11:00 〜 13:00
[SCG47-P19] 秋田県仙北市坊沢鉱床の地質及び浅熱水性低硫化型金銀鉱化作用
キーワード:浅熱水性低硫化型鉱床、前期中新世、バーミキュライト
秋田県仙北市に位置する坊沢鉱床は約20Maの珪長質火山岩類からなる桂渕層に胚胎する.坊沢鉱床の鉱化年代は桂渕層の形成年代と類似し,日本海拡大初期の珪長質火山活動に伴って坊沢鉱床が形成されたこと,日本で二番目に産金量を誇る佐渡鉱床と類似した形成年代と鉱床形態を示し,東北日本内陸部に高品位金鉱石が残されていることが明らかにされた.東北日本内陸部では海水が関与した大規模なベースメタル鉱床が多く,金銀鉱床が注目されてこなかったことや,近代的な探査が行われていないことから,金銀鉱床賦存ポテンシャルが高い地域であることを示唆している.本研究は坊沢鉱床の金銀鉱化作用が生じた地質背景,要因並びに金銀賦存ポテンシャルを明らかにすることを目的とした.
本研究では坊沢鉱床周辺における詳細な地質調査及びXRD分析によって熱水変質鉱物の同定を行い坊沢鉱床が形成された地質背景と鉱化流体の組成,廃石中の石英脈の記載から金銀沈殿メカニズムを明らかにする.
地質調査では365ヶ所で露頭の記載,258ヶ所でサンプリングを行った.桂渕層の岩相は主に,稀に炭化木片を含む軽石質火山礫凝灰岩及び凝灰角礫岩,火山豆石を含む凝灰岩と凝灰質泥岩からなる.平行岩脈群を呈する貫入岩は斑状珪長質火山岩からなり,鉱脈の走行方向と類似する.
サンプリングした全岩試料に水簸処理を施し作成した定方位試料にXRD分析を行い,熱水変質鉱物の同定を行った.その結果,変質帯はカオリナイト帯・セリサイト-カリ長石帯・緑泥石帯の3つに区分された.カオリナイト帯とセリサイト-カリ長石帯は鉱床周辺とその西部にみられ,カオリナイト帯はセリサイト-カリ長石帯に重複している.また,凝灰質泥岩を除くほぼすべての岩相(116カ所)に2θ = 6˚(d = 14-15Å)付近に最強線である(001)反射を示す,エチレングリコール処理で変化しないピークがみられた.他の熱水変質鉱物の回折ピークがみられない試料の示差熱分析を行ったところ,バーミキュライトに類似したDTA曲線が得られた.さらに,同じ試料を500˚Cで1時間加熱処理した後にXRD分析したところ,(001)ピークが2θ = 9˚(d = 10Å)付近に移動したので,本研究地域における2θ = 6°(d = 14-15Å)付近に最強線を示す粘土鉱物はバーミキュライトであると結論づけられる.
坊沢鉱床の廃石でみられる石英脈試料の薄片を顕微鏡観察で観察し,鉱物組み合わせと組織を基にステージ区分を行った.その結果,石英脈は主にカリ長石と銀黒バンドを含む累被状脈・熱水角礫岩脈・葉片状石英脈からなることが観察され,銀黒バンド中の鉱石鉱物はエレクトラムと輝銀鉱からなり,偽針状組織を呈すカリ長石と共生してみられる.
バーミキュライトは陸域環境で風化作用を被って形成される粘土鉱物であり,鉱床を中心にハロ状の分布を示さないこと,そして湖沼環境を示す凝灰質泥岩にバーミキュライトは見られないことは坊沢鉱床形成後に形成されたと考えられる.鉱床周辺にセリサイト-カリ長石帯がみられ,銀黒バンドと共生してカリ長石がみられることは,200℃以上のアルカリ-中性流体によって金銀鉱化作用は生じたと考えられる.カオリナイトは蒸気加熱変質起源であり,銀黒バンドと共生するカリ長石並びに組織から沸騰現象と対応する,このことは金銀鉱化作用が沸騰によって生じたと考えられる.また,既知の鉱床周辺以外にも坊沢鉱床西部にカオリナイト帯・セリサイト-カリ長石帯が分布しており,坊沢鉱床と類似した未発見の鉱脈が分布し沸騰現象が生じていたと考えられる.
坊沢鉱床は鉱床形成前から形成後にかけて一貫して陸域環境であったことがバーミキュライトの分布から示され,ベースメタルは一般に塩素錯体によって運搬されることから,海水の寄与がない坊沢鉱床ではベースメタルに乏しい金銀鉱床が形成された.坊沢鉱床西部は坊沢鉱床と類似した鉱化流体が流入し沸騰現象が生じていたことを示唆しているため,未発見の金銀鉱脈が賦存している可能性が高い.
本研究では坊沢鉱床周辺における詳細な地質調査及びXRD分析によって熱水変質鉱物の同定を行い坊沢鉱床が形成された地質背景と鉱化流体の組成,廃石中の石英脈の記載から金銀沈殿メカニズムを明らかにする.
地質調査では365ヶ所で露頭の記載,258ヶ所でサンプリングを行った.桂渕層の岩相は主に,稀に炭化木片を含む軽石質火山礫凝灰岩及び凝灰角礫岩,火山豆石を含む凝灰岩と凝灰質泥岩からなる.平行岩脈群を呈する貫入岩は斑状珪長質火山岩からなり,鉱脈の走行方向と類似する.
サンプリングした全岩試料に水簸処理を施し作成した定方位試料にXRD分析を行い,熱水変質鉱物の同定を行った.その結果,変質帯はカオリナイト帯・セリサイト-カリ長石帯・緑泥石帯の3つに区分された.カオリナイト帯とセリサイト-カリ長石帯は鉱床周辺とその西部にみられ,カオリナイト帯はセリサイト-カリ長石帯に重複している.また,凝灰質泥岩を除くほぼすべての岩相(116カ所)に2θ = 6˚(d = 14-15Å)付近に最強線である(001)反射を示す,エチレングリコール処理で変化しないピークがみられた.他の熱水変質鉱物の回折ピークがみられない試料の示差熱分析を行ったところ,バーミキュライトに類似したDTA曲線が得られた.さらに,同じ試料を500˚Cで1時間加熱処理した後にXRD分析したところ,(001)ピークが2θ = 9˚(d = 10Å)付近に移動したので,本研究地域における2θ = 6°(d = 14-15Å)付近に最強線を示す粘土鉱物はバーミキュライトであると結論づけられる.
坊沢鉱床の廃石でみられる石英脈試料の薄片を顕微鏡観察で観察し,鉱物組み合わせと組織を基にステージ区分を行った.その結果,石英脈は主にカリ長石と銀黒バンドを含む累被状脈・熱水角礫岩脈・葉片状石英脈からなることが観察され,銀黒バンド中の鉱石鉱物はエレクトラムと輝銀鉱からなり,偽針状組織を呈すカリ長石と共生してみられる.
バーミキュライトは陸域環境で風化作用を被って形成される粘土鉱物であり,鉱床を中心にハロ状の分布を示さないこと,そして湖沼環境を示す凝灰質泥岩にバーミキュライトは見られないことは坊沢鉱床形成後に形成されたと考えられる.鉱床周辺にセリサイト-カリ長石帯がみられ,銀黒バンドと共生してカリ長石がみられることは,200℃以上のアルカリ-中性流体によって金銀鉱化作用は生じたと考えられる.カオリナイトは蒸気加熱変質起源であり,銀黒バンドと共生するカリ長石並びに組織から沸騰現象と対応する,このことは金銀鉱化作用が沸騰によって生じたと考えられる.また,既知の鉱床周辺以外にも坊沢鉱床西部にカオリナイト帯・セリサイト-カリ長石帯が分布しており,坊沢鉱床と類似した未発見の鉱脈が分布し沸騰現象が生じていたと考えられる.
坊沢鉱床は鉱床形成前から形成後にかけて一貫して陸域環境であったことがバーミキュライトの分布から示され,ベースメタルは一般に塩素錯体によって運搬されることから,海水の寄与がない坊沢鉱床ではベースメタルに乏しい金銀鉱床が形成された.坊沢鉱床西部は坊沢鉱床と類似した鉱化流体が流入し沸騰現象が生じていたことを示唆しているため,未発見の金銀鉱脈が賦存している可能性が高い.