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[SCG50-02] 反射法地震探査データによる北海道沖千島海溝前弧の地下構造
キーワード:千島海溝、前弧海盆、反射法地震探査
北海道沖の千島海溝前弧域は大陸棚と海溝斜面にはさまれた狭い前弧海盆となっている根室沖と広い前弧海盆をもつ十勝沖とで対照的な海底地形を示す。また根室沖には白亜紀の火山活動に起因すると考えられている正の重力異常と地磁気異常が観測されている。一方で十勝沖では地磁気異常は小さく、強い負の重力異常がみられる。地形やこれらの異常は両領域に地下構造に違いがあることを示しているが、これまで前弧域深部構造に関する広域的な詳細調査は行われてこなかった。JAMSTECではこれらの領域を含む地下構造の解明のために反射法地震探査(MCS)を2000年・2019年・2020年に行いデータを合計9測線で取得した。00年・19年は深海調査研究船「かいれい」で、20年は海底広域研究船「かいめい」で調査を行い、00年は総容量12000cu.in.のエアガンを用い156chのストリーマ―ケーブル、最大オフセット4050mで取得、19年は総容量5850cu.in.のエアガンを用い444chのストリーマケーブル、最大オフセットを5666mで、20年は総容量10600cu.in.のエアガンを用い、19年と同じストリーマ―ケーブル(後半の測線は432ch、5516m)でそれぞれ取得した。データ解析は、多重反射波・ランダムノイズ等のノイズ抑制処理およびDeghost処理による広帯域化処理を重点的に実施した上で、重合前時間マイグレーション(PSTM)処理とグリッドトモグラフィによる速度モデルを用いた重合前深度マイグレーション(PSDM)によるイメージングを行った。本研究では、これらのデータを用いて北海道沖前弧域の地下構造の特徴をまとめる。MCSの結果は十勝沖と根室沖で大きな違いを示した。十勝沖では海溝軸平行方向に上部境界をおおむね深度370~1500mにもつ褶曲がみられる 。この褶曲は西側では背斜間隔が8kmと短波長で変位が1km以上と大きく、東側では背斜間隔が23kmと長波長となる。前弧海盆で最も厚く堆積している場所は褶曲の向斜にあたり最大で4000mも成層している。前弧海盆が非常に長期間にわたって沈降が続いていることを示している。背斜にあたる場所では堆積物の厚さは500m以下と薄くなっている。成層堆積物基盤の反射は根室沖と比べると弱く、判別が困難なほど弱い場所もあるが、凹凸は小さく整合的な堆積を示している。根室沖では海溝軸平行方向に褶曲とともに断層が発達している。堆積物の下部は褶曲しつつ断層で切られている、上部は広く不明瞭(不整合)な反射を境界として成層堆積物が覆っている。海溝に直行方向では正断層が多く引張を示しており、前弧海盆は正断層で落ちている。一部の断層には少なくとも3度の活動を示唆する堆積物の不整合がのこっており、断続的に前弧海盆の落ち込みが続いている可能性がある。根室沖と十勝沖の前弧域の構造の違いは異なるメカニズムによって前弧海盆が形成されていることを示唆している。