日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 沈み込み帯へのインプット:海洋プレートの実態とその進化

2022年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:藤江 剛(海洋研究開発機構)、コンビーナ:山野 誠(東京大学地震研究所)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、コンビーナ:鹿児島 渉悟(富山大学)、座長:藤江 剛(海洋研究開発機構)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)

11:15 〜 11:30

[SCG56-08] オマーンオフィオライト掘削試料の物性測定に基づく海洋地殻の地震波速度と比抵抗の関係

*赤松 祐哉1長瀨 薫平1阿部 なつ江2岡﨑 啓史2畠山 航平3片山 郁夫1 (1.広島大学、2.海洋研究開発機構、3.明星大学)


キーワード:比抵抗、地震波速度、海洋地殻、クラック、オマーン掘削計画、Hole 1256D

海洋地殻内に存在するクラックなどの空隙の存在形態を知ることは,地球深部への水や物質の移動,地下生命圏などを理解する上で重要である.クラックは岩石の弾性波速度や電気伝導度,浸透率などの物性に大きく影響する.そのため,これまでに多くの海底下の地震波探査や電磁気探査が行われ,海洋地殻内のクラックと流体の存在が調べられてきた.それらの地球物理観測データを定量的に解釈し,流体の特徴を評価するためには,岩石の物性とクラック・流体の関係を物質科学的に検証することが必要である.本研究は,ICDPオマーン掘削計画(Oman Drilling Project)において,オマーンオフィオライトのシート状岩脈―はんれい岩遷移帯を掘削したHole GT3Aのコア試料を用いて比抵抗と弾性波速度(地震波速度)の測定を行い,Hole GT3Aおよび海洋地殻の物性とクラックの関係を調べた.
試料には,Hole GT3Aのコア試料から切り出された合計94個のキューブ型試料(~2 cm x 2 cm x 2 cm)を用いた.比抵抗と弾性波速度の測定は,あらかじめ試料を海水を模した濃度の塩水で飽和させ,大気圧下で行った.
はんれい岩層はシート状岩脈に比べて高い比抵抗と弾性波速度を示した.これは,岩石に含まれるクラックの形状や連結性が層序によって異なることを示唆している.有効媒質理論に基づき,弾性波速度からクラック密度とアスペクト比を計算した.その結果,クラックの量を表すクラック密度は岩層の変化にあまり影響を受けないが,クラックの形状(アスペクト比)はシート状岩脈からはんれい岩にかけて顕著に変化する傾向が示された.比抵抗は低いクラック密度で急激に増加する傾向を示した.これは,クラックのネットワークの形成による流体のパーコレーションを示唆している.そこで,クラックのパーコレーション理論に基づく流体浸透モデルを適用した結果,比抵抗の深さ変化は,弾性波速度から推定されるクラックの連結度とアスペクト比の変化に関連付けられた.海洋地殻のその場の物性を定量的に解釈するために,本研究の室内測定で得られた地震波速度ー比抵抗の関係を用いて,太平洋プレート上部地殻を掘削したIODP Hole 1256Dの孔内検層の結果を解析した.その結果,掘削孔スケールの比抵抗も地震波速度から推定されるクラックの形状や連結度で解釈できることが示された.