15:45 〜 16:00
[SCG55-02] 地震動エネルギーの逆伝播を用いた最大震度分布の事後推定
キーワード:震度分布、地震波伝播、即時解析
地震発生後の早期に面的な地震動分布が推定できると、その情報は被害推定や復旧対応に重要な役割を果たすと期待される。近年は強震観測点が稠密になったことから、観測値の単純内挿だけでもある一定の役割を果たすと考えられるが、観測点配置や欠測によって観測でとらえられなかった地震動の復元は難しい。特に、地震動が大きいと推定される震源周辺の震度分布は非常に重要である一方、観測点が欠測となる可能性も相対的に高いことから、地震動分布の早期推定にあたっては観測値の欠測に対するロバスト性が要求される。本研究では計測震度の帯域に焦点を当てて、地震動分布の面的推定手法を検討する。なお、面的な地震動分布の推定にあたっては面的なサイト特性の把握が特に重要であるが、本研究ではサイト特性の検討には立ち入らない。
観測値が得られなかった場合の地震動分布を得る手法として、距離減衰式を併用することが考えられる。しかし、面的な地震動分布の推定が必要となる地震はその規模が大きいため点震源を仮定できない場合も多いと考えられることから、地震動分布の推定精度を向上させるためには距離減衰式は力不足であろう。そのような場合、波動伝播の物理を考慮した地震動分布の補間方法が必要となる。ここでは、Hoshiba and Aoki (2015)による「揺れの数値予報」に地震動の逆伝播を組み合わせた手法を試行した。この手法の基本的なコンセプトは、ある方位で震源に近い観測点の記録が得られなくても遠方の観測点では記録が得られる可能性が高いため、遠方の観測記録を逆伝播させることによって震源近傍の地震動を復元できるのではないか、というものである。
「揺れの数値予報」に基づいて、ある時点までの観測値と地震動の順伝播計算を融合して地震動分布を推定したのち、その分布を単純に逆伝播させてみたところ、順伝播の途中計算を再現できないという問題があった。この問題には地震動の伝播計算が地震波散乱理論に基づいているという点と、「揺れの数値予報」にて地震動分布を推定する際に行っている種々の計算上の工夫が影響しているようである。地震動の事後分布推定にはある程度の時間的余裕があり、また、震源情報が活用可能であるという条件を生かした推定手法を考察する必要がある。
謝辞 本研究では防災科研K-NET/KiK-netの観測波形を使用しました。
観測値が得られなかった場合の地震動分布を得る手法として、距離減衰式を併用することが考えられる。しかし、面的な地震動分布の推定が必要となる地震はその規模が大きいため点震源を仮定できない場合も多いと考えられることから、地震動分布の推定精度を向上させるためには距離減衰式は力不足であろう。そのような場合、波動伝播の物理を考慮した地震動分布の補間方法が必要となる。ここでは、Hoshiba and Aoki (2015)による「揺れの数値予報」に地震動の逆伝播を組み合わせた手法を試行した。この手法の基本的なコンセプトは、ある方位で震源に近い観測点の記録が得られなくても遠方の観測点では記録が得られる可能性が高いため、遠方の観測記録を逆伝播させることによって震源近傍の地震動を復元できるのではないか、というものである。
「揺れの数値予報」に基づいて、ある時点までの観測値と地震動の順伝播計算を融合して地震動分布を推定したのち、その分布を単純に逆伝播させてみたところ、順伝播の途中計算を再現できないという問題があった。この問題には地震動の伝播計算が地震波散乱理論に基づいているという点と、「揺れの数値予報」にて地震動分布を推定する際に行っている種々の計算上の工夫が影響しているようである。地震動の事後分布推定にはある程度の時間的余裕があり、また、震源情報が活用可能であるという条件を生かした推定手法を考察する必要がある。
謝辞 本研究では防災科研K-NET/KiK-netの観測波形を使用しました。