11:00 〜 13:00
[SEM15-P05] 走磁性細菌抽出試料の磁気特性と堆積物の磁気特性への寄与に関する岩石磁気学的研究
キーワード:走磁性細菌、磁気特性、堆積物
湖底・海底堆積物の磁気特性には様々な起源の強磁性鉱物が寄与している。起源毎に強磁性鉱物の磁気特性を把握し,それぞれの存在形態(種類・構成,量,粒径)とその変動がわかれば,各々の起源に関わる磁性鉱物の供給過程や供給過程間の相互作用,また起源が異なる磁性鉱物の堆積場での変容の様相を明らかにすることに繋がり,堆積物の磁気特性に基づく環境変動解析をより高度化・有用化することができよう。そこで,バルクの堆積物の磁気特性に対する起源が異なる強磁性鉱物の磁気特性の寄与の評価を様々起源のものについて試み,寄与の識別の可否も含めて検証する目的で研究を行っている。
堆積物の含有強磁性鉱物の起源として重要なものの一つは走磁性細菌(MTB)である。今回はMTBに着目し,富山市六泉池の堆積物を対象に行った以下の2つの実験結果を報告する。[A] 堆積物からMTBを抽出し,堆積物とMTB抽出試料の磁気特性を比較することで,MTBの抽出法も含めてMTBの寄与の評価方法を検証する,[B] 堆積物直上水の溶存酸素濃度の違いによりMTBの棲息深度が変化することに伴う,堆積物の磁気特性の変化の有無を調べる。
[A] 表層堆積物を採取し,それをガラス瓶に小分けし,ガラス瓶の側面,堆積物の表面の約1cm上方に内側にS極を向けて磁石を貼り付けておくことでMTBを抽出した.一定時間静置後、磁石付近の水を吸い取って遠心管に集める。その後,MTBを濃集するために以下の2つの方法をとった。[MTB-1] 遠心分離し,上澄みを捨てて容器の底の分離物と水を別容器に集める,[MTB-2] 磁石のS極の上に容器を一定時間放置した後,上澄みを捨てて容器の底の沈積物と水を別容器に集める.この作業を繰り返し行った後,濃集用容器の底に綿を詰めて冷蔵庫内で乾燥させて,綿の詰まった容器の底部を切り取って実験用試料とした。別に採取した堆積物コア試料(12cm)は深さ1cmごとに分割し,凍結乾燥させて実験試料とした。
堆積物の主要な含有強磁性鉱物はマグネタイト、またはマグへマイト化したマグネタイトであり、ヘマタイトも含まれる。堆積物の磁気特性は深さ方向にほぼ均一で,磁気的粒径は擬似単磁区(PSD)領域である.MTB抽出試料の磁気的粒径はPSD領域にあり,保磁力(Hc)・残留保磁力(Hcr)は堆積物とほぼ同じである(Hc: 7~12 mT,Hcr: 21~33mT).既存研究のMTBの保磁力に比べると低い.等温残留磁化(IRM)獲得曲線の保磁力分布解析を行うと,MTB抽出試料では2成分を仮定した場合,平均保磁力(MF)約30mTと約70mTの分布となった.遠心分離したMTB-1の方がMFは小さく,分散(DP)は大きい.遠心分離によりMTB起源強磁性粒子の有機薄膜の破壊,粒子の凝集を促した可能性が示唆される。MTB-2の2成分のMFは堆積物のIRM 獲得曲線を4成分として仮定して解析した場合のDPが小さく中間的なMFを持つ2つの成分と一致する。特にMTB-2の低保磁力の成分はDPも一致し,これは既存研究のMTB起源とされる成分の保磁力分布とも類似する。相対的なIRM強度に基づくとMTB-2と同じMFとDPを示す堆積物の成分は全IRM強度の約70%を占める.
[B] アクリルパイプに採取した堆積物の直上水に空気と窒素を吹き込むことにより富酸素環境(溶存酸素濃度90%以上)と貧酸素環境(溶存酸素濃度5%以下)にし,水温(25~28℃)とpH(7~9)はほぼ一定の状態で23日間,44日間放置した。実験後堆積物を厚さ1cmで分割し,凍結乾燥させて実験試料とした。
堆積物コアの表層部0~3cm深までは富酸素環境では赤味・黄味が増す色に,貧酸素環境ではより暗い灰色に変化した。含有磁性鉱物種や磁気特性には顕著な変化は認められず、MTB-2に認められた成分の寄与にも変化はなかった。今回の実験条件・期間では生きた走磁性細菌の棲息深度が変わらなかった、また、生きたMTBの堆積物の磁気特性への寄与は有意に検出できる限界より小さい、といった可能性が考えられる。
堆積物の含有強磁性鉱物の起源として重要なものの一つは走磁性細菌(MTB)である。今回はMTBに着目し,富山市六泉池の堆積物を対象に行った以下の2つの実験結果を報告する。[A] 堆積物からMTBを抽出し,堆積物とMTB抽出試料の磁気特性を比較することで,MTBの抽出法も含めてMTBの寄与の評価方法を検証する,[B] 堆積物直上水の溶存酸素濃度の違いによりMTBの棲息深度が変化することに伴う,堆積物の磁気特性の変化の有無を調べる。
[A] 表層堆積物を採取し,それをガラス瓶に小分けし,ガラス瓶の側面,堆積物の表面の約1cm上方に内側にS極を向けて磁石を貼り付けておくことでMTBを抽出した.一定時間静置後、磁石付近の水を吸い取って遠心管に集める。その後,MTBを濃集するために以下の2つの方法をとった。[MTB-1] 遠心分離し,上澄みを捨てて容器の底の分離物と水を別容器に集める,[MTB-2] 磁石のS極の上に容器を一定時間放置した後,上澄みを捨てて容器の底の沈積物と水を別容器に集める.この作業を繰り返し行った後,濃集用容器の底に綿を詰めて冷蔵庫内で乾燥させて,綿の詰まった容器の底部を切り取って実験用試料とした。別に採取した堆積物コア試料(12cm)は深さ1cmごとに分割し,凍結乾燥させて実験試料とした。
堆積物の主要な含有強磁性鉱物はマグネタイト、またはマグへマイト化したマグネタイトであり、ヘマタイトも含まれる。堆積物の磁気特性は深さ方向にほぼ均一で,磁気的粒径は擬似単磁区(PSD)領域である.MTB抽出試料の磁気的粒径はPSD領域にあり,保磁力(Hc)・残留保磁力(Hcr)は堆積物とほぼ同じである(Hc: 7~12 mT,Hcr: 21~33mT).既存研究のMTBの保磁力に比べると低い.等温残留磁化(IRM)獲得曲線の保磁力分布解析を行うと,MTB抽出試料では2成分を仮定した場合,平均保磁力(MF)約30mTと約70mTの分布となった.遠心分離したMTB-1の方がMFは小さく,分散(DP)は大きい.遠心分離によりMTB起源強磁性粒子の有機薄膜の破壊,粒子の凝集を促した可能性が示唆される。MTB-2の2成分のMFは堆積物のIRM 獲得曲線を4成分として仮定して解析した場合のDPが小さく中間的なMFを持つ2つの成分と一致する。特にMTB-2の低保磁力の成分はDPも一致し,これは既存研究のMTB起源とされる成分の保磁力分布とも類似する。相対的なIRM強度に基づくとMTB-2と同じMFとDPを示す堆積物の成分は全IRM強度の約70%を占める.
[B] アクリルパイプに採取した堆積物の直上水に空気と窒素を吹き込むことにより富酸素環境(溶存酸素濃度90%以上)と貧酸素環境(溶存酸素濃度5%以下)にし,水温(25~28℃)とpH(7~9)はほぼ一定の状態で23日間,44日間放置した。実験後堆積物を厚さ1cmで分割し,凍結乾燥させて実験試料とした。
堆積物コアの表層部0~3cm深までは富酸素環境では赤味・黄味が増す色に,貧酸素環境ではより暗い灰色に変化した。含有磁性鉱物種や磁気特性には顕著な変化は認められず、MTB-2に認められた成分の寄与にも変化はなかった。今回の実験条件・期間では生きた走磁性細菌の棲息深度が変わらなかった、また、生きたMTBの堆積物の磁気特性への寄与は有意に検出できる限界より小さい、といった可能性が考えられる。