14:15 〜 14:30
[SCG48-09] 海底間音響測距による三陸沖海溝軸の挙動の測定
キーワード:海底間音響測距、海底測地、東北地方太平洋沖地震
2011年の東北地方太平洋沖地震後、GNSS-A観測によって余効変動が捉えられている。その変位速度は海溝軸に沿って大きく変化しており、余効変動のプロセスが地域によって異なることが示唆されている。GNSS-A観測は、海底局アレイを配置するために、広く、テクトニックに安定な地形が必要である。そのため、沈み込み帯最浅部の挙動は捉えることができない。そこで我々は海溝軸を跨ぐ海底間音響測距観測により、海溝軸近傍の挙動の実測に取り組んできた。本講演では、地震観測や測地観測によってスロー地震の存在が示されている、三陸沖海溝軸で観測を実施したので、その概要と予備的な解析結果を報告する。
我々は、2019年に、5台の測器を設置し、およそ2年の連続観測を実施した。本講演では、このうち全期間にわたり連続でデータが得られたM4,M6,M7の各測器間の基線を対象とした解析結果をお見せする。観測データは往復走時、機器の姿勢、水温、圧力からなり、走時と姿勢の計測頻度は1日に1回 (1分間隔の3測距)、外付けセンサーによる水温・圧力は5秒サンプリングとなっている。
解析手順を以下に示す。装置の時計のずれを補正する。往復走時と標準音速をかけて見かけ基線長変化を算出する。音速の水温補正については、両者の周波数コヒーレンシーが低くなる、短い時定数の変化を落とすようにメディアンフィルターをかけた上で、両者の水温の平均を採用した。圧力については、長期トレンドはないものと仮定して関数フィッティングによりドリフト成分を取り除いた上で、両者の圧力の平均を採用した。姿勢については、音響素子(立ち上げ高さ3.5m)が姿勢変化により、測器のアンカー部をヒンジとして水平移動すると仮定し、その基線方向への方向余弦を見かけ距離変化とした。これらの見かけ距離変化の合計を、補正前の見かけ基線長変化から差し引くことで最終的な基線長変化を得た。
上記の手続きで得られた基線長変化が一定レートであると仮定し、直線回帰した結果、M4-M6基線は+0.6cm/yr、M4-M7基線は-1.1cm/yr、M6-M7基線は-0.7cm/yrとなった(伸張が正)。各基線長には2cm程度の長周期の変化が残り、さらに同じ海側プレート上のM6-M7基線にも同程度の変化が見られるため、現状の補正で推定した基線長変化速度には1.5cm/yr程度の不確定性があると考えられる。よって今回の予備的な結果では、海溝軸を挟んで1.5cm/yrを超える速度での収束・発散はなかったと見られる。
本解析では、圧力に長期トレンドがないと仮定したが、長期海洋変動による影響の可能性は排除できないため、同一プレート上の基線長変化を最小にするような仮定が有効な可能性がある。水温のメディアンフィルターの時間幅には、まだ最適化の余地が残されている。今回対象とした3台の測器の他、M3や間接測距方式(IPR)のM5のデータも有り、今後の解析に追加していく予定である。
我々は、2019年に、5台の測器を設置し、およそ2年の連続観測を実施した。本講演では、このうち全期間にわたり連続でデータが得られたM4,M6,M7の各測器間の基線を対象とした解析結果をお見せする。観測データは往復走時、機器の姿勢、水温、圧力からなり、走時と姿勢の計測頻度は1日に1回 (1分間隔の3測距)、外付けセンサーによる水温・圧力は5秒サンプリングとなっている。
解析手順を以下に示す。装置の時計のずれを補正する。往復走時と標準音速をかけて見かけ基線長変化を算出する。音速の水温補正については、両者の周波数コヒーレンシーが低くなる、短い時定数の変化を落とすようにメディアンフィルターをかけた上で、両者の水温の平均を採用した。圧力については、長期トレンドはないものと仮定して関数フィッティングによりドリフト成分を取り除いた上で、両者の圧力の平均を採用した。姿勢については、音響素子(立ち上げ高さ3.5m)が姿勢変化により、測器のアンカー部をヒンジとして水平移動すると仮定し、その基線方向への方向余弦を見かけ距離変化とした。これらの見かけ距離変化の合計を、補正前の見かけ基線長変化から差し引くことで最終的な基線長変化を得た。
上記の手続きで得られた基線長変化が一定レートであると仮定し、直線回帰した結果、M4-M6基線は+0.6cm/yr、M4-M7基線は-1.1cm/yr、M6-M7基線は-0.7cm/yrとなった(伸張が正)。各基線長には2cm程度の長周期の変化が残り、さらに同じ海側プレート上のM6-M7基線にも同程度の変化が見られるため、現状の補正で推定した基線長変化速度には1.5cm/yr程度の不確定性があると考えられる。よって今回の予備的な結果では、海溝軸を挟んで1.5cm/yrを超える速度での収束・発散はなかったと見られる。
本解析では、圧力に長期トレンドがないと仮定したが、長期海洋変動による影響の可能性は排除できないため、同一プレート上の基線長変化を最小にするような仮定が有効な可能性がある。水温のメディアンフィルターの時間幅には、まだ最適化の余地が残されている。今回対象とした3台の測器の他、M3や間接測距方式(IPR)のM5のデータも有り、今後の解析に追加していく予定である。