日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 変動帯ダイナミクス

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、コンビーナ:岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)、座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)

11:00 〜 13:00

[SCG52-P17] 能登半島北東部珠洲市付近の地震活動

*平松 良浩1 (1.金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)

キーワード:群発地震、地殻流体、流体移動、流体圧

・はじめに
能登半島北東部の珠洲市周辺では地震数が2018年6月頃から増加傾向となり、2020年12月頃から活発化し、4つの領域で地震が発生している。GNSSデータの解析結果からも能登半島北東部を中心に局所的な地殻変動が始まっていることが明らかになり、変動源として球状圧力源やゆっくりとした断層すべりモデルが提唱されている(例えば、西村, 2021)。2021年9月16日にはマグニチュード5.1、最大震度5弱の地震が発生した。本研究では、この能登半島北東部の地震活動に着目し、地震活動と球状圧力源との関係や震源移動に関して報告する。

・データと方法
本研究で対象とする地域は能登半島北東部の珠洲市周辺地域で、北緯37.4〜37.6度,東経137.1〜137.4度の範囲である。気象庁の験測値データを用いて、JHD法(Kissling et al., 1994)にて一次元地震波速度構造を求めた。その速度構造を用いて気象庁、防災科学技術研究所Hi-net、東京大学、京都大学防災研究所の観測点で得られた地震波形を用いて、Double Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)にて震源再決定を行った。また、一部の地震について初動押し引き分布を用いた震源メカニズム解の決定を行った(Maeda, 1992)。

・結果と考察
本研究地域の地震活動は珠洲市の南部(富山湾側)、西部(内陸部)、北部(日本海側)、東部(能登半島先端部)の4つの領域に大別できる。再震源決定の結果から、南部の地震の震源は、2020年12月以降は主として15 km以深となることが確認され、他の3つの領域の地震の深さが10〜15 kmであることと対照的である。南部の地震の分布は70度程度の高角であり、その他の3地域は45度前後の角度である。F-netのCMT解の断層パラメータとこれらの結果は概ね整合的である。

球状圧力源によるΔCFFは西部、北部、東部の逆断層型のメカニズムの地震活動を良く説明する。なお、ゆっくりとした断層すべりモデルは地震活動の説明可能性が球状圧力源モデルより劣る。南部については、初動押し引き分布を用いた震源メカニズムから横ずれ型または正断層型のメカニズム解が得られており、ΔCFFはそれらの地震活動も促進する。2018年6月から2020年11月までの南部で発生した深さ15 km以深の地震についても横ずれ型や正断層型のメカニズム解が得られている。2020年12月以降の地殻変動から推定された球状圧力源によるΔCFFはこれらの地震活動にも良く当てはまる。地殻変動としては捉えられていないものの球状圧力源による地震活動への影響が2020年12月以前からあったことが示唆される。

震源の深さに着目すると、南部では2018年6月から2020年11月まで震源の深さが浅くなる傾向が見られる、それ以外の領域でも地震活動の活発化が始まってから、震源の深さが浅くなる傾向が見られ、これは震源域の拡大として見ることができる。これらの震源の移動はsqrt(4*pi*D*t) (Shaprio et al., 1997)で近似でき、震源移動は流体圧の拡散の影響を受けていることが示唆される。実際、地震活動は2021年7月頃から一層の活発化を示しているが、地殻変動データからはそれに対応する変化は見られない。現在の珠洲市周辺の地震活動には球状圧力源の影響だけでなく、流体移動の影響もあることが考えられる。

・謝辞:本報告では、気象庁の一元化震源データ、験測値データ、地震波形データ、防災科学技術研究所 Hi-net の地震波形データおよびF-net の震源メカニズム解データ、京都大学防災研究所および東京大学地震研究所の地震波形データを使用しました。京都大学の西村卓也准教授には解析結果を提供していただいた。記して感謝します.