日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 海洋底地球科学

2022年5月27日(金) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、コンビーナ:田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:稲津 大祐(東京海洋大学)、中村 優斗(海上保安庁海洋情報部)

14:00 〜 14:15

[SCG48-08] 東北沖地震の後に見られた海底近傍の水温の急上昇について

*稲津 大祐1伊藤 喜宏2日野 亮太3谷川 亘4 (1.東京海洋大学、2.京都大学、3.東北大学、4.海洋研究開発機構)

キーワード:海底圧力、水温、地震

2011年東北地震を震源直上で経験した8観測点の海底圧力観測の温度記録を精査した。水晶式圧力振動子の温度補償のための温度データは、厳密には圧力センサーの(特にブルドン管)内部の温度である。熱伝導の方程式を用いて、これから圧力計の外の環境温度、すなわち、海底水温を推定した。推定した海底水温の記録を見ると、東北沖地震の発生から3.2時間後に、水深1.1kmの1点で、数時間継続する約+0.2℃の水温上昇が見られた。水深が3.3km、5.8kmの2点では、地震発生からそれぞれ4.5時間後、3.5時間後に、それぞれ約+0.2℃、+0.1℃の水温上昇が発生し、その水温異常は10-20日ほどかけて元のレベルに減衰していった。特に水深5.8kmの点については、東北地震の発生後14日後に浮上・回収したが、この浮上の際、海底から約500m上まで、+0.03℃以下の正の温度異常が見つかった。その他の水深1.0-1.6kmくらいの5点については、東北地震に関係する温度異常は何も見つからなかった。3点の水温異常の原因について、東北地震の後に実施された幾つかの震源近傍の現地調査の研究を参照し注意深く議論した。水深の1.1kmの点の変動は、過去の研究でも指摘されるように、津波混濁流に起因するものであろう。一方、3.3kmと5.8kmの点の変動は、海底下からの湧水が要因と考えると、他の幾つかの地球物理学、地球化学、地質学的な現地調査結果とも整合し、もっともらしいと考えられる。