日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] New perspectives of subduction zone earthquake dynamics through experiments across-scales

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木下 正高(東京大学地震研究所)、コンビーナ:荒木 英一郎(海洋研究開発機構)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、コンビーナ:橋本 善孝(高知大学)、座長:木下 正高(東京大学地震研究所)、神谷 奈々(京都大学大学院工学研究科)、向江 知也(山口大学大学院)

16:15 〜 16:30

[SCG57-04] 四万十帯日高川層群における太古のプレート境界断層の地球化学的特徴と滑り挙動評価

*嶋本 朱那1廣野 哲朗1石川 剛志2 (1.大阪大学院理学研究科宇宙地球科学専攻、2.海洋研究開発機構高知コア研究所)

キーワード:プレート境界断層、流体岩石相互作用、アルバイト化

陸上に露出する付加地質帯には,太古のプレート境界断層の情報が保持されている.よって,その調査はプレート沈み込み境界断層の滑り挙動を理解する上で重要である.付加地質帯では陸からの距離に依存して,構成する鉱物が変化するため,トレンチ方向の断層の特徴や滑り挙動を解明することは重要である.本研究では,和歌山県御坊市三尾地域の海岸に露出する四万十帯日高川層群美山累層のメランジユニットを調査した。本海岸では,砂岩・泥岩・チャート・玄武岩が著しい変形構造を呈し,東西方向に延びた直線性の良い断層が確認できた.その断層および周辺の母岩でサンプリングを行い,微小構造観察,主要-微量元素濃度測定及びXRD分析を実施した.微小構造観察の結果,主滑り帯では複合面構造が発達し,カタクレーサイトから主滑り帯に石英の破片が取り込まれる様子が確認できた.さらに,主要-微量元素濃度分析を行った結果,主滑り帯でLi,Sr,Rb,Csなど流体で動きやすい元素の濃度が,母岩と比較して変化していることが分かった.
そこで,本断層で流体岩石相互作用が起こったと仮定して,モデル計算を行ったところ,本断層で高温流体が存在したことが明らかになった.また,XRD分析の結果から,主滑り帯は母岩と比較して石英の減少と斜長石の増加が顕著である.そこで緑色片岩相での母岩と高温流体との間の交代作用により起こるアルバイト化を仮定したモデル計算を実施した.その結果,主滑り帯での元素濃度異常は300℃以上の高温流体を介したアルバイト化で説明可能であると分かった.以上の結果から,プレート境界断層では,地震時やその直後に発生した高温流体との反応により,断層を構成する鉱物の種類が変化することが分かった.このような変化は,地震時の断層滑り挙動に影響を与える可能性がある.