日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG49] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (24) (Ch.24)

コンビーナ:東 真太郎(東京工業大学 理学院 地球惑星科学系)、コンビーナ:田阪 美樹(静岡大学 )、清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:東 真太郎(東京工業大学 理学院 地球惑星科学系)

11:00 〜 13:00

[SCG49-P08] 岩石のレオロジ―:粘弾性モデルの等価性について

*須田 誠1長濱 裕幸1武藤 潤1 (1.東北大学)


キーワード:レオロジ―、粘弾性モデル、等価性、回路理論、システム理論

地殻・マントルを構成する岩石の力学的特性は, 変形の時間スケールにより大きく異なる. 数時間・数日といった短い時間スケールでは地震波の伝播, 潮汐変形にみられるように弾性的で, 数千万年といった長い時間スケールではマントル対流のように粘性的である. 一方, 地震後の余効変動や後氷期隆起のように数十年から数千年程度の中間的な時間スケールで起きる遷移的な現象は, 粘弾性の理論によって説明される. ただし, 岩石の粘弾性的振る舞いは時間スケールが長いことから実験室で精度よく調べることが困難であり, その研究はモデル予測と観測との比較に依らざるを得ない.
岩石の力学的特性を表現する古典的なモデルとして, 岩石をバネとダッシュポットから構成される機械回路として表現する方法がある. このようなモデルは粘弾性モデルと呼ばれ, バネとダッシュポットを直列に接続したMaxwellモデルや, 並列に接続したVoigtモデル, さらにこれらを組み合わせたモデルが良く用いられる. 特に, Maxwellモデルを並列に任意個並べた一般化Maxwellモデル, Voigtモデルを直列に任意個並べた一般化Voigtモデルは, 複雑な粘弾性挙動を再現できるモデルとして知られる.
注目すべきは, 任意の粘弾性挙動に関して, その挙動を表現できる粘弾性モデルが複数種類存在する事実である. たとえば, 変形時間のべき乗則に従う緩和現象はモデル定数間に適切なスケーリング則を課した一般化Maxwellモデルや一般化Voigtモデルに加えて, 明示的なフラクタル構造を持つある種の梯子型モデルにより再現できる(たとえば, Schiessel and Bulmen, 1995). 異なる形式のモデル間において同様な挙動を示す組が存在することは, いくつかの粘弾性モデルが力学的に等価であることを意味する. これまで, 一般化Maxwellモデルと一般化Voigtモデルの等価性といった特別な粘弾性モデルに対する等価性は議論されてきたが, これらを含む一般の場合に関しては体系化されていなかった.
粘弾性モデルは本質的にRC電気回路と同じであることから, 本研究では電気回路の理論を積極的に援用し, 粘弾性モデルの等価性をより統一的に議論した. その結果, ばねとダッシュポットの組み合わせで構成されるすべての粘弾性モデルが一般化Maxwellモデル, 一般化Voigtモデル, Cauer-1型, 2型モデルと呼ばれる梯子型モデルと等価であることを明らかにした. これは, 岩石の力学的特性をバネとダッシュポットによる粘弾性モデルで議論する限り, 使用するモデルは良く知られた一般化Maxwellモデルや一般化Voigtモデルのみで十分であることを意味する. また, システム理論によると等価な粘弾性モデル同士の変換が正則行列による相似変換に相当する. この事実は, 等価変換が系の内部状態空間の基底を取り換える操作であることを意味する.