日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 変動帯ダイナミクス

2022年5月27日(金) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、コンビーナ:岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)、座長:西村 卓也(京都大学防災研究所)、Meneses-Gutierrez Angela(Institute for Advanced Research, Nagoya University)

16:15 〜 16:30

[SCG52-22] GNSSによって観測された能登半島群発地震に伴う地殻変動

*西村 卓也1西川 友章1佐藤 大祐1平松 良浩2澤田 明宏2 (1.京都大学防災研究所、2.金沢大学理工研究域)

キーワード:地殻変動、GNSS、群発地震、能登半島

群発地震は通常、スロースリップイベントやマグマの貫入等による外的な応力擾乱や間隙流体圧の上昇に伴う断層強度の低下に関連した現象だと解釈されている。そのため、測地学的に検出可能な地殻変動を伴うような大規模な群発地震は、プレート境界断層や火山地域で観測されるのが普通であるが、そのどちらでもない能登半島の先端で2020年12月から活発な群発地震活動が発生している。本発表では、能登半島での群発地震に伴って観測された地殻変動、地震活動及びそれらの解釈について報告する。
2020年12月から始まった群発地震は、当初なバースト的な地震活動の増加が見られたが、徐々に連続的な活動となり、2021年7月以降は週にM1以上の地震が120回以上発生するような活発な地震活動が本稿執筆時点(2022年1月末)まで継続している。最大地震は2021年9月16日に発生したM5.1である。群発地震のメカニズム解は北東-南西方向に圧縮軸を持つような逆断層型が多く、震源の深さは、概ね10-18kmである。地殻変動は、群発地震の震源域から概ね30km以内にあるGEONET観測点において観測されており、2020年12月から1年間の非定常地殻変動は、群発地震震源域から遠ざかるような水平変位が最大12mm、上下変位は最大30mmの隆起が観測されている。この変位から球状圧力源(茂木モデル)を仮定して、そのパラメータを推定すると、深さ約12km、体積増加量が約2.5×107m3が得られた。しかし、GEONET観測点だけでは、震源域よりも北東側での変位が得られないため、変動源の形状を絞り込むことが難しい。そのため、2021年9月に、震源域を取り囲むように4か所のGNSS観測点を設置し、観測を開始した。設置後4ヶ月間の地殻変動を見ると、これらの観測点においても、群発地震震源域から遠ざかるような変位が観測されている。一方、2021年11月中旬から2022年1月中旬までの変動パターンを見ると、変動パターンの中心が西-北西方向へ移動しているように見えるが、季節変動の可能性もあるためさらなるデータの蓄積を待つ必要がある。能登半島北部では、ヘリウム同位体比の研究からマントル起源の流体の存在が示唆されていること(Umeda et al., 2019)や下部地殻に低比抵抗体がイメージングされていること(Yoshimura et al., 2008)から、今回の群発地震活動は大量の深部からの流体が地殻内を上昇し、深さ12km程度で蓄積したものが地殻変動から推定された体積膨張源であると考えられる。群発地震の活発化は、体積膨張源によるクーロン応力の増加で概ね説明できるものの、必ずしも地震活動の増加と地殻変動の急激な変化の時期が一致していないことと、地震活動の上限が徐々に浅くなっていることから、断層帯における流体の移動による強度低下も地震活動の活発化に寄与している可能性がある。
謝辞:国土地理院のGNSSデータ及び気象庁一元化震源データを用いました。GNSS観測点の設置にあたり、珠洲市教育委員会、珠洲市役所企画財政課及び能登町教育委員会にお世話になりました。