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[SEM15-03] 相対古地磁気強度推定の高度化への取り組み:南東太平洋チリ沖コアの例
キーワード:古地磁気、相対古地磁気強度、生物源磁鉄鉱
堆積物を用いた相対古地磁気強度(RPI)研究の進展は、Sint-2000(過去200万年)やPISO-1500(過去150万年)のようなstacked curveが導かれるなど、古地磁気変動の理解に大きく貢献した。一方で、堆積物の磁性鉱物組成の変動が、RPIに混入するという限界も明らかになってきた(e.g., Yamazaki et al., 2013)。より高精度のPRIを求めるためには、この問題の解決が必要である。堆積物中の磁性鉱物の主な起源としては、生物源マグネタイトと陸源磁性鉱物があり、さらに陸源としては、珪酸塩に包有された磁性鉱物と、単独で存在する磁性鉱物がある。これらの成分毎に、RPIを記録する効率が異なる、つまり自然残留磁化(NRM)、RPIを求める際の規格化パラメータとして用いられる非履歴性残留磁化(ARM), 等温残留磁化(IRM)のそれぞれの獲得効率が異なることが、「混入」の原因と考えられる。我々は、磁性鉱物成分毎の磁化獲得効率の違いを明らかにするための研究を進めている。これまでに、西部赤道太平洋オントンジャワ海台の堆積物コアを用いて、生物源マグネタイトのRPI記録効率は陸源のそれより低いこと、そのため、生物源マグネタイトの割合が増加すると、見かけ上RPIは小さくなることを明らかにした(Li et al., in revision)。このコアでは、低保磁力成分の方が高保磁力成分よりARMで規格化されたRPIが大きく、FORC測定等から高保磁力成分を担うのは主に生物源マグネタイトで低保磁力成分では陸源成分の割合が増えると推定されることから、生物源マグネタイトのRPI記録効率は陸源のそれより低いと結論した。このコアでは、陸源磁性鉱物は主として河川起源と推定される。海底堆積物の磁性鉱物組成は、堆積環境の違いを反映して場所により異なっていると考えられる。そのため、総合的な理解のためにはグローバルに研究を展開する必要がある。その一貫として、南東太平洋チリ沖で採取された堆積物コア(MR0806-PC3)の古地磁気・岩石磁気分析を現在進めていて、今回は主にこのコアの測定結果を発表する。約19m長のこのコアは、過去約1.5MaのRPIを記録していて、PISO-1500曲線等と対比可能である。このコアでは、ARMで規格化されたRPIは高保磁力成分の方が低保磁力成分より大きく、西部赤道太平洋のコアとは逆である。しかし、FORC測定等から、このコアでは低保磁力成分の方が生物源マグネタイトに担われる割合が大きいと推定される。従って、この海域の堆積物でも、生物源マグネタイトのPRI記録効率は陸源磁性鉱物より低いと結論される。