日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] New perspectives of subduction zone earthquake dynamics through experiments across-scales

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:木下 正高(東京大学地震研究所)、コンビーナ:荒木 英一郎(海洋研究開発機構)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、コンビーナ:橋本 善孝(高知大学)、座長:木下 正高(東京大学地震研究所)、澤井 みち代(千葉大学大学院理学研究科)

11:00 〜 13:00

[SCG57-P01] 海底・孔内温度計測から推定した室戸沖付加体先端部の熱・水理構造

*木下 正高1神谷 奈々2 (1.東京大学地震研究所、2.京都大学)

キーワード:heat flow、IODP、slow earthquake

沈み込み帯の巨大地震発生断層およびその周辺の「場(温度・圧力・応力など)」を把握することは,断層固着域の性質を把握するのに貢献するばかりでなく,その周辺で発生するスロー地震や長周期変動(スロースリップを含む)などのメカニズム理解のために重要である.そのうち,温度場の推定には,海底表面での熱流量測定値やBSR深度の熱流量推定値が主に用いられている.その結果,室戸沖では,トラフ軸の陸側(付加体斜面)での陸側に向かった急激な熱流量の低下と,トラフ底での200mW/m^2を超える高熱流量が報告されている(Yamano et al, 2003など).Spinelli and Wang (2008)は,沈み込む海洋地殻中の熱水循環によるheat miningにより変形フロント(DF)付近を境として陸側での低熱流量と海側(トラフ底)での高熱流量が生じると論じた.
室戸沖南海トラフ付加体先端部では,これまでにODP/IODP(深海掘削計画・国際深海科学掘削計画)により,海底下300m程度までの原位置温度計測が行われ,また3か所に孔内観測所が設置されている.またその付近での潜航調査により,海底での詳細な熱流量測定が行われた.ACORKと表面での熱流量測定の結果から,室戸沖DF付近では,第一前縁断層(FT)より海側(ODP-1174,1173)では熱流量が高い(>180mW/m^2)が,第一FT付近(IODP-C0023)とその陸側(ODP-808)では低下(130-140mW/m^2)しているように見える.ただし第一,第二FTの出口では局所的な高熱流量が観測されており(Kawada et al., 2014),FTに沿った流体上昇の可能性が高い.これらの結果は,既往研究で指摘された熱流量転移が,まさにDF付近(第一FT付近)で発生していること,および,海洋地殻中の水がFTを通って流出している可能性を示唆している.
室戸沖では,3か所(808,C0023,1173)の掘削孔が温度・水圧観測を継続,またはそのための準備がととのっており,固着域より浅い側で頻発するスロー地震・スロースリップ活動に関連した流体移動・湧出の証拠が検出される可能性が高い.