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[SEM15-P07] 弥生土器の考古地磁気強度から推定された約2000年前の地磁気強度の急激な増加
キーワード:弥生土器、考古地磁気強度、綱川・ショー法、地磁気永年変動
地球磁場は様々な時間スケールにおいて大きく変動することが知られている。特に、過去数千年の地磁気強度の永年変化の標準曲線は、方位と同様に、年代の不明な焼成考古遺物の形成年代を推定する指標となる可能性がある。我々は、日本における地磁気強度の永年変化の復元、および標準曲線の作成を目的として、福岡県の九州大学筑紫キャンパス遺跡群で採取された弥生時代中〜後期の年代の異なる多数の弥生土器試料を用いて考古地磁気強度の推定実験を行った。土器サンプルは全部で43個が採取されており、本研究ではそのうち27個を実験に用いた。真空中で行った熱磁気分析では、誘導磁化の加熱曲線と冷却曲線がおおよそ可逆的であることが示された。First order reversal curve (FORC)解析では、単磁区(SD)粒子と超常磁性(SP)粒子が混合している場合が多いことが確認された。これらの結果は絶対古地磁気強度推定への適性を示している。絶対古地磁気強度の推定実験手法には、真空中で綱川・ショー法を用いた。その結果、26個中19個の土器サンプルに所属する89個中60個のスペシメン(土器サンプル片)が綱川・ショー法の統計基準に合格し、考古地磁気強度が得られた。それらに対し、信頼性を担保するため、「1個の土器サンプルにつきスペシメン2個以上から考古地磁気強度が得られていて、それらの標準偏差が15%の選択基準を満たすもの」という選別基準を設定し、11個の土器サンプルレベルの平均値を選別した。このうち、異方性の影響で過大な値が推定されたと考えられる1つの土器サンプルは除いた。また、標準偏差が15%を超えている1つの土器サンプルにおいては、スミルノフ・グラブス検定で外れ値を検出できたため、外れ値を除いて計算した土器サンプル平均値を加えた。そのようにして選択された11個の土器サンプルレベルの考古地磁気強度平均値を年代順に並べると、約200 BCEから約50 CEという短期間に地磁気強度が29 µTから65 µTまで大きく増加したことが観察された。仮想地軸双極子モーメントに換算すると、5.5−12.3 ×1022 Am2に相当する。その250年間の増加が単調増加と仮定すると、増加率は0.027 ×1022 Am2/yearとなる。これは最近120年の地磁気双極子モーメントの減少率0.005 ×1022 Am2/year(IGRF-13)と比べると、およそ5倍の変化率である。本研究で見出された地磁気強度の短期間の大きな増加傾向は、弥生時代特有の強度変動のパターンであると考えられ、弥生時代は考古地磁気強度による高精度な土器年代決定が有効な時代である可能性がある。