11:00 〜 13:00
[SCG49-P05] 部分溶融岩の粒界割れに関する理論的・実験的研究
キーワード:非弾性、粒界割れ、部分溶融岩
これまでの研究から、上部マントルにおいて地震波の分散と減衰を引き起こす岩石非弾性の主なメカニズムは粒界すべりであると考えられている。粒界滑りの振る舞いは原子レベルでの粒界構造(無秩序度)と粒界拡散係数によって決まり、上部マントルで期待される1%以下のメルトの有無は粒界滑りには影響を与えないと考えられている(Yamauchi and Takei, 2016)。しかし、メルトの存在は有効封圧を低下させるため、差応力下では粒界割れを引き起こす可能性がある。粒界割れが生じると粒界すべりが促進され、さらなる地震波速度の低下や減衰の増加が生じる可能性がある。したがって、メルトの存在が粒界割れに与える影響を明らかにすることは非常に重要である。本研究では上部マントルの部分溶融岩中で粒界割れの発生する条件を明らかにすることを目指している。
本研究ではまず、粒界割れについて理論的な考察を行った。初めに、岩石の脆性破壊の基準としてよく知られているナビエ=クーロン基準の粒界割れへの適用可能性を検討した。この基準は、破壊が始まるせん断応力が法線応力に比例して大きくなるというものであるが、その実体は荒い面におけるミクロな真実接触面積が法線応力に比例するために起きると解釈されている。しかしながら、部分溶融岩には荒い面に相当する部分がないため、ナビエ=クーロン基準を適用することはできないと結論した。従って、ナビエ=クーロン基準に基づく有効封圧理論も部分溶融岩には適用できないことがわかった。そこで次に、グリフィス理論を用いて、部分溶融岩における粒界割れを考察した。メルトが存在する部分をクラックとみなすことで、粒界と固液界面の会合点におけるクラック進展問題として扱うことができる。この理論を用いることで、液圧一定の条件下ではクラックの進展条件が有効封圧によって決まることを明らかにでき、メルト相の有無が有効封圧への影響を通して粒界割れに大きな影響を与えることがわかった。ただし、仮定した液圧一定という条件の妥当性は、流体量や破壊のモード(開口、せん断)に依存することもわかった。また、部分溶融岩では、クラック先端での応力集中が、通常の脆性破壊理論で考慮される塑性変形に加えて、物質拡散によっても非常に大きく緩和され得るため、この影響も考慮する必要があることがわかった。従って、粒界割れを実験的に調べるためには、これまでの部分溶融岩の変形実験ではあまり注目されてこなかった「差応力の変化の時定数」を制御した実験を行うことが重要であることもわかった。
以上の理解に基づいて、本研究では、部分溶融岩のアナログ物質を用いて、メルトの有無が粒界割れに与える影響を調べる実験を準備中である。発表では、これらの実験計画についても紹介したい。
本研究ではまず、粒界割れについて理論的な考察を行った。初めに、岩石の脆性破壊の基準としてよく知られているナビエ=クーロン基準の粒界割れへの適用可能性を検討した。この基準は、破壊が始まるせん断応力が法線応力に比例して大きくなるというものであるが、その実体は荒い面におけるミクロな真実接触面積が法線応力に比例するために起きると解釈されている。しかしながら、部分溶融岩には荒い面に相当する部分がないため、ナビエ=クーロン基準を適用することはできないと結論した。従って、ナビエ=クーロン基準に基づく有効封圧理論も部分溶融岩には適用できないことがわかった。そこで次に、グリフィス理論を用いて、部分溶融岩における粒界割れを考察した。メルトが存在する部分をクラックとみなすことで、粒界と固液界面の会合点におけるクラック進展問題として扱うことができる。この理論を用いることで、液圧一定の条件下ではクラックの進展条件が有効封圧によって決まることを明らかにでき、メルト相の有無が有効封圧への影響を通して粒界割れに大きな影響を与えることがわかった。ただし、仮定した液圧一定という条件の妥当性は、流体量や破壊のモード(開口、せん断)に依存することもわかった。また、部分溶融岩では、クラック先端での応力集中が、通常の脆性破壊理論で考慮される塑性変形に加えて、物質拡散によっても非常に大きく緩和され得るため、この影響も考慮する必要があることがわかった。従って、粒界割れを実験的に調べるためには、これまでの部分溶融岩の変形実験ではあまり注目されてこなかった「差応力の変化の時定数」を制御した実験を行うことが重要であることもわかった。
以上の理解に基づいて、本研究では、部分溶融岩のアナログ物質を用いて、メルトの有無が粒界割れに与える影響を調べる実験を準備中である。発表では、これらの実験計画についても紹介したい。