11:00 〜 11:15
[SEM14-08] 北海道洞爺カルデラ周辺における陸-海-湖域接合の広帯域MT法調査
キーワード:MT法、比抵抗、陸―海―湖域接合解析、洞爺カルデラ
比抵抗は,地下水や熱水のような流体や粘土のような導電性鉱物の存在,温度に高い感度を持つ物理量である.このような性質を利用し,これまでに,火山・地熱活動,地震活動,石油資源等に関連する地下比抵抗構造を明らかにする目的で,MT法は幅広く利用されてきた.殆どの場合,調査対象地は陸域あるいは海・湖などの水域のいずれかに限定され,調査機材の性能,調査計画,データ解析条件などについて各フィールドに応じた調査仕様の下で,測定及び解析が実施されるのが一般的である.一方で,調査対象地が両方の領域を含む場合は,それぞれの条件に適した性能を有する調査機材を使用する必要がある他,異なる複数の機材で得られたデータの統合,逆解析時の水・陸形状の考慮など,新たな指針を構築することが重要になると考えられる.
北海道の南西部に位置する洞爺カルデラは,約11万年前のカルデラ生成噴火により形成され,現在は東西約11km,南北約10km,平均水深約140-180mのほぼ円形状のカルデラ湖を有している.後カルデラ火山が洞爺湖の中心に中島,南岸に有珠山として存在する他,洞爺カルデラの東方には,蟠渓温泉・カルルス温泉・登別温泉など局所的に活発な温泉・地熱活動が存在する.こうした地質的な不均一性に加え,カルデラの南西側は比較的水深の浅い内浦湾に面しているといった地形的な複雑さも有している.それゆえ,このようなフィールドにおける広域比抵抗モデルの解明には,解析感度に空間的な偏りが出ないよう,陸上・海底・湖底の別なく観測点を均等に展開し調査することが重要である.また,上記の地質現象に関連する構造的特徴を明らかにすることは,カルデラ内部の構造及び本地域の熱的活動を,地表付近から地殻下部にかけて大局的に把握する点でも興味深い.
こうした背景の下,洞爺カルデラ周辺域において広帯域MT法計測を実施した.調査範囲は洞爺湖を中心とした東西60km,南北60kmの領域で,陸上・内浦湾・洞爺湖の3領域にまたがる.観測点を2〜5km程度の間隔で,陸上に92点,内浦湾に16点,洞爺湖に9点の全117点配置した.測定期間は2018年11月から2019年7月である.陸域においてはPhoenix Geophysics社製MTU-5Aシステムを使用して磁場3成分・電場2成分の時系列データを取得し,海・湖域においてはUeda et al.(2014)で使用された浅海用MT計測システムを使用して磁場2成分・電場2成分の時系列データを取得した.浅海用システムを湖域において適用するにあたっては,海水より比抵抗が300倍以上高い洞爺湖の湖水に対応するため,浅海用システムで採用しているクローバテック社製Ag-AgCl電極を陸域調査で通常使用される接地面積の大きいPb-PbCl2電極に交換して接地抵抗を下げた.また,過電流防止のための保護回路を解除しロガーの入力抵抗を増加させる改良作業を行った.
取得された時系列データは各種処理により周波数領域に変換され,陸域においてはインピーダンス4成分とティッパー2成分,海域・湖域においてはインピーダンス4成分を得た.陸域の観測システムと海・湖域の観測システムとではロガーのサンプリング周波数が異なるため,同処理で得られるインピーダンスの周波数は一致しない.そのため,各システムで得られた周波数領域のデータに内挿処理を施し,周波数を揃えた上で,逆解析に使用することとした.3次元逆解析では,海水域に加えて淡水域の水底に観測点の設定が可能な最新版のWSINV3DMT(Siripurvaraporn et al.,2009)プログラムを使用した.初期モデルでは,回転不変量に基づくインピーダンスから求められた比抵抗の全使用周波数帯域の平均値(66.4Ωm)を陸地の比抵抗とし, CTD測定の結果から海水の比抵抗を0.312Ωm, 湖水の比抵抗を103Ωmとした.また,エラーフロアとしてインピーダンスに対して5%, ティッパーに対して10%を与えた.本発表では,観測概要と共に逆解析の結果得られた比抵抗モデルについて報告する.
[謝辞]
本研究は,北海道電力(株)の泊発電所における火山影響評価の一環として,株式会社阪神コンサルタンツとの共同研究「洞爺カルデラの地下構造探査に関する研究」により実施されました.北海道電力(株),北電総合設計(株),関係自治体,漁業協同組合には,調査の実施に当たってのご協力やご助言を頂きました.日鉄鉱コンサルタント(株),地熱技術開発(株)の協力の下,MT調査を実施しました.SEKOGEOのSeunghee Lee氏には浅海用装置の改良について技術的なご指導を頂きました.
北海道の南西部に位置する洞爺カルデラは,約11万年前のカルデラ生成噴火により形成され,現在は東西約11km,南北約10km,平均水深約140-180mのほぼ円形状のカルデラ湖を有している.後カルデラ火山が洞爺湖の中心に中島,南岸に有珠山として存在する他,洞爺カルデラの東方には,蟠渓温泉・カルルス温泉・登別温泉など局所的に活発な温泉・地熱活動が存在する.こうした地質的な不均一性に加え,カルデラの南西側は比較的水深の浅い内浦湾に面しているといった地形的な複雑さも有している.それゆえ,このようなフィールドにおける広域比抵抗モデルの解明には,解析感度に空間的な偏りが出ないよう,陸上・海底・湖底の別なく観測点を均等に展開し調査することが重要である.また,上記の地質現象に関連する構造的特徴を明らかにすることは,カルデラ内部の構造及び本地域の熱的活動を,地表付近から地殻下部にかけて大局的に把握する点でも興味深い.
こうした背景の下,洞爺カルデラ周辺域において広帯域MT法計測を実施した.調査範囲は洞爺湖を中心とした東西60km,南北60kmの領域で,陸上・内浦湾・洞爺湖の3領域にまたがる.観測点を2〜5km程度の間隔で,陸上に92点,内浦湾に16点,洞爺湖に9点の全117点配置した.測定期間は2018年11月から2019年7月である.陸域においてはPhoenix Geophysics社製MTU-5Aシステムを使用して磁場3成分・電場2成分の時系列データを取得し,海・湖域においてはUeda et al.(2014)で使用された浅海用MT計測システムを使用して磁場2成分・電場2成分の時系列データを取得した.浅海用システムを湖域において適用するにあたっては,海水より比抵抗が300倍以上高い洞爺湖の湖水に対応するため,浅海用システムで採用しているクローバテック社製Ag-AgCl電極を陸域調査で通常使用される接地面積の大きいPb-PbCl2電極に交換して接地抵抗を下げた.また,過電流防止のための保護回路を解除しロガーの入力抵抗を増加させる改良作業を行った.
取得された時系列データは各種処理により周波数領域に変換され,陸域においてはインピーダンス4成分とティッパー2成分,海域・湖域においてはインピーダンス4成分を得た.陸域の観測システムと海・湖域の観測システムとではロガーのサンプリング周波数が異なるため,同処理で得られるインピーダンスの周波数は一致しない.そのため,各システムで得られた周波数領域のデータに内挿処理を施し,周波数を揃えた上で,逆解析に使用することとした.3次元逆解析では,海水域に加えて淡水域の水底に観測点の設定が可能な最新版のWSINV3DMT(Siripurvaraporn et al.,2009)プログラムを使用した.初期モデルでは,回転不変量に基づくインピーダンスから求められた比抵抗の全使用周波数帯域の平均値(66.4Ωm)を陸地の比抵抗とし, CTD測定の結果から海水の比抵抗を0.312Ωm, 湖水の比抵抗を103Ωmとした.また,エラーフロアとしてインピーダンスに対して5%, ティッパーに対して10%を与えた.本発表では,観測概要と共に逆解析の結果得られた比抵抗モデルについて報告する.
[謝辞]
本研究は,北海道電力(株)の泊発電所における火山影響評価の一環として,株式会社阪神コンサルタンツとの共同研究「洞爺カルデラの地下構造探査に関する研究」により実施されました.北海道電力(株),北電総合設計(株),関係自治体,漁業協同組合には,調査の実施に当たってのご協力やご助言を頂きました.日鉄鉱コンサルタント(株),地熱技術開発(株)の協力の下,MT調査を実施しました.SEKOGEOのSeunghee Lee氏には浅海用装置の改良について技術的なご指導を頂きました.