日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 海洋底地球科学

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (19) (Ch.19)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、コンビーナ:田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)

11:00 〜 13:00

[SCG48-P12] 東京海洋大学練習船「汐路丸」による海底地殻変動観測

*岡山 悠宇1中東 和夫1、鹿島 英之1、酒井 久治1木戸 元之2 (1.東京海洋大学、2.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:海底地殻変動

東京海洋大学では2021年10月にGNSS-音響結合(GNSS-A)方式海底地殻変動観測用の船底トランスデューサを装備した練習船「汐路丸」を竣工した。本発表では、2022年1月に茨城沖において初めて汐路丸を用いて実施した海底地殻変動観測の概要と取得データのクォリティーについて報告する。
 日本は頻繁に地震に見舞われる地震大国であり、近年では2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で引き起こされた津波により東日本太平洋岸では大きな被害が出た。東北地方太平洋沖地震のような海溝型地震は沈み込む海洋プレートの動きに伴い、プレート境界付近にひずみが蓄積し、そのひずみが解放されることにより発生する。海溝型地震の震源域となり得るプレート境界浅部のひずみ速度[MK1] を推定するには海底の動きを知る必要がある。そこで、日本列島の太平洋沖ではGNSS観測と音響測距を組み合わせたGNSS-A方式による海底地殻変動観測が近年精力的に行われている。通常、海底地殻変動を測定するには観測船などでキャンペーン観測をする必要があり、人的・金銭的負担が大きく、東北大学の例では、ほとんどの観測点で年に1〜2回の観測に限られ、場所によっては何年も観測できていない観測点もある。プレート境界での固着・すべりの状況を広域に精度よく、また、高時間分解能で把握するには観測頻度を上げる必要がある。近年では波浪を推進力とする無人自律観測機などを用いた観測手法の開発が進められ、観測の省力化と高頻度化が図られつつあるが、航行速力が遅いため観測形態が限定されてしまう他、潮流が速い海域では運用自体が困難なため、船舶による観測も欠かせない。そこで本研究では黒潮と親潮の混合域で黒潮の経路によっては4ノット程度の潮流が発生することから2018年以降観測ができていなかった茨城沖の東北大観測点G20(水深2742m)において海底地殻変動観測を行ったので報告する。観測は2022年1月13日0時23分から14時10分(JST)の計13時間57分実施した。はじめに約8時間の海底局アレイ中心での定点観測、次にアレイに外接する円周上の移動観測を3周(約4時間)、最後に約2時間の定点の順で観測を実施した。新造船の操船性能および音響ノイズレベルを把握するため1回目の定点観測の定点保持は手動操船、2回目の定点観測はDynamic Positioning Systemを使用した。また、音響観測と並行して、計5回のXCTD観測と1回のXBT観測を実施した。現段階で収録音響波形および走時検出のための相関波形の確認までできており、汐路丸による海底地殻変動観測でも、同じく船底装備のある海洋研究開発機構の新青丸等と遜色のない音響波形データが取得できることを確認できた。今後、実際の走時検出、GNSSデータの解析、船体の姿勢補正、計測音速との整合性の確認など、詳細な解析を行う予定である。
謝辞:本研究は、東京大学地震研究所共同利用(2021-KOBO19)の援助を受けました。また、海底局は東北大学が2012年に設置したものを利用しました。