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[SCG50-11] 西南本州弧の温度構造:中央構造線の活動度と地殻温度
キーワード:地殻、温度構造
四国・中国・近畿地域については、フィリピン海プレートが比較的低角に沈み込む。このような低角沈み込みでは何が島弧の温度構造を規制しているのであろうか。本研究では、防災科学技術研究所の三次元地震波速度構造の地震波速度データから一定のVp/Vs比の領域の速度データを用いることで、地震波速度データから温度成分を抽出し、地下の温度分布、地温勾配、300℃の深度、脆性塑性境界深度を推定した。四国・中国・近畿地域については、深度15㎞の地震波速度データを使用して、温度構造と脆性塑性境界分布を求めた。その結果、300℃深度は中央構造線付近に沿って浅く、その北側と南側は300℃深度が深くなる特徴が読み取れた。この温度構造は地震発生層下限の深さと整合的である。東北本州弧では火山フロント付近(奥羽脊梁山脈)に沿って地殻の高温域が分布している。一方、四国・中国・近畿地域については、第四紀火山フロントよりも中央構造線付近が最も高温な地殻となっている。四国・中国・近畿地域については、フィリピン海スラブから脱水した流体による熱移流の影響が温度構造を大きく規制していると思われる。中央構造線に沿った高温部は四国から紀伊半島西部では300℃深度が12km弱であるが紀伊半島中央部・東部では300℃深度が16km弱である。中央構造線に沿った高温部の中でも、活断層運動が認められていない部位は相対的に温度が低くなっている。つまり中央構造線の活断層としての活動度が地殻温度に規制されている可能性が高い。九州地域については深度15㎞のデータを使用して、温度構造と脆性塑性境界分布を求めた。鹿児島周辺や大分周辺では300℃深度や脆性塑性境界が浅く、地震発生層下限の深さ分布と傾向が類似している。フィリピン海プレートが高角に沈み込む九州は全体に高温傾向であり、フィリピン海プレートが比較的低角に沈み込む四国・中国・近畿地域の温度構造とは全く異なる特徴を示す。