日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、コンビーナ:藤井 郁子(気象庁気象大学校)、座長:南 拓人(神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻新領域惑星学講座)、藤井 郁子(気象庁気象大学校)

14:30 〜 14:45

[SEM16-04] MSSA(マルチチャンネル特異スペクトル解析)を用いた房総MTデータのニアフィールド効果の除去の試み

*金子 柊1茂木 透2吉野 千恵2服部 克巳2,3,4 (1.千葉大学大学院融合理工学府、2.千葉大学大学院理学研究院、3.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、4.千葉大学災害治療学研究所)

キーワード:MT法、MSSA(多変量特異スペクトル解析)、ノイズ除去、房総半島

2014~2016年に, 房総半島でMT探査が行われた。調査の主な目的は, 半島南西部の1702年元禄関東地震(M 8.2), 1923年大正関東地震(M7.9)の推定震源域や, 南東部のスロースリップイベントの発生域などのプレート境界を含む, 房総半島の地下電気比抵抗構造の調査である。一方, 房総半島は首都圏南部に位置することから, 人間活動が活発なため, 観測データに含まれる人工ノイズが大きく, 自然信号を用いるMT法は不向きな環境である。そのため, 遠方の静穏な観測点である, 気象庁女満別観測所の磁場データ(1 Hz)を参照磁場として, 従来MT法のノイズ除去に適用されてきたBIRRP法を用いても, 地下構造解析に十分なMT応答関数が求まらなかった。これは, 観測した電磁場間に相関するノイズ(ニアフィールドノイズ)が含まれる場合, MT応答関数推定に使うデータ数が大きく減ってしまうことが原因の可能性がある。そこで, ニアフィールドノイズを除去し, 合理的なMT応答関数を得るために, マルチチャンネル特異スペクトル解析(MSSA)を用いた, 時間領域でのノイズ除去法を新たに開発している。MSSAは, Cチャンネルの時系列データを, 窓長個を列数として1データずつずらして作成した軌道行列を特異値分解することにより, (C×窓長)個の主成分に分解することができる。したがって基底関数が不要なため, 非定常的過程である自然電磁場信号には有用である。
ここでは, 7成分(Hx, Hy, Hz, Ex, Ey, Rx, Ry:H, E, R はそれぞれ, 観測点磁場, 観測点磁場, 参照点磁場を表し, x, y, zはそれぞれ南北, 東西, 鉛直下向き成分を表す)の短周期信号(周期約40~約300秒)を対象とした場合の, 本手法の概要を述べる。
1. 生データにMSSAを適用し, 各成分を(7×窓長)個の主成分に分解する。
2. 分解した主成分のうち, 長周期信号を含む主成分を除き, 短周期信号を持つ主成分を足し合わせ, デトレンド時系列を作成する。
3. デトレンド時系列にMSSAを適用し, 各成分を(7×窓長)個の主成分に分解する。
4. 分解した主成分のうち, 主成分の振幅の大きいものに注目し, 電磁場間の相関の高い主成分を選択し, 足し合わせ, 電磁場信号時系列をそれぞれの成分について作成する。
本手法を人工ノイズが含まれる, 房総半島の実データ(12:00-14:00(JST))に適用し, 効果を確認したところ, 磁場データに含まれる人工ノイズを約1nT 除去でき, クリーンな磁場データが得られた。電場データに関しても, 元の振幅の1/2程度まで, 影響を除去することができた。また, これらの電磁場データに対し, Robust Remote Referenceを用いて, MT応答関数を推定した結果, 人工ノイズを含む昼間のデータであっても, よりもっともらしい結果が得られることを確認した。