濃度は有意な差を示した.
XRFによる全岩化学組成の測定結果によると,両鉱床形成に関連したとされる火成岩は, 北見鉱床においてデイサイト質のメルト組成(66.1 wt.% SiO2),北ノ王鉱床において流紋岩質のメルト組成(73.9 wt.% SiO2)であり,メルトの主成分化学組成において有意な差を示した.
メルト包有物および燐灰石のClおよびS濃度を測定した結果,捕獲当時のメルト組成に近いとされる母斑晶毎の代表値は,北見ではCl = 0.029 wt.%; S = 0.018 wt.% (単斜輝石), Cl = 0.029 wt.%; S = < 0.007 wt.% (チタン鉄鉱), 北ノ王ではCl = 0.12-0.22 wt.%; S = 0.011-0.073 wt.% (石英), Cl = 0.16-0.18 wt.%; S = < 0.013 wt.% (チタン鉄鉱)である.燐灰石は,北見では Cl = 0.57-0.91 wt.%; S = < 0.018 wt.%, 北ノ王では Cl = 0.38-0.42 wt.%; S = < 0.018 wt.%であり,燐灰石とメルト間のCl, Sの分配係数を用いて, メルトのClおよびS濃度を算出すると,北見において,Cl = > 0.42 wt.%; S = 1-11 ppm, 北ノ王において, Cl = > 0.43 wt.%; S = < 3 ppmであった.
流体包有物の結果から,両鉱床を形成した鉱化流体は異なる塩濃度を有しており,Cu-Pb-Zn鉱床の形成にはClのより強い関与が示されたと共に,Cu, Pb, Znは塩化物錯体として流体中を運搬されたことが示唆された.
見積もられたメルトのClおよびS濃度から, 縦軸をCl/S比, 横軸をMgO含有量や燐灰石温度計,MELTSによるシミュレーションによって得られた鉱物晶出順序によるメルト組成の進化過程とした図にプロットした結果,北見デイサイト質メルトの燐灰石や北ノ王流紋岩質メルトの石英晶出時のメルトが,そのCl/S比を保持したまま,ClおよびSが流体相として分離した場合,実験的に示された既報によるCu-Pb-Zn鉱床やAu-Ag鉱床を形成しうる十分なCl/S比を持つ鉱化流体となることが示唆された.しかしながら,北ノ王火成岩の燐灰石晶出時のメルトのCl/S比は金銀鉱床形成には過大な値となった.
そこで,流体包有物の実験により得られた塩濃度および,燐灰石晶出時のメルト中の塩素濃度を用いて,流体とメルト間の半実測的な塩素分配係数を算出した.その結果,見積もられる分配係数の最小値は,北見で3.64-7.20, 北ノ王で1.35-2.68であり,流体放出時の最大圧力は北見において145-200 MPa, 北ノ王において64-95 MPaの値が得られ,メルトの流体放出深度が異なる可能性が示唆された.
金属種の選択性は熱水の塩濃度に加え,流体放出時のメルトのCl/S比,鉱化作用に関連したメルトのSiO2濃度および圧力依存性のあるClの流体とメルト間の分配係数の値の違いが起因した可能性がある.