日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (19) (Ch.19)

コンビーナ:佐藤 哲郎(東京大学地震研究所)、コンビーナ:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、座長:佐藤 哲郎(東京大学地震研究所)、吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)

11:00 〜 13:00

[SEM15-P06] 人工堆積物の粒子配向と初磁化率異方性の関係性の解析

*澤田 智尋1立石 良1、木村 一郎2石川 尚人1 (1.富山大学都市デザイン学部地球システム科学科、2.富山大学都市デザイン学部都市•交通デザイン学科)


キーワード:初磁化率異方性、粒子配向、人工堆積物

堆積物の構成粒子の配向は堆積環境を示す一つの指標である.その粒子配向の解析には初磁化率異方性(AMS: Anisotropy of Magnetic Susceptibility)の測定が用いられてきた.これは磁性鉱物粒子の長軸とそのAMS楕円体の最大軸が一致するという一般的な特徴を利用している方法であるといえる.しかしAMSが粒子配向をどれほど正確に示すことができているか詳細に示した研究例はほぼない.本研究では堆積環境(水理条件),粒子配向,AMSの関係性をより詳細に解明するため水理条件を制御して人工的に堆積物を生成し,その構成粒子の配向の解析とAMSの測定を行った.
実験試料として富山市岩瀬浜で採取した細粒から粗粒の粒子からなる砂試料を用いた.主たる構成粒子は石英31%,斜長石32%,岩片33%であった.岩石磁気学的解析から,含まれる主要な強磁性鉱物は擬似単磁区サイズのマグネタイトであり,初磁化率の約99%を担うことがわかった.
堆積実験は,静水下および実験水路を用いて流水下(流量25, 30, 40, 50 L/min,勾配1/100)で行った.試料は7ccプラスチックキューブを用いて一実験につき9試料ずつ採取した.粒子配向の解析のため,採取試料のX線CT画像を取得し,画像解析ソフトImage Jによる画像解析を行った.AMSの測定にはKLY-3S磁化率計を用いた.
結果として以下のことが明らかになった.
[1]流水下で堆積したとき,粒子楕円体の長軸は流れと平行に配向が集中し,水平面から上流側に傾く粒子が多く,流量が多い場合の方が流れと平行により配向し,上流側に傾く粒子がより増加する傾向がわずかながら認められた.流量の増加に伴って配向の集中度合が高まる可能性が示唆される.
[2]流水中で堆積したとき,AMS楕円体の最小軸は鉛直方向から上流側に傾き,最大軸は流れと平行に集中して配向する傾向が認められた.流量の増加伴い,まず最小軸が鉛直方向から傾き,その後流れと平行に最大軸の配向が集中していく挙動を示す可能性がある.
[3]粒子楕円体の長軸とAMS楕円体の最大軸の配向は,個々の試料で全く一致するとは言えないが,各堆積実験における9試料の平均的な粒子楕円体の長軸とAMS楕円体の最大軸の配向は類似する傾向があることが示唆される.